「娘をかわいく思えない。母親失格なのかな」SOSを出すことができたAちゃん…どうか自分を責めないで
これは私の友人の宮城県在住のAちゃん(30代・介護職)の話です。
Aちゃんは小学校からの同級生。高校時代から共通の友人とよく遊んでいました。高校を卒業し、それぞれが新生活を送りながらも年に何度か集まっていました。20代半ばを過ぎ、友人たちが1人、2人と結婚していく中、Aちゃん自身も結婚を意識し始め婚活パーティーなどで相手を探し始めました。
数年後、「この人だ!」という人に出会い、半年の同棲期間を経て1年後、Aちゃんは結婚。
県外の公務員の方と結婚だったので、結婚後はそのまま県外に拠点を移すことになりました。結婚式は私たちの地元で盛大に行われ、私たちも出席し自分のことのように祝福したのをいまでも覚えています。しかし、Aちゃんの結婚生活は順風満帆には進みませんでした。
■結婚後わずか2年で離婚
結婚後、「男の子が欲しい」「家が欲しい」と旦那さんに話していて、家を購入し、ほどなくして妊娠。Aちゃんの希望が叶い、仲睦まじく過ごしていると私たちは思っていました。
しかし、そううまくはいかなかったようです。
元々交代制勤務の旦那さんは妊娠後も夜勤が多く、なかなか家にいないことに不満を持つようになったAちゃん。
しかも、妊娠したのは女の子だったようで、私が話を聞いたときには「女の子ならいらない」とまで言うような精神状態になっていました。
「一度実家に帰ってみたら? Aちゃんもお腹の子も心配だよ」と話すと、「考えてみる」と話し、辛くなると実家に帰るようになりました。
出産後、実家に帰ってくると今度は自宅に戻らなくなるようになってしまい、旦那さんが迎えに来ても帰らないようになり、ついに離婚。Aちゃんは娘を引き取り、シングルマザーになりました。
■子どもがかわいく思えない
元旦那と離婚し、揉めた末に娘を引き取った数カ月後、「娘をかわいく思えない。1人になりたい」とAちゃんから相談を受けました。
Aちゃんは離婚後、実家に戻らず市外にアパートを借りて娘と2人で生活をしていました。
「娘がいると生活が制限される。騒いでいる声も耐えられない」と辛そうに話すAちゃん。育児ノイローゼ気味な様子に「実家に戻ってきたら?」と話すと、「実家は頼れない。このままだと虐待になってしまう」とかなり追い詰められた様子でした。
■行政に相談を勧める
実家に頼ることを頑なに拒否するAちゃん。それならばと行政の家庭相談を勧めてみました。
行政区によりますが、相談の他にも児童相談所などでの一時保護など子どもの安全を最優先に行っている制度があります。
Aちゃんはその後、家庭相談に行き娘を一時保護してもらったそうです。離れている期間に「寂しい」、「母親失格だ」と自分を責めるようなことを考えたと言います。
1カ月の保護解除後は、ショートステイなどを利用しているとのことでした。
「娘を保護してもらっているなんて、誰にも言えない」と涙ながらに話すAちゃんに、「子どもの安全を第一に考えて行政に助けてと言えたAちゃんは頑張ったと思うよ? 子どもを無条件で愛せることだけが母親というわけじゃない。だから、自分を責めないでほしいな」と伝えました。
現在、新型コロナウイルスの影響でショートステイの予約が取れないと話すAちゃん。
新たな提案として、「実家に頼れなくても私たちはいるよ? Aちゃんと娘ちゃんが笑顔になれるよう、みんなで子育てしてみない?」と打診しているところです。
(まいどなニュース特約・長岡 杏果)