ネイルと老舗出版社の文庫の色がそっくり! これは「岩波文庫の哲学の色だ」つぶやきが驚異の反響に

 ツイッター上で今、ある女性の指先に注目が集まっています。

 発端はギリシャ神話研究家の藤村シシンさんと黒川巧さんとのツイッター上での会話でした。

■ネイルの色が…岩波文庫にそっくり!

 おふたりはギリシャ哲学を通じてのご友人。藤村さんの近況写真を見た黒川さんはネイルの色に目を奪われます。旧知の仲とはいえ、慎重に言葉を選びながら、2人の共通項である「あるアイテム」にたとえて質問します。

 「前から気になっていたのですが、その爪の色、すごくいい色ですね。岩波文庫の『哲学』の色で心躍ります。なんていう色なんですか?ターコイズでしょうか?」(黒川巧さんツイートより引用)

 これに対し藤村さんは「本当だ。完全に岩波文庫の『哲学』だった!!w」と反応。

 「このネイル、結構『いい色だね!』と言及してもらえるんだけど、今初めて『岩波文庫の哲学の色だ!』という言葉をもらったw そして本当に岩波文庫だった」と、自室の本棚に並ぶ岩波文庫と指先を比較した写真を投稿。ネイルの色の美しさ、たとえの秀逸さに1.3万いいねを集め、今も拡散は続いています。

■藤村さん「ウィット利いた表現、痺れます」

 藤村シシンさんに聞きました。

 ーー反響にはどのようなお気持ちですか?

 藤村シシンさん:「私も『このウィットが利いた表現、本当にすごくない?』と思って個人宛のリプライをさらに引用RTしました。結果、多くの人に賛同をいただいてうれしかったです。黒川さん自身は、見た目に関することなのでためらいながらツイートしたと言っていたのでやや申し訳ないんですが、それでも素晴らしい表現だったと思います。いい表現は多くの人に賞賛されるべき。平安時代の歌人みたいです!」

 最近では月刊誌「ユリイカ2020年12月号」(青土社)にも寄稿した黒川さん。知的なたとえに心を打たれたユーザーも多かったようです。

 藤村シシンさん:「岩波文庫の青帯ってすごい知的でウィットが漂う例えですよね。痺れます。ただ最初はそんなに似てないんじゃ…と思ったので、実際に指を置いた後に本当に同じ色で驚きました。ネイルと本、身近だけど全く違う世界のふたつが繋がってすごく楽しかったですね。それこそ、本棚に刺さってるプラトンの『驚きこそ哲学の源』という言葉を思い出しました!」

 藤村シシンさん:「あと色だけじゃなくて、胡粉ネイルのツヤッとした感じがカバーのコート紙の質感に似ている、というのもあるなと思いました。色も質感も似ています!」

■岩波文庫「哲学の色」とは

 岩波文庫を発行する老舗出版社の岩波書店(本社、東京都千代田区)では、今回の話題をいち早くキャッチ。藤村さんの投稿に対し、同社公式ツイッターアカウント中の人は「素敵なネイルですね! まさしく岩波文庫の『青帯』の色そのもので、驚きました」と返信しました。

 SNSでの盛り上がりは、岩波文庫編集長の耳にも入っていました。編集長はまいどなニュースの取材に対し、次のようにコメントしました。

 「驚きました。岩波文庫の青色が夏のエーゲ海の空と海の色に見えてきました」(岩波文庫編集長)

 岩波文庫は1927(昭和2)年7月10日創刊。プラトン「ソクラテスの弁明・クリトン」や夏目漱石「こころ」など22冊で刊行がスタート。内容により背表紙などが色分けされており、今回話題の青色は思想・哲学・宗教・歴史・地理・音楽・美術・教育・自然科学。他には、黄は日本文学(古典)、緑は日本文学(近代・現代)、白は法律・政治・経済・社会、赤は外国文学です。

■夏の色なのに…「5倍の売上げです」

 藤村さんのネイルは、1751(宝暦元)年創業の京都の老舗絵具店「上羽絵惣」(うえばえそう)が手掛けたネイルシリーズ「胡粉(ごふん)ネイル」のもの。全38色のうち「おそら」という品名の夏に人気のカラーです。

 胡粉は日本画に使う顔料で、ホタテの貝殻を天日干しにし砕いた粉から作ります。同社のネイルは水溶性で有機溶剤を使わないため、刺激臭のない爪にやさしいネイルとして知られています。

 店長の西村由美子さんは「『おそら』は通常、夏に売れる色ですが、今回の藤村シシンさんのつぶやきで、たくさんお買い上げいただいています。ネット注文が大幅に増え、通常の5倍の売り上げがありました」とツイッターの影響力にうれしい悲鳴でした。

(まいどなニュース・金井 かおる)

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