新曲「夢浪漫」ヒットに意欲のオール巨人 「昔の夢ってなんやったやろうか」歌手としての大成が夢

2月10日にニューシングル「夢浪漫」をリリースしたオール巨人さん。巨人さんと言えば漫才コンビ「オール阪神・巨人」で長年活躍し、一昨年には紫綬褒章まで受章したお笑い界の重鎮だが、このところ歌手としての活動も大きな注目を集めている。

きっかけになったのは2016年の「男の子守唄」。何度も挫折しながらも夢をあきらめず生きる男の姿を、ソフトな味わい深い歌声でみごと表現した同曲はNHKラジオ「ラジオ深夜便」などで評判になり、オリコンランキングに計11週ランクインするロングヒットを記録。コロナ禍による中断はあるものの、ライブやメディアの音楽番組に出演する機会も増え、着実に新たなファン層を開拓しているのだ。

「夢浪漫」はそんな巨人さんが5年ぶりに満を持してリリースした渾身の新曲。「夢浪漫」は果たしてどのような思いを込めて作られた曲なのだろうか。巨人さんにこれまでの"音楽人"としての履歴にも触れつつお話をうかがった。

■音楽好きの一家で育った

中将タカノリ(以下「中将」):巨人さんは元々どんな音楽に影響を受けてこられたのでしょうか?

巨人:親父がレコード好き、お袋も若い頃に宝塚音楽学校を受けたくらいの音楽好きの一家で育ちました。中でもフランク永井さん、春日八郎さん、村田英雄さんはよく聴きましたね。高校に入ると藤圭子さんにあこがれてファンクラブにも入りました。今でもレコードやCDは全部持ってるほど好きですね。

中将:どちらかと言うと演歌がお好きだったんですね。巨人さんが青春時代を過ごした1960年代だと洋楽やポップス、ロックも流行ってきていたと思いますが、ご関心はなかったでしょうか。

巨人:ちょうどビートルズが流行った世代ですが、英語になると何を歌ってるのか意味がわからないでしょ。僕は英語の授業が大嫌いやったんで(笑)。でもムード歌謡やグループサウンズは好きですしよく歌いもしました。要は歌詞なんですね。

中将:お若い頃から歌うこともお好きだったんですか?

巨人:子供の頃から好きで、遠足のバスとかでは絶対に歌ってましたね。「南出くん(※本名:南出繁)上手いな!」って評判になって、よく人前で歌わされてたんです。

■漫才で売れたら一日署長もできるしレコードも出せる

中将:歌手になりたいとは思われなかったのでしょうか?

巨人:若い頃は相撲取り、警察官、体育の先生とかなりたいものがたくさんあって、歌手もその一つでした。でもある日、気付いたんですよ。漫才で売れたら一日署長もできるしレコードも出せるなと(笑)。それで漫才の道に進むわけです。

中将:思惑通り、漫才師になられた翌年1976年には「巨人ファンここにあり/阪神ファンここにあり」というレコードを出されるわけですが、どのようないきさつでそうなったのでしょうか。

巨人:当時はお笑いで売れたら誰でもレコードを出す時代でした。会社から「みんな出すから阪神・巨人も出そうや」と声をかけられてコンビでレコードデビューしたんです。それが関係者の間で評判が良かったので、1982年にはソロで「あんじょうやりや」を出すことになりました。

中将:「あんじょうやりや」は作詞を喜多条忠さん、作曲をBOROさんが手がけたグッとくるミディアムナンバーですね。「お笑い芸人の歌」という感じではなく本格的な歌モノで、当時の巨人さんの意気込みが伝わってくるようです。当時はライブもやられていたんですか?

巨人:「花月」をもじったフラワームーンというバックバンドを作って、バナナホール(大阪)、チキンジョージ(神戸)とかでライブしましたね。自分の曲はまだ少ないからたかじんや松山千春さん、高山厳さん…あとは宇崎竜童さんの「ハッシャバイ・シーガル」も好きでよく歌いました。

中将:その後、90年代にかけて何枚かのレコードを出されますが1994年に中條かな子さんとデュエットした「FURIN」以降は長いブランクがありましたね。

巨人:会社から出してくれと言われることが無くなったので、なんとなく「仕事としての音楽活動はもう終わったのかな」と思い込んでたんです。

中将:2011年にシングル「桜の手紙」で音楽活動を再開されたのにはどんないきさつがあったのでしょうか?

巨人:その頃、僕はC型肝炎の治療でとても弱っていました。たった5段の階段を昇るのもしんどいような状態でね…。そんな僕の様子を見かねた神野美伽さんが「うちの旦那(荒木とよひささん)が曲書くから、好きな歌でも歌わへん?」と声をかけてくれたんです。ちょうど娘が結婚するタイミングやったんで、父から娘へのメッセージを込めたいい曲を作ってもらいました。

だけど、いざレコーディングに臨むと全然声が出ない。2曲録るだけで体力的にももうフラフラですよ。当然、仕上がりにも納得いかないし悔しさが残ったんですが、それがあらためて真剣に音楽に向かい合うきっかけになりました。

■いつもお風呂でトレーニング

中将:その甲斐あってか2016年の「男の子守唄」は巨人さんにとって最大のヒット曲となりました。この頃はもう体調は回復されていたのでしょうか?

