ダンボールに集団遺棄されていた乳飲み子猫 生後間もない2匹の姉妹と生後2週間ほどの5匹のきょうだい

 生まれて間もなく、まだ目も開いていない子猫2匹姉妹と生後2週間ほどの5匹きょうだいの計7匹が、数日間ダンボールの中に放置されていた。特に生後間もない2匹の子猫は弱って危険な状態だったが、ボランティアの協力で命を繋ぎ、一命をとり止めた。その後、7匹は元気に育ち、全頭優しい里親に迎えられた。

 2019年5月の夜、猫の相談が入った。

 「子猫がダンボールに入れられ、畑に捨てられている」というのだ。詳しく話しを聞くと、その子猫が入ったダンボールは3日程前からあったという。慌てて、その場へ直行した。

  現場は車で30分程の所にある山中。あたりは真っ暗で何も見えなかったが、相談者が目的地付近の道路脇で待っていた。すぐ現場の畑に向かうと、暗くてあまり前は見えないが、子猫のミャーミャーという鳴き声が聞こえてくる。相談者が「そこです!」と暗闇に向かって指をさす。懐中電灯で照らすと、ゴミ袋で覆われたダンボールが見えた。急いでダンボールへ近づくと、そこには驚くべき光景があった。

 猫が入ったダンボールは、あろうことか猫が出られないようにゴムバンドと紐でぐるぐる巻きにされており、外からビニール袋で縛られている。さらに、その上から大きな重石が乗せられていたのだ。慌てて重石をおろし、ビニール袋を解いた。すると、ダンボールの側面に開いていた穴から小さな子猫の手が見えた。ビニール袋を外し、ダンボールに絡まったゴムバンドと紐を解いた。

 ここでダンボールを開けると、中から子猫が出てしまう可能性がある。ダンボール側面の穴から中を確認すると、暗くて中は見辛いが、パッと見た感じで小さな子猫が10匹ほどいる。ダンボールからは、子猫のミャーミャーという鳴き声が止まらない。これは明らかに人の手にるもの。警察へ届け出るため、現場の写真を撮影し、ビニール袋など備品も回収し、子猫が入ったダンボールを抱え、すぐ車へ戻った。

 車内に着くと、すぐに子猫の状態を確認した。すると元気な子猫が5匹と、全く動かない生後間もない子猫が2匹の合計7匹がいた。おそらくふたはら。つまり2匹の母猫から生まれた5匹と2匹である。動かない2匹はもう駄目かもしれないと頭をよぎったが、体を摩るとピクッと小さく反応した。

 「生きている!」

 準備していたガムシロップを瀕死状態の子猫に与えた。子猫が低血糖状態になっている可能性があるための応急処置である。時刻は遅かったが隣町にある救急病院へ車を走らせた。病院に着くと、院内は緊急で運ばれてきた犬や猫の対応で混雑していた。

 しばらくすると、獣医が待合にいた私の元へやって来た。獣医は子猫達の状況を診ると「とりあえず、ここでミルクを与えてください」とすぐに温めたミルクを用意してくれた。元気な5匹はグビグビとミルクを飲んでくれたが、弱っている2匹うずくまったままミルクに反応してくれない。

 2匹が元気になるまで病院で診てもらえないか相談すると、この病院は深夜スタッフが無人になるため、預かることはできるが、深夜に何かあっても対応できないと言う。この状態で放置すると間違いなく助からないため、子猫たちを連れて病院を後にした。

 気が付けば日付が変わっていたが、弱っている2匹を知り合いのミルクボランティアの所で見てもらえないか連絡をすると、快く受け入れてくれた。そのボランティアは動物看護士でもあり、弱っている2匹にカテーテルを入れてミルクを与えてくれた。この子たちは、離乳するまで預かってもらうことになった。

 元気な5匹は自宅に連れて帰った。5匹はきょうだいで、みんな白キジ柄をしており、見た目がそっくりである。オス猫が4匹おり、名前はアオ、シロ、アカ、キイロ。メス猫はアメと名付けた。体調管理をする際、間違えない様にマニュキュアで首筋あたりに小さな印を入れ、その色で子猫たちを呼んでおり、そのまま名前になった。5匹は風邪を引くこともなくすくすくと育った。兄妹とても仲が良く、一緒に昼寝している姿にはとても癒された。

 数週間すると、ミルクボランティアに預けていた子猫2匹が離乳のタイミングで帰ってきた。保護当時弱っていたことを感じさせないほど元気になっていた。2匹は姉妹で、名前をチップとデールと名付けた。その後、5兄妹と姉妹は体調を崩すことなく毎日を過ごし、初期医療を済ませて里親募集をした。

 初めて参加した譲渡会は、子猫が多い時期でもあり7匹には声がかからなかった。しかし募集を続けていると、徐々に里親希望の家族が現れた。アオとキイロ、アカとシロ、チップとデールは2匹で声がかかった。アメだけ1匹であるが、若い先住猫がいる家族から声がかかり、全頭トライアル(譲渡前のお試し期間)を経て、正式に家族として迎えられ、それぞれ元気に暮らしている。

  ◇   ◇   ◇

 今回の遺棄に関して、地元警察へ証拠品を提出しました。遺棄は犯罪です。以下、環境省ホームページより抜粋。

 愛護動物を虐待したり捨てる(遺棄する)ことは犯罪です。違反すると、懲役や罰金に処せられます。

・愛護動物をみだりに殺したり傷つけた者→5年以下の懲役または500万円以下の罰金

・愛護動物に対し、みだりに身体に外傷を生ずるおそれのある暴行を加える、またはそのおそれのある行為をさせる、えさや水を与えずに酷使する等により衰弱させるなど虐待を行った者→1年以下の懲役または100万円以下の罰金

・愛護動物を遺棄した者→1年以下の懲役または100万円以下の罰金

※愛護動物とは

1 牛、馬、豚、めん羊、山羊、犬、猫、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひる

2 その他、人が占有している動物で哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するもの

(NPO法人動物愛護 福祉協会60家代表・木村 遼)

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