冬の駐車場で凍えていた子猫、先住猫から穏やかで優しい愛情をたっぷり注がれ…最期までそばを離れず
あずきちゃん(オス・5歳)は、年末の寒空の下、たった1匹で車の下にいた。車の持ち主で、大分県に住むゆうみんさんが発見して保護した。当時、ゆうみんさんは子供たちと3匹の猫が暮らす家とダブルキャリアのにゃんちゃん(オス・9歳で死亡)と暮らす家を行き来する生活をしていた。どちらの家であずきちゃんを世話するかゆうみんさんは悩んだ。
■年末の寒空の下、車の下にいた子猫
2016年12月26日、公休日だったゆうみんさんは、朝から大掃除で忙しく過ごしていた。正月の買い物も済ませておかなければと思い立ち、出かける準備をして、アパート敷地内の駐車場に向かった。車に乗り込もうと運転席側に回り込んだ時、タイヤの前輪のところに、うさぎのように丸い小さな尻尾が見えた。車の下をそっと覗き込むと、そこには、顔と手足、お腹が白い、サバトラの子猫がいた。
「駐車場にはたくさんの車が止まっているのに、私の車の下にいたのは、車から猫の匂いがしたからなのか。そのまま車のエンジンをかけると逃げてしまうと思い、車のドアを開けずに、周りを見渡しました。でも、親猫の姿はなく、鳴き声もしませんでした」
年末の寒い日に、一人ぼっちの子猫をそのまま放置して買い物に出かけることはできなかった。ゆうみんさんは急いで近くのコンビニに猫缶を買いに走り、どうか戻って来るまで車の下からいなくならないでと祈った。
■胸にしがみついた子猫
猫缶を手にして戻ると、子猫は車の下でじっとしていた。フタを開けて、そっと子猫の前に置いてみると、迷うことなく顔を突っ込んで、ニャゴニャゴ言いながら食べ始めた。
ゆうみんさんは、「捕まえるなら、今だ!」と思い、両手でしっかり子猫をつかんだ。子猫は抵抗することなく、かがんだゆうみんさんの胸にしがみいた。ゆうみんさんは、立ち上がった時に子猫がびっくりして飛び出ないように、右手で子猫を抱き抱え、左手で着ていたトレーナーのすそをまくりあげ、子猫をしっかりと包み込んでから立ち上がった。一旦自宅へ連れ帰り、病院へ。推定2カ月の男の子で、ウィルス検査は陰性、猫風邪による軽い結膜炎以外は健康だった。名前はあずきちゃんにした。
その頃、ゆうみんさんは二つの家を行き来して暮らしていた。一つは子ども達と猫のちびりんちゃん達がいる家。もう一つは2012年夏に保護した、エイズと白血病のダブルキャリア猫のにゃんちゃん(2018年12月23日没)のための家だった。
■子猫とダブルキャリアの猫
ゆうみんさんは、保護した子猫のあずきちゃんをどちらの家で飼うか悩んだ。
「にゃんの方が体調を崩しやすいので、どうしてもにゃん中心の生活になり、にゃんの部屋で暮らす時間の方が多くなっていました。あずきもまだ子猫なので、ケアが必要です。そこであずきには猫白血病ウィルス感染予防ができる5種ワクチンを接種して、にゃんと一緒のアパートで世話をすることにしました」
あずきちゃんが1歳になるまでは、同じ部屋では過ごさせなかった。時々、お互いの存在を認識させるために、あずきちゃんを透明パネルを取り付けたケージに入れてから、必ずケージ越しに対面させた。
あずきちゃんが1歳になり、3回目の5種ワクチン接種を完了してからは、主治医と相談しながら徐々に2匹を会わせていった。もちろん、毎年欠かさず5種ワクチン接種をした。にゃんちゃんはとてもあずきちゃんを可愛がり、一緒の猫ベッドに寝たり、寄り添い合って、キャットタワーの最上階で日向ぼっこしたり、とても穏やかな日々を過ごしていました。
「にゃんにとってあずきの存在は大きく、私が仕事や子供達の家に帰るため留守にしている間、寂しい思いをしなくて済むと思いました」
実際、本当に2匹は仲良しで、いつもくっついていた。
■他の猫とも共生できる穏やかな猫になった
にゃんちゃんが亡くなった日も、あずきちゃんはそばで香箱座りをして、じっとにゃんちゃんのことを見つめていた。ゆうみんさんに抱かれたにゃんちゃんが、最後に大きく息をして静かに息を引き取ると、あずきちゃんはそっとにゃんちゃんに近づいて匂いを嗅ぎ、顔や身体を舐めていた。
にゃんちゃんはが息を引き取ったのは朝4時過ぎだったが、午後の葬儀の時間までの間、あずきちゃんはにゃんちゃんの側から離れなかった。
にゃんちゃんの死後、ゆうみんさんは念のためあずきちゃんのウィルス再検査をした。結果は陰性だった。
あずきちゃんは、にゃんちゃんから穏やかで優しい愛情をたっぷりもらって育ったので、とてもおっとりとして、甘えん坊な子になった。ちびりんちゃん、まろんちゃん、小太郎くんと一緒に暮らし始めたが、喧嘩などせず、ほどよい距離感で一緒に生活しているという。
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)