2匹の猫は、家族みんなを笑顔に 「言葉にできない可愛さ」とお父さんがせっせとお世話
自分はこういう人間だ、と男性は凝り固まってしまいがち。それも40代となると、なかなか新しい自分と出会えることなんてありません。大阪市に住むKさんも、そう思っていた一人です。
基本的な性格はズボラで、家事や育児は妻からの指示があれば頑張る。そんな今風のお父さんがKさんです。妻と2人の息子のため、平日はバリバリ働き休日に趣味のガラス細工とツーリングを楽しむ。代わり映えのしない日々が続くはずでした。
そんなKさんが今や、せっせと猫たちの世話を焼きます。朝は5時50分に猫たちに起こされ、ご飯の準備。食べ終わったらエサ皿を洗って、今度はトイレ掃除です。それらが終わってから、やっと人間の朝食。そして出勤します。これが全く苦にならず、むしろ楽しい。
Kさんの意外な一面を引き出してくれたのは太郎くんと小鉄くん、2匹の保護猫です。
太郎くんとの出会いは偶然でした。Kさんが何気なくFacebookを眺めていると、中学の同級生が保護猫の里親募集の記事をシェアしていたんです。そこに掲載されていたのが、キジトラの太郎くん。
野良猫が産んだ子で、このころ生後約2カ月です。母猫に育児放棄されていたところ、保護されたと記されていました。
この時のことをKさんはこう言います。
「運命的です。言葉では説明できない可愛らしさでした」
Kさんの妻も一目見て気に入ったのだそう。ご実家で昔一緒に暮らしていた猫も、キジトラだったんですって。
すぐに迎えたい旨を連絡し、話はとんとん拍子。太郎くんはKさんのもとにやってきます。子猫の太郎くんを眺め、Kさんは不思議な感覚に陥ったのだそう。今までと変わらないはずの家の中、子猫がいるのですから。
「まさか自分が猫を飼うなんて、そんな発想は今までありませんでした。ペットは熱帯魚ぐらいしか飼ったことがなかったんです」
そんなKさん、太郎くんを迎えた約2年後に小鉄くんも迎えます。これは太郎くんのためだけでなく、家族のためでもあったとのこと。
「太郎だけだと、人間と1対1の関係になってしまっていたんです。そうなると、太郎の要求が大きくなり過ぎていました。これは双方にとってフラストレーションがたまる結果に。特に太郎は思い切り遊ぶ時の力加減が分からず、私たちは生傷が絶えませんでした」
さて、小鉄くんという弟分ができた太郎くん、今まで家族の愛情を一身に受けていたのですから嫉妬にかられるかと思いきや、とても小鉄くんを可愛がったんです。小鉄くんのお世話をすることで、今まで知らなかった甘噛みも覚え、Kさんや家族が流血することもなくなります。
良い変化は、お子さんたちにも。実は長男さん、小学生のころに犬に吠えられてから動物全般が苦手。それなのに、今では猫たちの気持ちをよく汲み取る良いお兄ちゃんに。お兄ちゃんの抱っこなら、太郎くんも小鉄くんも嫌がりません。これにはKさん、ちょっと悔しい。
でも、Kさんだけしかさせてくれないこともあるんです。それは『お父さんエレベーター』。
趣味のガラス細工をする際、バーナーを使っている机の隣にある棚の上へ太郎くんが行きたがるとのこと。熱は上がっていきますから、棚の上が暖かいようです。この時、太郎くんはKさんの肩に乗って目で催促をします。
「お父さん、ここに行きたい」
Kさんはそのまま立ち上がって、太郎くんを棚に移動。エレベーターでしょ?
小鉄くんは遠くから、Kさんのガラス細工が出来上がるのをワクワクして待ちます。冷めたガラス細工はおもちゃにちょうど良いみたい。Kさんは「ダメダメ」と言いながら、ガラス細工の替わりのおもちゃを用意しちゃいます。
こんなお父さんの姿を眺める家族も、ニコニコの笑顔。共通の話題ができることで、会話が今まで以上に弾むようになりました。
猫たちが散らかした物を片付けながら、Kさんは思います。
「自分って意外とマメだな」
そんなKさんの夢は、太郎くんと小鉄くんを自然光の中で見ること。彼らの毛が太陽に照らされるときっと綺麗でしょう。その綺麗な姿を見ることで、また新しい自分と出会えるかもしれません。
その夢が、いつか叶いますように。
(まいどなニュース特約・ふじかわ 陽子)