巨人:はい、この時はもう元気になっていましたし、ボイストレーニングの方にも付いてもらって万全の態勢でレコーディングに臨めました。声が出やすいと気持ちも良く入るんでしょうかね。

中将:一度、ライブハウスで巨人さんのライブを拝見したことがありますが、並の歌手よりよほど声量があるし、堂々とした雰囲気のある歌いっぷりには目を見張るものがあると思いました。

巨人:声量はあるほうだと思います。いつもお風呂でトレーニングをしてるんですよ。深く息を吸った後に一旦止めて、さらに空気を小分けに飲み込むように息を吸って、限界になると吐く。これを何度も繰り返すんです。自分で勝手にやってるトレーニングやけど、おかげで69歳になった今でもそこらへんの若い人より声量があるし、それが漫才にも歌にも活きてると思います。

中将:たしかに効きそうなトレーニングですね!お風呂でのトレーニング以外にもコンディションを保つ秘訣はあるのでしょうか?

巨人:手足の指をよくもむことですね。特に足の親指の根っこを刺激すると喉がよく開くんですよ。こないだのNHKの「うたコン」でも本番前にめちゃくちゃ足の指をもんでました(笑)。

中将:専業歌手でも70歳前後になると実力面で下り坂になってしまっている方が多いので、巨人さんのお風呂トレーニングや指もみにはもの凄い効果と信憑性を感じます。ぜひ多くの歌手に真似してほしいですね。

いよいよ本題の「夢浪漫」についてですが、今回の制作はいつ頃から計画されていたのでしょうか?

巨人:けっこう長くかかってるんですよ。1年半くらい前にはもう計画をし始めていて、本当は去年の3月に出す予定だったのがコロナのせいで延期になってしまいました。

中将:過去をふり返りながら夢を持って生きてゆく…どこか「男の子守唄」にも通じるような内容の歌詞ですね。

巨人:「男の子守唄」を書いてくれたオオガタミヅオ先生と、次もまた一緒にやろうと約束していたんですよ。そして声をかけたら「待ってました!」と候補曲を4曲渡されました。阪神くんとの活動をふり返る曲とか、嫁さんにメールでラブレターを書く曲とかいろいろあって全部良かったんですけど、「夢浪漫」の歌詞が一番実際の自分の経験に当てはまって、今の気持ちにも合っていると思いました。昔の恋、立派に育ってくれた子供への感謝…自分が経験して、実際に思ってることを歌うのが一番気持ちが入るでしょ。

オオガタ先生には無理を言って歌詞を少し変えてもらいました。たとえば3番の「育ってくれた子供らも」という部分は元々は「育て上げた子供らも」やったんですよ。若い頃は忙しくてほとんど家に帰らんかったし、「僕が育てた」なんてえらそうには言えない。そんな感じで2、3箇所は僕の意見を取り入れてもらいました。

■昔の夢ってなんやったやろうか

中将:しみじみした曲調ながら、とても気持ちよく歌い上げておられる印象ですが、仕上がりの感想はいかがでしょうか?

巨人:今回、実はレコーディングを2回やってるんです。初めレコーディングした歌声を家で聴き返していたんですが、どうも満足いかない。ミキサーさんは東京から来ていたのでずいぶん手間をかけてしまったんですが、1ヶ月後にあらためてレコーディングすることになりました。みんな協力してくれてるのに僕が中途半端な歌を歌うわけにはいかんから、本番までずいぶん練習しましたよ。漫才でもそこまで一生懸命やったことないのに(笑)。

そしたらレコーディングの時、みんな「巨人さんどんな練習してきたんですか!?」と驚いてくれてね。結果的に良いものができたと思っています。

中将:今回、カップリングの「Last my way」も先日亡くなった中村泰士さんからの提供ということで話題になっていますね。

巨人:この曲は生前、中村先生が無観客ライブ配信をやられた時にゲスト出演して歌わせてもらったことがありました。まるで先生の人生を歌ったようなスケールの大きな曲です。

レコーディングするにあたり最後の「Last my way」の部分を張り上げるようにアレンジして歌ったので、それを聴いてほしかったんですが叶いませんでしたね…。

中将:「夢浪漫」は発売以来、各種ランキングで好成績をおさめています。発売記念のオンライントークイベントではNHK紅白歌合戦出場についてもご希望を語っておられましたが、自信のほどはいかがでしょうか。

巨人:いやいや、細い道でも繋がっていけばいいなと思うだけで(笑)。

でも…僕は今年、古希を迎えるんですが、「自分の古い希望、昔の夢ってなんやったやろうか」と真剣に考えるんです。漫才として売れることももちろん夢やったけど、歌手として大ヒットを飛ばして紅白の舞台で歌うことはそれ以上の夢じゃなかっただろうかと。

もちろん簡単なことではないし、もっと頑張らなければいけないと思いますが、「夢浪漫」の歌詞のようにあきらめずに夢に向かって進んでいきたいですね。

◇ ◇

巨人さんは今後も「夢浪漫」のさらなるヒットに向けメディア出演、キャンペーン等を企画しているという。コロナ禍がおさまり、巨人さんがライブでこの曲を披露する日が早く来ることを願いたい。

「夢浪漫」商品概要

発売日:2021年2月10日

型番:YRCN-90321

収録曲:

1.夢浪漫

2.誠!!浪速の晴れ姿/オール阪神・巨人

3.Last my way

4.夢浪漫(オリジナルカラオケ)

5.誠!!浪速の晴れ姿 (オリジナルカラオケ)

6.Last my way(オリジナルカラオケ)

7.夢浪漫(半音下げカラオケ)

8.誠!!浪速の晴れ姿 (半音下げカラオケ)

9.Last my way(半音下げカラオケ)

価格:1182円(税抜)

発売元:よしもとミュージック

(まいどなニュース特約・中将 タカノリ)

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