駐輪場に捨てられた赤ちゃん猫を発見 身体が冷たくかすかな息だけ…“小さな命”をつないだツイートに反響
「今日、職場の駐輪場に、箱が置いてあり、中にはこんな小さな仔猫が…。パニック」
こうTwitterでつぶやいたのは、名古屋市に住む「cocon」(@oocrovyny1)さん。18日午後、昼休みがちょうど終わるころだったといいます。coconさんが働く職場の駐輪場で、段ボール箱の中に入った1匹の赤ちゃん猫が見つかりました。
■赤ちゃん猫、ピクリとも動かず…保護ボランティアに電話でSOS!
同僚に呼ばれたcoconさんが駐輪場に駆け付けたところ、赤ちゃん猫はピクリとも動かず。同僚に「死んでいるの…?」と尋ねると、「息をしている」とのこと。近付いてみると、かすかに息をしていました。ただ、身体がとても冷たくなっていたそうです。
そこで、coconさんは職場に戻って上司に捨てられた赤ちゃん猫を「どうしたらいいか」と相談しました。すると「そのままにしておくか。保健所に連れて行くか」などと答える上司…その言葉にcoconさんは戸惑いながらも、とっさに「私が責任を持って、動物病院に連れて行きますから」と言い返し、知人で保護ボランティアの紫野(しの)さんに電話をしたといいます。
しばらくして紫野さんから折り返しの電話が…「大丈夫です。大丈夫。病院付き合います」。上司の言葉に動揺していたcoconさんは、徐々に落ち着きを取り戻しました。職場で使っていた膝掛けの毛布を赤ちゃん猫の身体を包むなどして箱に入れたまま、紫野さんの自宅へ。準備されていたキャリーに赤ちゃん猫を入れたところ、冷えていた身体が温まったのかモゾモゾと動き始めたそうです。そのとき、少しホッとしたというcoconさん。すぐに2人で病院へ向かいました。
■生後10日から14日ほどの男の子 へその緒も切れたばかりだった
病院の待合室では、紫野さんが手のひらに乗るほどのちっちゃい赤ちゃん猫を優しく抱っこ。お母さん猫を思い出したのか、小さいな声で「ミャー」と鳴いたそうです。しばらくして診察室に呼ばれ、赤ちゃん猫を診てもらいました。
獣医師によると、赤ちゃん猫は生後10日から14日くらいの生まれて間もない男の子。体重は200グラムほど。目はうっすら開いていたものの、へその緒も切れたばかりで、へそから血が少し出ていたそうです。しかし、まだ小さいので、血液なども採れず…詳しく診断ができないとのこと。しばらく経過観察となりました。そして、診察してから赤ちゃん猫にミルクを飲ませたあと、紫野さんが自宅に赤ちゃん猫を連れて帰りました。
■保護ボランティアが預かることに
赤ちゃん猫について「初めて見たときは動かなかったので、このまま放っておいたら死んでしまうと思いました。かすかに息はしていましたが、息も絶え絶えで…とにかく、この子を助けないといけないと必死に考えました。ただ職場では私を含めて保護するのが難しい人ばかり。そこで、以前にも保護した猫ちゃんを預かってくださった紫野さんに連絡したんです」とcoconさん。
「以前預かっていただいた猫ちゃんは病気の子でした。紫野さんも病気の子を預かるのは初めてで。でも、最期まで献身的にお世話をしてくれました。そんな真摯な看護の様子を見ていて、全幅の信頼を置いていた紫野さんならば赤ちゃん猫をきっと助けてくれると思ってお願いしました」と振り返ります。
病院での受診後、紫野さんが帰宅したのは夜6時ごろ。保護猫用のシェルター部屋のケージに赤ちゃん猫を入れたところ、その周辺を先住猫たちが集まってきたり、うろうろしたりと興味津々だったそうです。時折、赤ちゃん猫が鳴き出す声に驚いたのか、逃げていく先住猫も。その日は、赤ちゃん猫はミルクをたくさん飲んでぐっすり眠ったといいます。
■ 赤ちゃん猫のツイートにたくさんのコメント 2日間でフォロワー1千人超
coconさんが18日に捨てられていた赤ちゃん猫について初めてツイートした投稿には3万超のいいねがついたほか、次のようなコメントも多数寄せられました。
「保護してくださって ありがとうございました。棄てた人も棄てた人だし、『保健所に』って言葉が すぐに出てしまうのも、どちらも辛くて悲しい…元気になりますように。」
「どうしてこんな小さな子を coconさんありがとうございました」
「私も昔へその緒付いてる状態の3匹を無知の状態で保護しました…生き抜いてくれますように祈ってます」
「こんな小さな子をタオルもいれずに1匹で箱に入れておくなんて。捨てる時点で最低ですがほんの少しの優しさもないんですね」
「こんな小さな子をただ段ボールに入れて放置するなんて最低の人間ですね 死んでしまうことわかっていたでしょうにね」
さらに、最初のツイートから順次、赤ちゃん猫の様子についてcoconさんが報告していたところ、18、19日の2日間だけでフォロワーが1千人を超えたといいます。
フォロワー数が一気に増えたことに「初めは戸惑いましたが、それだけ多くの方が小さな命を気に掛けてくださったということです。とても励みになりました。1匹の小さな命に心を寄せてくださったことにとてもありがたく感じています」とcoconさん。
一方で、生後間もない赤ちゃん猫が捨てられていたという現実を目の当たりにして「遺棄は犯罪です。昨年の動物愛護法改正により、同法44条第3項に愛護動物を捨てることは罰則として、100万円以下の罰金だけではなく1年以下の懲役刑が加わりました。しかしながら、現行犯でない限り今も罪に問われるケースはほとんどありません。法律は機能しなければ、絵に描いた餅同然。もっと行政や司法側が重く受け止めて、動物の遺棄についても対応してほしいです。そうでなければ、動物の遺棄はなくなりません」と怒りをあらわにしました。
■名前はむぎちゃん「麦のようにすくすく育って」
紫野さんのおかげで赤ちゃん猫の“小さな命”をつなぐことができたというcoconさん。「麦のようにすくすく育ってほしい」という思いから、赤ちゃん猫の名前を「むぎ」ちゃんと付けました。むぎちゃんは今、紫野さんのシェルターで1日ミルクを4~5回ほど飲みほし、よく寝ているとのこと。起きているときはモゾモゾ動いたり、鳴いたりして元気な様子で成長しています。22日には病院で再診。体重が20グラムほど増えたといいます。
■しっかり育ってくれたら…優しい里親さんを探したい
今後、むぎちゃんがしっかりと育ってワクチンを接種できるようになったころには、里親さんの募集も検討しているそうです。
coconさんと紫野さん2人は「むぎちゃんを終生愛してくださる、家族として迎えていただける優しい里親さんにつなげることができたらいいなと思っています。ただ最近、私たちが住む名古屋市内では、池に死んだ野良猫が相次いで発見されたり、里親詐欺が起きたりが続いており、心から信頼できる里親さんを見つけたいと思っています。なので、里親ご希望の方にはいろいろプライベートのことをお聞きしたり、譲渡契約書を書いてもらったりしています。チェックも厳しくするつもりです」と話します。
紫野さんのご自宅シェルターにはむぎちゃんを含め18匹の保護猫がいます。今は部屋を改装した小さな私設シェルターで猫たちを保護していますが、里親希望の方が気軽に見学できるような開放型のもう少し大きなシェルターを作るのが夢だそうです。また、里親さんを募集中ですので、ご検討される方は紫野さんのTwitterアカウントまでお問い合わせください。
(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)