たわしより先にたわしマットがあった?亀の子束子西尾商店にたわしの歴史についてうかがってみた
「たわしより先にたわしマットが存在した?」
今、SNS上ではたわしの起源に注目が集まっている。
たわしは我々の生活に身近で、かつきわめてシンプルな形状をしているため、ついついそれを元にたわしマットが出来たのだと思ってしまうが実は逆。シュロ(ヤシ)を針金で巻いて作った靴拭き用のマットが先にあり、そこから派生的にたわしが誕生したというのが実情のようなのだ。
「亀の子束子」を製造する代表的たわしメーカー、株式会社 亀の子束子西尾商店の広報のご担当者にお話をうかがってみた。
中将タカノリ(以下「中将」):亀の子束子誕生の経緯をお聞かせください。
担当者:現在の形のたわしは弊社の初代社長、西尾正左衛門が発明いたしました。
正左衛門は元々、シュロ縄業を営んでいたのですが、そこからシュロの靴拭きマットを発明します。しかしシュロの繊維は柔らかく、繰り返し使ったり重い人が乗ったりするとすぐにへたってしまうので、大量の返品が出てしまったんですね。
そんな中、妻のやすが障子の桟を、返品されてきたマット用の部材、シュロ棒を曲げて掃除しているのを見て正左衛門は現在の形のたわしの製品化を思い付きます。それまでにも藁や縄等を束ねたものがたわしとして使われていましたが、針金で巻いた棒状のシュロを曲げてたわしにするのは初めてだったんです。
このようにして作られたたわしは「亀の子束子」として発売され、大ヒット商品となりました。手に持って洗い物に使う用途なら、靴拭きマットと違って毛先が簡単につぶれることもありませんし、ちょうど食事の西洋化にともない既存のたわしでは脂汚れを落とすのが難しくなっていた時期だったことも大きな追い風になりました。
中将:そんな歴史があったんですね…!SNS上で話題になっていることについてご感想をお聞かせください。
担当者:みなさんよくご存じですね。弊社では本店、谷中店、またはたわし作り体験イベントで、亀の子束子の誕生秘話をお話することが多いので、亀の子束子に興味を持っていただけたということは大変うれしいです。
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「株式会社 亀の子束子西尾商店」概要
本社所在地:東京都北区滝野川6-14-8
【直営ショップ】
※食器洗い用、ボディケア用などさまざまなたわしが一堂に。たわしに精通したスタッフによる細やかな商品説明が聞けるのは以下の2店舗。
亀の子束子 本店:東京都北区滝野川6-14-8
亀の子束子 谷中店:東京都文京区根津2-19-8 宮の湯A区画
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ふだん何気なく使っている道具にも実はさまざまな歴史や背景がある。亀の子束子西尾商店のご担当者の話を聞くと、僕もたわしにちょっと愛着が湧いてしまった。亀の子束子西尾商店のホームページではイラスト入りの亀の子束子誕生秘話が公開中。非常に興味深いストーリーなので、ぜひ多くの人にご覧になっていただきたいと思う。
(まいどなニュース特約・中将 タカノリ)