民家の屋根から転落した子猫を保護 情が移り泣く泣く譲渡するも、すぐに帰ってきて同居犬は大喜び
五エ門くん(生後7カ月・オス)は、民家の屋根から転落して、動けなくなっていたところをボランティアに保護された。ミルクボランティアの濱さんが飼っていた猫の平次くんとシェパードのアルベルトくんは、五エ門くんを弟のように可愛がった。しかし、やがて五エ門くんの里親希望者が現れた。
■民家の屋根から落ちた子猫
2020年8月31日のお昼頃、猫の保護活動をしている瓜破ねこの会のボランティアが、JR東大阪線野江駅近くの民家の屋根の上で滑り落ちそうになっている子猫を発見した。なすすべもなく見守ると、子猫は路地に落下した。路面はアスファルトではなく、土で雑草が生えていた。近くに大きな猫がいたので、連れていくかもしれないと思ったが、1時間おきに見に行ってもあまり変化はなかった。大きな猫は、助けたいが助けられないようだった。
3時間ほど経つと、子猫の鳴き声が小さくなってきたので保護して動物病院に連れて行ったという。落下した時にお腹を打ったようで少し内出血があったが、触診では異常はなかった。体重260g、生後3週間くらい。注射器で猫用ミルクを与えると、ゴクゴク元気に飲み干した。
■先住猫の平次くんや犬のアルベルトくんが歓迎
瓜破猫の会の代表、井田さんが子猫を預かり、里親を募集する予定だったが、翌日、大阪府に住む濱さんがミルクボランティアを引き受け、離乳まで預かることになったという。仮名はラッキーくんになった。
ラッキーくんはガリガリにやせているわけではなく、母猫の母乳をしっかり飲んで育ったようだった。濱さんは、きれいな猫で、可愛くなるだろうなと思った。
濱さんはアルベルトくん(12歳・オス)というジャーマンシェパードと2匹の猫を飼っていた。
「猫のとらのすけ(14歳・メス)と平次(4歳・オス)は年が離れているので、活発に遊びたい盛りの平次がとらのすけを遊びに誘っては怒られていました。平次の遊び相手がいてくれたらいいなと思っていました」
平次くんはラッキーくんに興味津々で、ミルクをあげている時も近くまで見に来たが、とらのすけちゃんは我関せずという感じだった。
平次くんは生後1週間くらいの時に保護され、濱さんの友人を介して濱さんのところに迎えられた。シェパードのアルベルトくんは、濱さんが平次くんを育てるのを手伝うほど子猫が大好きなので、ラッキーくんのことも間近で見守っていた。
■里親希望者が現れた
ラッキーくんは、哺乳瓶でミルクを飲むようになり、トイレも覚え、順調に成長した。自分よりはるかに大きいアルベルトくんのことも怖がらずにいた。アルベルトくんもラッキーくんが大好きで、胸の間に入れてぎゅっと抱いていた。
しかし、濱さんは離乳までのボランティア。里親候補者が現れたので、9月23日、いったん瓜破猫の会の井田さんにラッキーくんを返しに行った。その時、アルベルトくんも一緒に行ったが、ラッキーくんを抱っこして立ち去る井田さんの後を追った。家に帰っても寂しそうで、平次くんもラッキーくんがいたケージを毎日のぞいていた。
濱さんは、「トライアル中に少しでも不安を感じるなら、我が家で引き取ってもいい」と井田さんに伝えていたが、2日後、本当にラッキーくんが帰ってくることになった。アルベルトくんとラッキーくんの様子を写真や動画で見ていた里親希望者が、「この子たちを引き離すのはどうか」と思い、返してくれることになったという。
帰宅後、ラッキーくんは平次くんと一緒に遊び、寝て、ごはんを食べた。アルベルトくんもラッキーくんにぎゅうぎゅう身体を擦りつけ、ぺろぺろなめたり、甘噛みしたりした。
仮の名前はラッキーくんだったが、正式に濱家の子になって、五エ門(ゴエモン)くんという名になった。濱家の猫は、みんな和の名前で、時代劇の主人公やお庭番の名前だが、「~門」とつけたいという希望もあり、悩んだ結果ルパン三世の五エ門にちなんだ名前にしたという。
■やんちゃな甘えん坊
まだ7カ月の五エ門くんは、やんちゃで甘えん坊。何にでもじゃれて、何でもおもちゃにしてしまう。兄弟姉妹と育たなかったせいか甘噛みができず、マジ噛みしてしまうので、別名は「ガブリエルくん」。平次くんも噛みつかれることがあるが、ほとんど反撃しないので、教育係にはなれない。
甘えん坊なので、濱さんが大好き。帰宅すると、「お帰りー」と玄関に来てくれる。
「基本的にママっ子で、よく私に付いてきます。お風呂やトイレもドアを開けたら待っています。一緒に入ってくることもあるんですよ」
2020年の年末にアルベルトくんが椎間板ヘルニアになり、家で寝ていることが多くなった。五エ門くんは、寝ているアルベルトくんのお腹のすき間に入り込んでベッドにしたり、一緒に寝たりする。猫のゴロゴロ音が癒しになるのか、アルベルトくんの具合もかなり良くなり、家の中を歩けるようになったそうだ。
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)