コロナ禍で小中高校生の自殺者数が過去最多…いじめ以外の理由とは?夜回り先生「国は早急に実態調査を」
昨年、全国の小中学生と高校生の自殺者数が前年比140人(41.3%)増の479人(暫定値)で過去最多を更新したことを受け、文部科学省は新型コロナウイルスの感染拡大に伴う社会不安が影響した可能性を指摘した。夜回り先生こと教育家の水谷修氏は「コロナ禍での児童生徒の実態調査を」と訴えた。
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2020年の全国の小中高校生の自殺者数が、前年比140人増加し、479人(暫定値)となり、過去最高を更新したと、文部科学省が発表しました。
私の研究所にも、昨年1年間、2000件近い「死にたい」、「死にます」の相談メールが届きました。学校や教育委員会、家庭や児童相談所との連携で、確認できる限り、その中から1名の自殺者も出ていません。
それらの相談を分析して見えてくることがあります。それは、昨年の2月末から6月までの自殺についての相談理由に、「いじめ」が1件もなかったことです。これは、その時期に学校が休校となったことが原因でしょう。そのかわり、家庭での両親の不和や虐待がその理由として増えています。また、昨年末からは、中学3年生や高校3年生からの、受験への悩みや、親の収入が減った事による進路変更が、相談理由として増えてきました。
また、自殺についての相談だけでなく、大麻などの薬物使用についての相談や、貧困による日々の生活についての相談も増えています。親たちからは、SNSなどで知り合った人のところへの家出の相談も急増しています。
このコロナ禍の中で、飲食店や宿泊業、旅行関係や交通関係の企業が苦しんでいることはよくわかります。その支援が必要なことも。また、多くの人たちが、就労時間の短縮や仕事を失うことにより、生活に苦しんでいることもよくわかります。大人たちは、声を出すことができますから。
しかし、その一方で、今、子どもたちが何をどのように苦しんでいるのかは、ほとんど知られていません。
ぜひ、文部科学省には、その実態調査を、全国の小、中、高等学校で速やかに実行して欲しいと願います。「三度の食事をきちんととることができているのか」、「学業について不安はないのか」、「進路についてきちんと自分の望む方向に進むことができるのか」、「家庭での虐待はないのか」、「学校でのいじめはないのか」、「大麻などの薬物の誘いはないのか」、「SNSやネット、ゲームなどへの依存はないのか」、「自分の健康についての不安はないのか」、「金銭的な問題はないのか」など聞くべき事はたくさんあります。そして、その実態を知った上で、国を挙げてその対策に取り組んで欲しいと願います。当然、私たち民間機関も協力します。
子どもたちは、なかなか声をあげて訴えることができません。だからこそ、私たち大人が、積極的に動いて、その苦しみを知り、解決しなければならないのではないでしょうか。
1人の子どもが命を絶つことは、私たち大人全員の罪です。私たち大人にとって最大の仕事は、次の世界を担う子どもたちを守り育てることなのですから。
【相談窓口】
・厚生労働省「こころの健康相談統一ダイヤル」
電話0570・064・556(対応時間は自治体により異なる)
・よりそいホットライン
電話0120・279・338(24時間対応。岩手、宮城、福島県は0120・279・226)
・日本いのちの電話連盟
電話0570・783・556(午前10時~午後10時)