会社の敷地で、野良猫の子猫を兄弟で捕獲 甘えん坊な弟は、眠るときに兄のおっぱいを吸うほど仲良く育つ
シロちゃん、クロちゃん(5歳・オス)は、テニスコートの敷地内の芝地で暮らす野良猫が産んだ子猫だった。野良猫たちを見守ってきた笠松さんは、このままでは野良猫が増えてしまうと思い、子猫たちの捕獲作戦を決行した。
■「ごはんだよ~」と呼ぶと集まる野良猫たち
2015年、愛知県に住む笠松さんが勤めていた会社の横にはテニスコートがあり、広い芝生が張ってあるスペースもあった。笠松さんは、そこに体の大きな真っ黒の猫がいるのに気がついた。しばらくするときれいなシャム猫の姿も見えた。2匹は、数日経ってもどこかに行く気配はなかった。
勤めていた会社の専務はとても動物好きで、よく動物の話をしていたので、笠松さんは猫がいることを話した。「私たちで世話をしよう」ということになり、キャットごはんを買ってきてくれたので、お皿にごはんと水を入れて芝生スペースの隅に置いたという。
朝夕「ごはんだよー」と声掛けをしてごはんを置くと、しばらく食べなかったが、数日するとお腹が空いたのか信頼してくれたのか、人間が離れると食べるようになった。1カ月後には「ごはんだよー」という声を聞くだけで近づいてくるようになったという。
■このままでは野良猫が増えてしまう
数カ月後、黒猫とシャム猫と一緒に3匹の子猫が出てきた。白いキジトラ1匹と茶色のキジトラ2匹だった。よちよち歩いていたので生後2カ月くらいのようだった。子猫たちはとても可愛くて、芝生スペースに生えている草で遊んだり、木に登ったりしていた。芝生スペースの横には違う会社の施設があり、配管がむき出しになっていたのだが、配管は温かく湯気が出ていたので、冬でも猫たちは寒さをしのぐことができた。雨風をしのげる大きな木もあり、猫にとってはいい環境だった。
半年後、白いキジトラは大人になり、茶色のキジトラ2匹はオスだったのか姿を消した。
「しばらくすると白いキジトラも出てこなくなったんです。病気で倒れていないかすごく心配しました。すると数日後、子猫を2匹を連れて出てきたんです。この子たちが後に私が飼うことになるシロとクロでした」
「このままでは野良猫が増えてしまう」と思った笠松さんと専務は、子猫たちを保護することにした。
■捕獲作戦決行
タモを使って元気に遊んでいた子猫を1匹捕まえた。母猫はびっくりして離れたが、しばらくすると戻ってきて「どこに行ったの?」と探しているようだった。
「心苦しかった。申し訳ない気持ちもあったのですが、子猫たちはこれからくる猛暑に耐えられないかもしれない」と、心を鬼にして保護しました」
段ボール箱に破った新聞紙を敷き詰め、タオルと水、ごはんを入れたものを事前に準備していたので、そこに子猫を入れた。子猫は本当に警戒心がなく、すぐに慣れてごはんを食べた。残る1匹もすぐに捕まえたかったが、警戒して逃げてしまったので、時間を空けて再挑戦することにしたという。
就業時間中は専務室で子猫を預かってもらい、夕方同じ方法で2匹目の子猫を捕まえた。子猫はとても臆病な子で、ブルブル震えていた。すぐに兄弟が入っている段ボール箱に入れると、ニャーニャーと鳴きながら子猫の陰に隠れた。
■シロちゃん、クロちゃん
笠松さんは、2匹を飼おうと思い、夫に「子猫2匹連れて帰ります」とLINEを送った。帰宅途中ペットショップに寄って猫砂など必要なものを買い、動物病院に行った。幸い2匹とも病気はなく元気だった。帰宅すると、夫は驚いていたが、猫好きだったのでとても喜んだ。
子猫たちの父猫をクロちゃん、白キジトラの母猫をシロちゃんと呼んでいたので、その名を受け継ぎ、鼻が黒い子をクロちゃん、白い子をシロちゃんという名前にした。
2匹とも怯えていて、ソファーの下へ入ってしまったので、しばらく様子を見ることに。ごはんと水はソファーの下から見えるところに置いた。翌朝、トイレを見るとオシッコとうんちをしていた。
「何も教えていないのにトイレができて、びっくりしました。ごはんと水も減っていたので、安心しました」
数日間は人がいると出てこなかったが、ソファーに座って声をかけたり、猫じゃらしで遊んだりしていると、徐々にソファーの下から出てくるようになったという。笠松さんは早く仲良くなりたくてごはんを手に乗せて差し出したが、クロちゃんは怖かったのか、手をガブッと噛んできた。1週間後、猫たちがソファーの下へ行く回数が減り、抱っこもできるようになったという。
シロちゃんはやんちゃで人懐っこく、好奇心旺盛。クロちゃんは臆病で怖がり、寂しがりの甘えん坊だ。クロちゃんは寂しがりなためか、1年間ずっと、寝る時にシロちゃんのおっぱいを吸っていた。シロちゃんは男の子だったが、シロちゃんもそれを分かっていたのかずっと吸わせてあげていたそうだ。
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)