カラスに襲われていた子猫たちを保護 助けられた2匹の猫は、ある家族を再び「ワンチーム」にした

キャットウォークで追いかけっこが日課の、兵庫県に住む黒猫の小次郎くんとキジトラの千(ゆき)ちゃん。まだM家の家族になって1カ月ほどですが、次女Tさんのスマホには300枚以上の写真データが……。

猫たちが追いかけっこをしているキャットウォーク、実は日曜大工が趣味のお父さん自信作。まだ未完で、週末はせっせと続きを作っています。

キャットタワーはお母さんが選んだもの。「好きなものを買ってね」と自分の誕生日に贈られたご祝儀で購入しました。なるほど、お母さんの好きなものですね。

長女は大阪府で暮らしているものの、最近週1回で帰省しているのだとか。M家の家族といえば、お祖母ちゃんも忘れてはいけません。普段は施設で過ごしていますが、一時帰宅の時の喜び方が大違い。小次郎くんと千ちゃんを撫でながら「可愛い可愛い」と満面の笑み。

M家は小次郎くんと千ちゃんが迎えられ、家族が再び家に集うようになりました。

きっかけはコロナだったのだそう。Tさんが在宅勤務になり、ずっと家で過ごすことに。そこで当時は一人暮らしだったTさんは、実家に帰ることにしました。その時に、「猫ともう一度暮らしたい」とTさんは考えるようになったとのこと。

Tさんは保護猫カフェを何軒か回るのですが、寄ってきてくれる猫はゼロ。唯一、大阪市淀川区十三本町にある【ねこの木】で出会った猫たちは傍でくつろいでくれます。その中でもお膝にのって、そのまま寝てくれたのが小次郎くんと千ちゃんだったのです。

Tさんは運命を感じたそうです。それは、5年前に悲しい別れに由来しています。

元々Tさんは、黒猫とキジトラ2匹の猫と暮らしていました。黒猫のがんもちゃんはマンションのエントランスに段ボール箱に入れられて捨てられていた子猫。先天的に心臓疾患があり、1歳になったころ他界。

キジトラのちくわくんも捨て猫でした。母猫に捨てられたのか、生後2カ月に満たない月齢のころ、保護されました。この子も先天性の疾患を持っていて、いくら抜いても腹水がたまったそう。3歳になってすぐ虹の橋のたもとに旅立ちます。

この2匹の猫たちが、今度は性別を逆にして戻ってきたような感覚になったのです。

猫と暮らしたくてねこの木にやって来たのに、Tさんは本当に猫を飼う資格があるのか思い悩み始めました。がんもちゃんとちくわくんの飼い方が悪かったのじゃないか、もっとしてあげられることがあったのじゃないか。2匹とも先天性疾患ですから仕方ないのは分かっています。それでも再び後悔の念がわきあがってきました。

そんなTさんの背中を押してくれたのは、お母さんです。「あなたがいるから安心よ」と言い、一緒にねこの木まで行ってくれました。その時、小次郎くんと千ちゃんに会い、うちの子にしようと。

小次郎くんと千ちゃんも母猫に捨てられた子猫。M家のある街の路上で、生まれたばかりのころカラスに襲われているところを保護されました。母猫に捨てられた子なら、この子たちも体が弱い猫かも知れない。

ならば、徹底的に甘やかそうとM家の人たちは、猫部屋を設けます。そこは元々長女の部屋。クーラーがなかったのですが、小次郎くんと千ちゃんのために設置。24時間快適な空調で過ごしてもらいます。

他の部屋は危険な物を全部撤去するまで入れない。ですから、現在のM家のリビングは猫部屋です。気づけば家族全員が猫部屋に集まり、小次郎くんと千ちゃんと過ごします。

強く勇ましい子になってほしいと佐々木小次郎から名前をもらった小次郎くんは、千ちゃんを可愛がる優しい猫。千と書いて「ゆき」と読ませるのは、大きな数字だと縁起が良いから。あと、「ゆき」は佐々木小次郎の奥さんの名前なんですって。千ちゃんの方が強くて勇ましいみたい。

お父さんもお母さんも小次郎くんと千ちゃんを溺愛していますが、一番なついているのはTさん。2匹が競ってうにゃうにゃ言いながら、Tさんのお膝を狙います。

それはあたかも、「うちの子にしてくれて有難う」と言っているかのように。

(まいどなニュース特約・ふじかわ 陽子)

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