亡き愛猫への恩返しは、同じ黒猫を育てること…絶望的な別れから自分を責めてしまいそうに 今は2匹の猫と穏やかに暮らす

真っ黒で綺麗な毛並みのみりんくんは、もふもふゴージャスなかぼすちゃんと飼い主のTさん夫妻の4人ぐらし。とても愛想の良い猫で、誰が訪ねてきてもスリスリゴロゴロ。コンパニオンアニマルとして優秀すぎる猫です。

そんなみりんくんに育てられたかぼすちゃんも、誰に対してもフレンドリー。T家に遊びにいくと、この2匹の美しい猫たちが接待してくれるのだそう。

みりんくんとかぼすちゃんへ一心に愛情を注ぐTさんは、50代のサラリーマン。実は、妻より猫たちの方が付き合いは長いとか。

Tさんとみりんくんの出会いは、今から11年前にさかのぼります。それまでTさんと一緒に暮らしていた黒猫の「くろすけ」の後釜に迎えらました。

くろすけくんが亡くなった原因は餓死。脱走した後、まったくご飯が食べられなかったのです。

脱走後、Tさんは必死になって探すものの、2カ月の間見つからず。ようやく隣の家の納戸で発見された時には、すでに虫の息。くろすけくんはTさんの顔を確認すると、絶命してしまいました。

この時の悲しみはとても大きなもので、気を抜くと自分を責めてしまいそうに…。ペットロスに陥っては、くろすけくんにも申し訳ないと考えたTさん。すぐ新たに一緒に暮らす猫を求め始めました。

この時のことをTさんはこう言います。

「落馬をしたらすぐ馬に乗れと言うじゃないですか。時間が経てば経つほど、馬に乗るのが怖くかるから。猫も同じです。悲しみにひたる時間を作ったら、猫と再び暮らせなくなると思ったんです。いくら悩んでも、くろすけは生き返ることはありませんし…」

このような経緯から引き取られたのが、黒猫のみりんくん。障がい者の作業所に母猫と一緒に捨てられていた子猫で、初めて会った瞬間からTさんにしがみついたのだそう。そんなことをされたら、連れて帰らないという選択はありません。

目の色がみりんの色だから「みりん」と名付けられた子猫は、すくすくと大きくなります。見た目はくろすけくんに似ていますが、性格は全く逆。おっとりと優しく、どちらかというと保守的。

とても育てやすい子猫だったみりんくん。性格のこともありますが、Tさんはこうも言います。

「くろすけに多くのことを教えてもらっていたんです。それをみりんのために使いました。そうすることが、くろすけへの恩返しになるかと」

そのみりんくんが2歳の時、今度はかぼすちゃんがT家に迎えられます。

かぼすちゃんはTさんが住んでいたマンションに住みついた野良猫の子で、恐らく父親はこの辺りのボス猫。サイベリアンのように見えるので、繁殖場から逃げ出してきた猫の子孫ではないかとTさんは推理します。

かぼすちゃんはおっとりした子で、どう考えても野良猫として生きていけない雰囲気だったよう。兄弟猫と遊べない、餌やりさんからの餌も食べ損ねる。じゃあ、うちにおいでとなりました。

みりんくんは大歓迎!一度も威嚇せず、甲斐甲斐しくかぼすちゃんの面倒を見ます。優しいみりんくんにかぼすちゃんもすぐ心を開き、出会った時から7年間ずっと仲良しです。

2匹の穏やかな猫と過ごすTさんは、猫を【ソーシャルな存在】だと言います。猫を通じて多くの人から学び教わってきたから。それをまた誰かに返していく。この循環が【社会】。

このような考えのTさんと一緒に暮らしているからこそ、みりんくんもかぼすちゃんも人間に対して優しくなれるのかも知れません。これからも2匹は、来客にスリスリゴロゴロするでしょう。

(まいどなニュース特約・ふじかわ 陽子)

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