ゴミ処理場で間一髪…救出された猫が、州政府の「副大臣」に!?…ロシアでは猫は「立派な働き者」
昨年12月、ロシアにてゴミ処理場で「あわや」というところで、猫が保護されたニュースが話題になりました。その後、この保護猫はどうなったのでしょうか。ロシアでの猫のがんばりやペットに対する政策も交えてお伝えします。
■ゴミ処理場から救われた保護猫とロシアの猫事情
事件は昨年12月、ロシア西部にあるウリヤノフスク州(モスクワから東へ約900km)で起きました。ウリヤノフスク州のごみ処理場で、ごみの分別作業をしていると、ビニール袋の中にいたのは1匹の猫!
あともう少しで裁断機の犠牲になったことから、猫は間一髪のタイミングでピンチを脱出しました。猫の様子を見ると、最近捨てられた飼い猫だったようです。このニュースは日本でも取り上げられ、大いに話題となりました。
お医者さんから「健康」ということが無事に認められ、ウリヤノフスク州の自然保護省で保護されることに。その後、何と同省の「副大臣」に任ぜられています。新たな「猫生」を歩むにあたり、新しい名前は市民からの公募で決めることに。市民から多くの応募があり、最終的には副大臣自らが「カイト」を選びました。ちなみに「カイト」はロシア語で「凧」という意味です。
もちろん、カイト君はロシアでも一躍人気猫に! 「メディアが選ぶ2020年有名猫ランキング」で堂々の3位を獲得しました。現在は「副大臣」として省内の廊下を堂々と歩いているようです。
ところでロシアでは公的機関で働く猫は決して珍しくありません。たとえば「世界三大美術館」のひとつ、サンクトペテルブルクにあるエルミタージュ美術館では館内にいるネズミを捕えるために昔から猫が飼育されています。猫は「エルミタージュの猫」として知られ、市民から愛されています。
余談ですが筆者が極東ロシア・ウラジオストクのホテルに泊まった際、フロントには猫「アリーサ」が鎮座していました。まるで「この客は泊ってもOK」みたいに宿泊客をチェックしているような感じでした。筆者がかわいがろうとすると、そそくさと逃げてしまったのが残念でしたが。
このようにロシアでは猫は「単にかわいいペット」ではなく、「立派な働き者」なのです。またインスタグラムでロシア人アカウントを見ると、多くの人々が猫を飼っていることがわかります。ぜひロシアに行かれた際は猫にも注目してください。
■ペットを捨てる行為に対策を乗り出すロシア
ところで先ほどのウリヤノフスク州のゴミ処理場では2カ月の間にカメ2匹とアフリカのハリネズミ1匹も保護されました。コロナ禍のなか、ロシアでもペットを捨てる行為が大きな問題となっているようです。
1月19日付けのタス通信によると、このようなペットを捨てる行為に対して与党「統一ロシア」は対策に乗り出しました。党のクリーン・カントリープロジェクトの責任者であるブルマトフ氏はペットを道端に捨てた者に対して罰金刑を科す法案の成立に言及。ロシアではペットを捨てる行為への法的罰則は存在しません。
ロシアでは連邦予算を使って動物保護施設の増設プロジェクトが進められていますが、行政側が動物保護施設にいる動物の個体数を把握することも検討されています。
このようにロシアのゴミ処理場での保護猫の話は単なる美談だけでなく、ペットとの向き合い方を考えさせるものです。日本ではコロナ禍の中、自宅で過ごす時間が長くなり、ペットを飼う人が増えています。
一方、飼い始めたものの、すぐに「飼育放棄」をする人も増加していると言われています。コロナ禍の今だからこそ、動物やペットにはやさしく接したいものです。
(まいどなニュース特約・新田 浩之)