お父さん大好き!毎日腕枕を要求する猫のトンくん 実はお父さんのほうもトンくんに「恋」をしていて…

マンションのエレベーターが動き始めると、玄関へいそいそ移動する猫がいます。東京都に住むトンくんです。お父さんのTさんが乗っているエレベーターか、そうじゃないかも分かるみたい。玄関のドアノブが動くとワクワクは最高潮!

ドアが開きお父さんの顔が見えると、太くて短い鍵尻尾を震わせながら喜びを伝えます。あとは、ずっとお父さんにベッタリ。お風呂へもトイレへも。

寝る時は必ずお父さんの腕枕で。お父さんがベッドに横たわると、脇をチョイチョイと触って催促です。お父さんは腕がしびれても、トンくんのために腕枕を30分から1時間行います。

これが毎日。

はたから見ると代り映えのしない日常も、トンくんにとっては感動の日々。お父さんが帰ってきてくれるだけで、歓喜の渦に飲み込まれます。

さてこのトンくん、母猫は半野良の猫。お父さんのお友達の家に出入りをしていたそうです。その猫が出産、子猫を置いて再び気ままな半野良ライフ。困ったお父さんのお友達が、引き取り手を探していました。そこでT家に白羽の矢が立てられます。

他の兄弟は全員真っ白な猫で、トンくんだけがキジトラ模様だったそう。それがとても魅力的に見え、トンくんはT家へ迎えられることとなります。今から7年前、生後2カ月の時でした。

その後はのんきな暮らしです。家族はお父さんとお母さん、小学校高学年のお兄ちゃんが2人。この4人の家族からベタベタの甘々に可愛がられ、すくすくと大きくなります。

一方、お父さんの方は最初のころ、毎日が脳内修羅場です。なにしろ猫を飼うのは初めてですから。それまでは平日は家と職場の往復、休日は息子たちの習い事に同行するといった、平凡極まりない日々でした。

いずれ猫と暮らしたいとぼんやり思っていたのが、突然実現。プチパニックです。

何しろ、言葉が通じません。トンくんの行動から欲求を読み取るしかないのです。そこで、インターネットはもちろんのこと、雑誌や書籍からも情報収集。猫について学びます。

トンくんのことをもっと知りたい、理解したい。我が子はもちろん可愛いし愛しているけれど、それとは違う。

これはもう恋です。

お父さんはこう言います。

「息子たちには、自分の将来は自分で考え、決められる人間になってほしいと願っています。私たち親は、そのサポート係です。でも、猫は違うんです。考えてあげたいんです。自分がここまで誰かのために献身的になれるなんて思ってもみませんでした」

トンくんが2歳になった時、T家にもう1匹猫が迎えられることになりました。この子も半野良の母猫から生まれた子で、綺麗なグレーの男の子。生後2カ月のこの猫は「ポコ」と名付けられます。

トンくんは良いお兄ちゃんとなり、ポコくんのお世話をせっせと焼きます。まるで「可愛い可愛い、ボクの弟」と言っているかのような溺愛っぷりです。

でも、お父さん一番の座は譲らない。

なので、ポコくんはお父さんでなくお母さんの一番になることに決めたよう。お父さんには少しクールな対応です。

そんなポコくんも、お父さんは可愛くてたまりません。トンくんに熱烈な愛情を向けられている分、新鮮だと言います。毎日毎日「可愛い可愛い」と言いまくっているのだとか。

「妻は私に“甘やかしすぎ“と言いますが、猫の寿命は人間より短いじゃないですか。今愛情を伝えておかないと必ず後悔します。ずっと一緒にいられないから、時間を大切にしたいんです」

お父さんのそんな様子を、お母さんは微笑ましく見ているのだそう。

何気ない日常は、誰かを慈しむことで輝く。それをT家の人たちに教えてくれたのは、猫のトンくんとポコくんだったようです。

(まいどなニュース特約・ふじかわ 陽子)

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