津波で息子と家を失った男性が自力で家を再建した物語 映画「先祖になる」オンライン上映会
東日本大震災から間もなく10年。津波で家と長男を失った男性が力強く生きる姿を描いたドキュメンタリー映画「先祖になる」(2012年)のオンライン上映イベントが3月5日から15日に実施される。主人公の佐藤直志さんが今も暮らす岩手県陸前高田市では、作品の上映会に加えて佐藤さんや池谷薫監督らによるトークショーも13日に開催。オンラインチケットの購入者は、ビデオ会議アプリ「Zoom(ズーム)」でどこからでも参加できる。
「先祖になる」は震災から1カ月余り経った陸前高田市気仙町の小さな集落が舞台。仮設住宅に移るよう説得されても頑として受け入れず、「家が流されたらまた建てればいい」と愛着のある土地で暮らし続ける当時77歳の佐藤さんに魅入られた池谷監督が、カメラを向けた。
自ら森で木を伐採し、およそ1年半で元の場所に家を建てた佐藤さん。土地に根差し、生きることの本質を問い掛ける“頑固老人”の物語は、文化庁映画賞(文化記録映画部門)で大賞に輝いたほか、ベルリン国際映画祭や香港国際映画祭といった海外の映画祭でも激賞されるなど、多くの人を奮い立たせた。
池谷監督は「“復興五輪”という言葉がむなしく空回りする昨今ですが、被災地で懸命に生きてきた佐藤さんたちの言葉を全国の人たちにあらためてしっかり伝えたいと思っています」と力を込める。
オンライン上映は3月5日から15日までの期間中なら何度でも視聴可能。チケットを購入すると、13日に陸前高田市で開催されるトークショー(15時10分から16時40分、終了後も録画リンクあり)にもライブで参加できる。一般1500円、学生1000円。チケットの売り上げは、佐藤さんが所属する営農組合に寄付する。
現地でのトークショー付き上映会は陸前高田市コミュニティホール(シンガポールホール)で13時開始。入場無料、申し込み不要。問い合わせは、みやこ映画生活協同組合(Tel : 0193-64-5588)まで。
(まいどなニュース・黒川 裕生)