「男はつらいよ」の世界みたい! 独特なカラーが沿線風景にマッチ…レトロな“国鉄型車両”の魅力 

人情味溢れる日本の名作「男はつらいよ」。この映画に幾度も登場するのが、ボロボロになっても懸命に走っている"国鉄型車両"たちです。 寅さんが木造駅舎のベンチでウトウトと居眠りしていると、レトロな列車がやってきますよね。この国鉄急行色車両が駅のホームに入線する様子を見るために、僕・桂小梅は「男はつらいよ」を何度も観てしまいます。今回は、そんな国鉄型車両の魅力やオススメを紹介します。

僕は鉄道写真を撮るのが趣味ですが、新幹線や新型車両には全く見向きもしません。鉄道博物館に永久保存されていそうな、絶滅危惧種のコウノトリやヤンバルクイナのような車両を撮る鳥鉄?いえ撮り鉄なのです。

数年前までは関西周辺にも国鉄カラーの国鉄型車両が普通に走っていました。 一番多く通ったのが、尼崎から京都の福知山を通り、城崎温泉を結ぶ「特急こうのとり」。183系、381系という国鉄型の特急電車です。クリーム色のボディに赤のラインが入った国鉄カラーと、沿線の風景が見事にマッチしていて好きでした。

長距離なら寝台電車583系やブルートレインも薄暗い車内に、窓が映し出す流れゆく街の灯りが旅愁を感じさせます。それを肴にちびりちびり…バスと違って、誰に気兼ねすることもなくトイレへ行けるのも良いですね。

そんな車両はほとんど消えてしまい、今では都会も地方も関係なく、ステンレス製の銀色剥き出しの車両ばかりで、旅の気分も半減。

人が思うことは同じなのか、旧型車両を模した新型車両が登場しました。千葉の房総半島を横断するいすみ鉄道のキハ20というオレンジ色のボディにクリーム色のラインが入った国鉄一般色車両がそのひとつ。それと、新山口と津和野を結ぶSLやまぐち号の35系客車も…これがまた完成度が高く、ホンマもんと瓜二つ。

僕のオススメは、岡山と津山を結ぶ津山線のDC達。キハ40やキハ47の国鉄一般色、国鉄急行色、国鉄首都圏色の三種類の国鉄カラーが走っており、「男はつらいよ」に出てきそうな木造駅舎も存在します。

最近の国内旅行は、景色も楽しむ「線」の移動から、出発地と目的地だけの「点と点」の移動が多くなったようです。 飛行機や新幹線は短時間の移動ができるので、いわばビジネス向き。

ただ旅行としては、いかがなものかと僕は思います。メインは目的地だけで、移動中は寝るかゲームをするか…道中の楽しさを無駄づかいしているようで仕方ありません。

上方落語には「東の旅」のように伊勢詣りの道中を描いた大作もあるほどですから、本来の旅とは道中を楽しむ鈍行の旅かも知れませんよ。

日本最先端の鉄道技術を世界へアピールのためにリニアモーターカーに力を注ぎ込む事も良いことでしょう。 でも、ブルートレインのような寝台列車や在来線の特急も走らせて欲しいものです。狭い日本をもっと広く使いませんか。高齢化が進む今の日本には懐かしいと思えるリバイバル車両こそが必要なのかも?

「せまい日本、そんなに急いでどこへ行く」

◆桂小梅(かつら・こうめ) 1992年大阪府大阪市に誕生、桂梅団治の長男。2011年4月、桂梅団治に入門。幼いころから父親から落語の手ほどきを受け、小学生のころの好きな有名人は「三代目桂春団治」。鉄道写真愛好家の一面も持つ師匠梅団治の影響からか、落語と同じく幼いころから鉄道写真に興味を持つ。真摯で丁寧な高座は好感度が高く、これからが期待される若手。

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