女性が嫌悪する妊娠中の不倫 離婚訴訟に影響は?元アイドル平松まゆき弁護士が解説
小川彩佳アナウンサーの夫が「産後不倫」をしていたと週刊文春が報じた。夫は不倫相手に「結婚後の肉体関係はない」と口裏合わせを求めたともいう。元衆院議員の宮崎謙介氏は先ごろ2度目の不倫が発覚。1度目は妻で元衆院議員の金子恵美氏が妊娠中に不倫したことが報じられ、議員辞職となった。妊娠中の夫の不貞行為に女性は強い嫌悪感を持つとされる。離婚訴訟となったときに慰謝料等に影響はあるのか-。アイドルから弁護士に転身した平松まゆき氏にQ&A方式で解説してもらった。
Q 妻が妊娠中の夫の不貞は、妻にとって精神的苦痛が増すと思いますが、慰謝料は増額されるのでしょうか。
A 慰謝料請求の方法としては主に、示談交渉と裁判の2つがあります。まずは示談交渉を試みて、相手が応じるのであれば、請求した金額の慰謝料を獲得できます。しかし、示談交渉で決着がつかず、裁判に発展した場合には、裁判所が過去の裁判例等を参照しつつ、個別の事情に応じて慰謝料を算定します。
ここで言う個別の事情についてですが、婚姻期間、子の有無、不貞期間、不貞回数及び頻度、主導性、不貞女性の妊娠の有無、婚姻が破綻したか(離婚に至ったか)等を考慮要素とします。ただし、これらはあくまで目安であって、どれかひとつだけを取り上げるのではなく、様々な具体的事情が複合的に考慮されます。
そのうえで、妊娠中は、女性にとって身体的にも精神的に不安定になるからこそ、もっとも夫の理解や協力を得たい時期です。そのさなかに妻を裏切って不貞をするということは、場合によってはそれだけで婚姻関係を破綻させるとも考えられますので、違法性の程度は重いと言うべきで、慰謝料増額の考慮要素となると考えられます。
Q 実際に慰謝料はいくら請求できるでしょうか。
A 裁判にはおおよその相場がというものがあり、100万円から300万円程度かと思います。一方、示談交渉であれば決まった金額はありません。裁判だけは勘弁してほしいという相手方の事情から裁判相場よりも高くなったり、逆に裁判相場よりも安いけれども紛争の早期解決のために妥協すると言うこともあります。
Q 不貞相手、夫のどちらに請求するべきでしょうか。
A 法的にはどちらにも請求が可能ですが、二重取りはできません。いずれかに全額を請求しても良いし、それぞれに対し、金額を指定して請求することも可能です。もっとも、回収可能性の点では、相手の地位や収入等を考慮して、より「取りやすい」方から取るというのが簡明かと思います。
◆平松 まゆき 弁護士。大分県別府市出身。12歳のころ「東ハトオールレーズンプリンセスコンテスト」でグランプリを獲得し芸能界入り。17歳の時に「たかが恋よされど恋ね」で歌手デビュー。「世界ふしぎ発見!」のエンディング曲に。20歳で立教大学に入学。芸能活動をやめる。卒業後は一般企業に就職。2010年に名古屋大学法科大学院入学。15年司法試験合格。17年大分市で平松法律事務所開設。ハンセン病元患者家族国家賠償訴訟の原告弁護団の1人。