生存権に関わる「7040問題」…障がいのある40代世代と70代の親、夜回り先生が問題提起

 重い障がいを持った子どもたちが40代になり、その親が70代になって介助ができなくなるケースが起きている。そのことに向き合う政治のあり方も含め、夜回り先生こと教育家の水谷修氏は「『7040』問題、憲法第25条は守られているのか」と訴えた。

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 日本国憲法第25条は、「生存権」を保障する、国民にとって最も大切な条文の一つです。改めて、ここに書きます。「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」。これは、現在きちんと守られているのでしょうか。

 実は、この条文を、多くの政治家や国民が、きちんとその意味を理解していないと私は考えています。終戦後の混乱期、この憲法が作成された当時、「生存権」は、あくまで、生活に困窮する国民の生存を保障することしか考えていませんでした。しかし、今や、「生存権」は、もっと大きなものとして捉えられなくてはならない状況になっています。

 たとえば、「8050問題」です。ひきこもりの子どもを抱えた親たちが、80代を迎え、50代になった子どもを支えることができない。これを原因とする大きな事件がたくさん起きています。これは、単に親と本人の問題として、何の支援もせずに斬り捨ててよい問題でしょうか。ひきこもりの人たちに対しても、憲法は、「生存権」を保障しているのではないでしょうか。ひきこもりの人たちの社会参加を支援するための作業所などは、現在設置されつつありますが、まだまだ不十分です。

 また、私の作った言葉ですが、「7040問題」、何らかの重い障がいを持った子どもを持つ親が、70代になり、その子どもたちの介助や生活保障をできなくなったときに、その子どもたちが、この憲法の「生存権」によって守られ、幸せな生活を維持することができているのでしょうか。

 私は、二十代の頃、重い障がいを持つ子どもたちの学校で教えていました。その子どもたちが、今苦しんでいます。親の死や高齢化の中で、重度障がいの場合は施設に入所することになりますが、施設の数は圧倒的に不足しています。その結果、自宅やアパートなどで、介護援助を受けながらの生活となっているケースもたくさん存在します。きつい言い方ですが、幸せな生活を保障されているようには見えず、ただ命の保障を受けているだけに見えます。

 ぜひ、国には、生活困窮者や高齢者、病気を持つ人たちに対して「生存権」を保障し、手厚く保護することは当然ですが、さらに、ひきこもりの人たちや心を病む人たち、障がいを持つ人たちに対しても、日々を安定して生活することができ、明日を夢見ることのできる環境を速やかに作って欲しいと考えます。

 すべての国民を幸せにすることは、政治の最も重要な目標であり、義務です。

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