スマホの1分充電ができればいいなぁ…大電流なら可能なのか 京大教授が説明

 カエルから始まった電池。結構有名な話で、イタリアの物理学者というか医学者というか、マルチ学者のガルバニさんが2種類の金属を死んだカエルの足に刺したら、カエルが痙攣したことを発見して、これを動物電気と名付けたんですね。で、その内容を聞いた、同じイタリアの物理学者のボルタがいろいろ調べて、動物電気とは違うことに気づき、電池が生まれました。

 2種類の金属とイオンを流すものがあれば誰でも電池を作れますが、ガルバニさんの発見が発端になっています。この話を2年前に私の前のボスとしていたときに「おまえ、なんでガルバニが動物電気と考えたか知ってるか?」と言われて、わからんですねえ。と答えたら、「ガルバニは電気ウナギを知ってたんや」とのこと。

 結構、信じてましたよ、先生!!だけど、疑問に思って、電気ウナギのことを調べたら、南米やないですが、いるのが。で、だまされたと思って、さらに調べると、1766年にスウェーデンの学者によって電気ウナギが命名されてて、ガルバニさんの発見が1780年なので、そうかあ、あり得るのかと再度納得しました。いや、疑ってしまいました。申し訳ないです。

 さて、電気ウナギですが、こやつはなかなかの電圧を出します。500ボルト以上ですね。これで1アンペアほどの電流を出します。すごいパワー(電力)です。電圧かける電流で電力のワットです。500ワットです。そのすごいパワーを持続できると、電気量が多くなりますので、この電気を充電できれば有用!なんですが、実際に電気を流す時間はめちゃくちゃ短い。ですので、電気ウナギではスマホの充電できません。残念。

 話は変わって、充電を忘れてて、スマホを早く充電しなくてはと焦ったことありますよね?1分で充電できればなあと思ったり。僕もできないのは理屈では分かってても、なぜもっと早く充電できないと思うことは多々あります。

 さて、電流掛ける時間。これが電池の容量の単位です。たとえば、2Ah(アンペアアワー)の容量。これは1Aの電流で、2時間使えるという意味になります。逆に言えば、1Aの電流を流せば、2時間で充電できるということになります。

 最近のスマホには詳しくないですが、スマホの容量は2から3Ahが多いと思います。面倒なので、いま2Ahの電池を積んだスマホがあるとしましょう。これを1時間で充電するのは2アンペア要ります。0・5時間の充電。つまり、30分なら4アンペアが必要です。10分なら12アンペアになりますよね。では、1分。120アンペアです。家庭の電源は最大15アンペアなので、1分充電は家庭では無理なんです。

 そしたら、大電流を流せる充電スタンドでスマホを1分充電できるのか?それだけの電流を流すには太いケーブルが必要で、それをスマホで受け入れることができるとします。そうすると数字上は可能なのですが、実際はほとんど充電できません。

 電池を使うとき(放電)も充電するときも化学反応が電池の中では起こっています。電池を使い切ると、中に入れたプラス極とマイナス極の物質が、それぞれ違う物質に変わります。これを外からエネルギーを与えて元に戻すのが充電ですが、ほぼ完璧に元通りにしないといけないので、これがなかなか難しい。なので、充電はゆっくりするのが良いのです。もっとも、そうも言ってられないので、頑張って早く充電できるように電池会社の方々が日々頑張っておられます。

 もう一度戻って、電気ウナギ。リチウムイオン電池は4V近い電圧を出すので、ほかの電池と比べて、エネルギー密度が高いのですが、電気ウナギは500V以上出ます。体内でどうやって、こんな高電圧を作ることができるのか?これは結構面白いですが、この話は長くなるのでまた今度。

◆安部 武志 2009年、40歳で京都大学工学部研究科教授に就任。電池技術委員会賞、炭素材料学会学術賞などを受賞。京大工学部卒、大阪府出身、1968年生まれ。趣味はゴルフ。

関連ニュース

ライフ最新ニュース

もっとみる

    主要ニュース

    ランキング

    話題の写真ランキング

    リアルタイムランキング

    注目トピックス