ご飯はふすま?飼育放棄され、やせ細っていた猫 家族の愛情で元気を取り戻し、モフモフの猫に
大阪府に住むメインクーンの桃太郎くんは、今でこそモフモフの猫。しかし保護された約5年前は、一般的なメインクーンの体重に満たない5キロほどのガリガリの猫でした。
それもそのはず、餌が酷いものだったのです。桃太郎くんが与えられたいた餌の主成分のほとんどがふすま、つまり小麦の糠でした。
こんな餌を与えられ、桃太郎くんは5歳ぐらいまで最初の家で他の猫3匹と暮らしていました。元の飼い主が飼育放棄をし、ようやく保護された時には長年栄養が足りていなかったため、4匹とも体調を崩していたそうです。
この猫たちは、大阪市淀川区十三本町にある保護猫カフェ【ねこの木】で新しい飼い主を待ちます。4匹のうち1匹・総二郎くんを引き取ったのが、大阪府に住むTさんでした。桃太郎くんもある家族に引き取られます。
桃太郎くんの兄弟分、総二郎くんはT家で可愛がられるのですが、すぐに異変が起きます。それは総二郎くんの貧血です。動物病院では、いくら食事をとっても栄養になっていないと診断されました。立っているのが不思議と言われるほどの貧血です。
約1年闘病生活を送り、総二郎くんは旅立ってしまいました。見送ったTさんと家族は、無力感に襲われます。嫌がる薬を飲ませて、怯えさせなければならなかったことを後悔せずにはいられませんでした。
せめて総二郎くんと同じような猫を増やさないようにしたいと考え、Tさんはねこの木でボランティアを始めます。
時同じくして、桃太郎くんがねこの木に戻されてきました。名目上は家族が猫アレルギーを発症して飼うことが出来なくなったとのことですが、桃太郎くんも体調が悪そう。ケージに顔をこすりつけたり、よだれを垂らしたり。
この状態で約1年、医療にかかることなく飼われていたことが、Tさんにとって大きなショックでした。このままでは桃太郎くんも、総二郎くんのもとへ行ってしまうかもしれない。
そう思うと、桃太郎くんが気になって仕方なくなりました。この子には看病する人間が必要。でも、たくさんの猫がいるねこの木では、満足なケアはできない。金銭的にも負担が大きくなるはず。それならば…。
Tさんは体調を崩している桃太郎くんを引き取る決意を固めました。家族にも許可を得て桃太郎くんを家に迎えます。
それからTさんの行動は早かった。総二郎くんがかかっていた動物病院につれて行き、どこが悪いのかを徹底的に検査。口内炎が酷く手術が必要と分かると、すぐお願いです。犬歯以外を全て抜歯するこの手術は、13万円かかりました。それでも、この手術で桃太郎くんの未来が拓けるのだと思うと高いと感じません。
手術のかいあり桃太郎くんは、ご飯を美味しく食べられるようになりました。今まで口内炎が酷く、口に餌が当たるだけで痛かったようです。手術後はカリカリもウェットフードも、もちろんちゅーるも全部大好き!
今も月に1回通院をしていますが、桃太郎くんはTさんに引き取られた2年前に比べると各段に健康になっています。体重も6キロに増えました。
10歳になった今も遊ぶことが大好きで、特に羽のついたバネのおもちゃはずっと遊んでいられるほど。Tさんの家族も大好き。集まっていたら、必ず間に入ってきちゃうんですって。
でも、寝る時は誰のところに行ったら良いのやら…。そこで桃太郎くんを迷わせないよう、別々だった人間の寝室を1つにまとめることに。今では桃太郎くんをはさんで、仲良く川の字になって寝ているのだとか。
Tさんは言います。
「私たちは桃太郎を任されたのだと思います。この子を精一杯可愛がることが、私たちの使命です」
桃太郎くんと一緒に保護された3匹の猫のうち2匹は、虹の橋のたもとに旅立っています。成長期に満足なご飯が食べられていたなら、「今」は変わっていたかも知れません。
桃太郎くんを膝に乗せTさんは、こうも言いました。
「私たちがこの子を引き取れて良かった。強くそう思います」
彼女の視線は、真っ直ぐ桃太郎くんを向いていました。
(まいどなニュース特約・ふじかわ 陽子)