猫だって誰かに必要とされたい! あるがままを受け入れた猫は優しいお兄ちゃんに

誰かから必要とされたい。そう願ってしまうのは、人間のサガかもしれません。そして、実は猫も、必要とされたいと願っているよう。

神奈川県に住むイナリくんは、弟分・妹分ができてからとても穏やかな性格になった猫。それ以前は、なんとなくイライラして真夜中の一人運動会も激しいものでした。それが今では、とてもおとなしく優しい猫に進化です。どうやら弟分・妹分に頼りにされることが、イナリくんを成長させてくれたようです。

イナリくんは元々野良猫。神社の境内で他の猫と過ごしていたところ、体調が悪そうなため保護されました。2015年11月、生後約半年の時です。それだけでなく、黒い服を着た男性がとても怖い。影が見えるだけで、耳を伏せて威嚇です。

なかなか引き取り手がつかなかったイナリくんですが、Yさん夫妻に見染められます。ようやく落ち着いた生活が送れるはずなのに、なかなか心を開いてくれません。ドーム型トイレにこもって、ご飯の時以外はそこで過ごす日々。

さすがに大きくなるとトイレにこもることはなくなりましたが、今度は押し入れに入ったまま出てきません。夫妻が寝静まってから、一人運動会。それでも、Yさん夫妻は「いつかきっと」と待ち続けました。神社で過ごしているころ、恐らく何か嫌な出来事があったのだろうから。

そんなイナリくんに転機が訪れます。2019年9月、弟分のキナコくんがY家の一員になったのです。生後約2か月のキナコくん、イナリくんの都合など一切お構いなしに元気いっぱい向かってきます。

最初はイナリくん、シャーシャー!と威嚇をしていましたが、キナコくんには通用しません。何をしても「遊んで遊んで」とアピールを続けます。根負けしたイナリくん、ついにキナコくんのお世話を始めました。

キナコくんのお世話を始めたイナリくん、今度はなんとYさん夫妻と一緒に寝るようにもなったのです。これにはYさん夫妻もビックリ。

この変化にYさんはこう言います。

「思い通りにならない子猫のキナコを相手していると、イナリはあるがままを受けれることを覚えたのかなと思いました」

あるがままを受け入れ始めたイナリくん、もう1匹で押し入れにこもることはありません。というより、出来なくなりました。キナコくんがどこにいてもついてくるからです。

更に追加の子猫。この子も引き取り手がつかなかった元野良猫です。名前をラナちゃんといいます。おてんばな女の子で、イナリくんは片時も休むことができません。

それなのに、1匹で過ごしていた時より生き生きしているのだそう。大きくなったキナコくんと一緒にラナちゃんを可愛がります。

Yさん夫妻がほっと胸を撫でおろした矢先、今度はYさんが体調不良に。仕事も上手くいっているとは言い難い状態です。入院もし、「もうダメだ」と絶望の淵に立ちそうになった時、妻から猫たちの動画が送られてきたのだそう。

消灯後のベッドの中、スマホで見る猫たちの動画の明かりが辺りを照らします。この時にYさんはこう思ったと言います。

「僕にはこの子たちがいる。この子たちが必要としてくれているのだから、頑張らなくちゃ」

Yさんはついに休職を決めました。じっくりと体調を整えてから、再び仕事をすれば良い。それまでは妻のため猫たちのために、歯を食いしばってでも働かなければならないと思い込んでいました。しかし、健康であることが家族にとって最も大切なことだと気づいたのです。

今、Yさんは一日中、家で猫たちと向き合います。ただ声をかけ撫でるだけでも、イナリくんを始め猫たちはとても嬉しそう。代わる代わるYさんの傍に寄ってきます。

「こんな時間が持てたのも、病気になったからかな」

そう言い「あるがまま」を受け入れたYさんの表情は、とても穏やかでした。

(まいどなニュース特約・ふじかわ 陽子)

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