「生きていく意味がわからない」どん底の日々を救ってくれた猫 守るべき存在が飼い主を変えた
野良の子猫の凛ちゃんは、雑貨店に通って店長にごはんをもらっていた。しかし、その生活は長くは続かなかった。ボランティアに保護され、里親を募集。当時、愛知県に住む鵜飼さんは落ち着いた大人猫を探していて、凛ちゃんに目を留めた。一定の距離を保ってほしいと思っていたが、鍵尻尾の凛ちゃんは鵜飼さんを変えた。
■毎日雑貨店に通う子猫
2019年1月、愛知県の雑貨店に1匹の子猫が来るようになった。寒い中、どこかから毎日現れた。店長は子猫にごはんをあげていた。子猫は交通量が多い道路沿いの側溝に隠れて暮らしていたようだった。子猫に情がわいたがずっと面倒を見られるわけではなく、店を閉店することが決まったので、知り合いのボランティアに相談した。
子猫の様子を見たボランティアは、怖がりなので里親を探したほうがいいと思ったそうだ。
■ふさぎこんでいた生活を変えるため
その頃、鵜飼さんは、食事をとれず、寝ることもできず、生きていく意味さえ分からないという状態だった。知り合いから「あなたは保護猫を飼ったほうがいいと思う」と言われた。
環境を変えるために引っ越したいと思っていたこともあり、猫専用の賃貸住宅を選んだ。部屋にはキャットウォークがあり、猫用のドアも設置されていた。引っ越して間もなく、譲渡サイトで猫を探した。
「猫を飼うのは初めてだし、一人暮らしで家を空けている時間も長いので1歳以上の大人猫がいいと思っていました。男の子は大きくなると聞いていたので、茶白の女の子を探しました」
■一定の距離を保てる猫がいい
希望に合う猫を見つけ、鵜飼さんは保護主の家に会いに行った。その子が雑貨店でごはんをもらっていた猫だった。
保護主は、「ごはんをくれていた店長さんのことだけを信じていた子です。店長さんは抱っこもできたようですが、触れられるようになるには何年もかかると思います」と言った。
人懐っこい猫がいいと言う人が多いが、鵜飼さんは「私にぴったり」だと思った。
「触れたり抱っこしたりできる猫よりも、お互いに入り込まず、一緒に生活をしてくれる子がいいと思っていたんです」
■鍵尻尾は幸運を引き寄せる?
3日後、保護主が子猫を連れてきてくれた。キャリーの扉を開けてもしばらく出てこなかった。出てきても半日以上トイレにこもっていて、ごはんも食べなかった。2日目、やっと少量のごはんを食べ、トイレもしたので、鵜飼さんは嬉しくなった。
凛とした女性のようになってほしいと思い、名前は凛ちゃんにした。
怖がりなのでかまい過ぎないように気を付け、一定の距離を保ちながら同居人のようにふるまったという。凛ちゃんは一人遊びが好きで、おもちゃ箱から自分でおもちゃを取り出して遊ぶ。
凛ちゃんを迎えて、ごはんを作ったり、トイレの掃除をしたり、段ボールで家やおもちゃを作ったりするうちに、鵜飼さんは「守るものができた」と感じるようになった。毎日幸福感が増してきて、インスタでたくさんの猫好きの人とつながり、結婚もした。鍵尻尾の凛ちゃんが幸運を運んだようだ。
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)