生きているだけで猫のすべてが愛おしい!…運命の出会いを7年間待った女性と「天使のようなちび虎」くんの物語
犬のようにゴロンとお腹を見せて「撫でて」とおねだりする猫が、大阪市に住んでいます。その名も「天使のようなちび虎」くん。長い名前ですが、飼い主のTさんの思いのたけを込めるとこうなってしまったのだとか。ちょっと短い「寿限無」といったところでしょうか。
Tさんにお腹を撫でてもらうと、うっとりしてそのまま寝てしまうことも。猫にしては珍しいお腹なでなでが好きなちび虎くん。実はこれ、スキンシップだけが目的ではありません。先天性鎖肛があるためうんこが出にくいちび虎くんに、少しでもスムーズに排便を促すために行っています。
お腹なでなでだけでなく、1日1回の投薬も必要です。シリンジでシロップ薬を飲ませたり、粉薬や錠剤をご飯に混ぜ込んだり。普通の猫は嫌がるものですが、ちび虎くんは嬉々としてお膝に乗って薬を飲みます。自分に必要なものだと分かっているのでしょうか。
はたから見ると大変そうなちび虎くんのお世話。でも、Tさんは全然苦ではないと言います。トイレが間に合わず床でうんこをしてしまっても、「うんこをしたのがエライ!」と褒めるほど。
顔をほころばせながらTさんは言います。
「うちの子が生きていてくれるだけで嬉しいんです。それだけでエライ!」
Tさんがこう言うのには理由があります。それは、ちび虎くんが待ちに待った「運命の子」だからです。
7年前に実家を離れ大阪へ越してきたTさん、地元では何度も運命の出会いがあったとのこと。実家で飼っていた犬や猫はすべて運命の出会いでした。例えば猫。花火大会の日、草むらで大きな音に怯えていたところを妹さんに保護されました。小さな子猫だったのに、なぜかそこが気になったのだそう。他にも、養鶏場から脱そうした烏骨鶏との出会いもあったとか。
ところが、大阪に越してきて全く出会いがありません。街に野良猫も捨て猫もいないのです。仕方なく猫カフェや猫の譲渡会に足を運ぶのですが、可愛いと思える子はいても運命を感じる子と出会えませんでした。
それでもTさんは、運命の子を待ちます。そのためになんと7年間も、ペットが1匹もいないにも関わらずペット可の部屋に住み続けたのです。
そしてようやく巡り会えたのが、天使のようなちび虎くん。出会ったのは大阪市淀川区十三本町にある保護猫カフェ【ねこの木】です。一目見た瞬間から「ヤバい!」と感じたのだそう。
この時のことをTさんは振り返ります。
「ちび虎は目に光があったんです。他の子は、普通の猫の目なのに」
障害のこともその日のうちに、店長から聞かされます。でも、それが何の問題があるのか、Tさんは分かりませんでした。運命の子なのだから、障害も全て受け入れて当たり前。「お世話が大変だから譲渡できない」となる方が、彼女にとって苦しいことでした。
晴れてTさんの家に迎えられたちび虎くん。Tさんの献身的なお世話で、体調は安定しています。それに、どういうわけかTさん自身の心身も整ってきます。夜になるといつも不安な気持ちになっていたのが、そんなことを考える暇があればちび虎くんと遊ぶ毎日。悩みの種だったロングスリーブも、今では6時間寝れば十分になりました。
Tさんとちび虎くん、お互いがお互いの存在に癒されているかのよう。これはもう、運命としか言いようがありません。
Tさんはちび虎くんとの将来について語ります。
「この子には幸せな人生を送ってもらいたいです。猫だから『今』しか知らないかもしれません。だったら、私がちび虎のこれからを考えてあげたいんです」
運命の赤い糸を7年間手繰り寄せていた女性は、ついに全てを受け入れたいと思える猫と出会いました。過去も現在も、そして未来も。
ちび虎くんもTさんの笑顔を守るため、彼女に寄り添い続けるでしょう。
(まいどなニュース特約・ふじかわ 陽子)