闘病生活乗り越えた友の思い、命あふれる「春」の情景に描く 幼なじみのコラボ絵本「はるさん こんにちは!」
幼なじみのコラボから生まれた一冊の絵本「はるさん こんにちは!」は、あらゆる生命が躍動感を取り戻す春を描いた物語です。目を覚まし、土の中から外に出て、ぽかぽか陽気を浴びてうとうとする動物たちが優しいタッチで描かれています。新型コロナウイル禍での2度目の春。密の注意しながら外で陽気を楽しみたいですね。
作者は兵庫県宍粟市の中畑るり子さん。絵をのぐちふみこさん(神戸市)が担当しました。2人は幼稚園から高校まで一緒に過ごした幼なじみ。中畑さんは3人の子どもに恵まれた20代半ば、病気に倒れました。命が危ぶまれる時期もありましたが、リハビリを続け自分にできることを模索。32歳の夏に「闘病生活をのりこえて 人生 ゆうき そして愛」という本を出版しました。のぐちさんは長く児童養護施設に勤め、現在は里親として5歳から18歳までの子どもたちと暮らしています。「ほんとうにかぞく」(明石書店)などの絵本を出版しています。
「はるさん こんにちは!」は、フキノトウやつくしんぼが芽吹く場面から始まります。クマ、カエル、チョウチョウが登場し、最後はヘビも。みんなで仲良く散歩に出かけるというお話。読後に温かいものが残り、「ちょっと公園でも行ってみようかな」と思わせます。
もともと外に出るのが好きだった中畑さんですが、1年間の入院から退院した後は外に出るのが嫌になりました。ある日、「お母さん、散歩行こ!」と子どもからせがまれ嫌々ながら外出すると、周囲から「元気になったんか」と声をかけられたことが、その後の行動力につながったそうです。残された機能である指でキーボードを打ち、この物語が出来上がりました。
のぐちさんが童話の絵を中畑さんから依頼されたのは、ずいぶん前でした。日々の生活に追われ手つかずのままでしたが、新型コロナウイルス禍で強いられた自粛生活の中、「前からの宿題をやらねば」と思い立ったそうです。さらに2020年は2人にとって同級生の幼なじみが亡くなるという悲しい出来事があった年でした。「同級生の死から、私の人生がいつか終わりが来る、与えられた生を活かさなければということをあらためて思いました。るりちゃんが懸命に書き上げた物語を絵本にしなければと励まされました」と話します。
昨年のクリスマス前に届いた絵本は、中畑さんにとって最高のプレゼントになりました。中畑さんは「偶然かもしれませんが、コロナ禍の時期に絵本になったことも意味があると考えています。これまで当たり前だったことがそうでなくなってしまいましたが、この本を読んで少しでもほっこりしてもらえれば」とあとがきに記しています。
1000円、問い合わせはのぐちさん(fmi24jp@yahoo.co.jp)
(まいどなニュース・竹内 章)