「親の介護が」「子どもが不登校」「夫に怒られる」!? 学校のPTA役員決めは、ママ同士の駆け引きバトル
私の友人は保育園年長の娘をもつシングルマザーです。平日はフルタイムで働いています。
友人の職場には小学生と中学生のお子さんがいる先輩ママがいて、同じシングルマザーということもあり、普段から公私ともにいろいろと相談したり、仲良くしてもらっているそうです。
先日も友人の娘さんが来年小学校に入学するにあたって心配していることがあったので、先輩ママに話を聞いてみたそうです。そのときの内容を私に教えてくれました。
◇ ◇
子どもが入学するにあたり、もしPTAの役員になったらどうしようかと不安を感じていました。PTAの活動で平日に時間をとらないといけなくなったとき、職場に迷惑をかけてしまうかもしれないと思ったからです。
ただでさえ、子どもが体調を崩し、看病のため仕事を休まなくてはならないときも、申し訳ない気持ちでお休みをしているのに、それ以外にも休まなければならないとなると負担に感じずにはいられませんでした。
そこで、先輩ママに小学校での役員活動に参加しているのかを聞いてみたのです。
すると、なんと先輩ママはいままさに小・中学校両方で同時に役員活動を引き受け、これまで何度も引き受けてきたというのでとても驚きました。
さらに驚いたのは、役員決めを巡って毎年巻き起こる壮絶なママ友同士の駆け引きバトルのエピソードでした。
新年度を迎え、1学期の初めに行われる保護者会。昨年、今年はコロナ禍のため保護者会ではなく別の方法を採用する学校もあるかもしれませんが、多くの場合、ここが決戦の舞台になります。
和やかな雰囲気で談笑をしながらも、先生からの話に耳を傾ける保護者たち。先生からの話が一通り終わると、魔の時間『役員決め』が始まります。
それまではよく喋っていた人たちも態度を一変させ、だんまりを決め込み戦闘態勢に入るそうです。
静まり返る保護者たちに、このままでは埒が明かないので先生が「ダレソレさんはいかがですか?」と提案すると、おのおのが用意してきた「役員ができないさまざまな珍理由」が満を持して繰り出されるのだそうです。
「昔から体が弱くて体調を崩しがちなので…」
お大事に…としか返せませんが、なかにはちゃんと診断書を持参してくる人もいるそうです。
「親の介護があります」
この発言をしたママの家は、夫婦どちらの実家も遠方とのこと。しれっと嘘を言う様子に、そのことを知っているママ友は人間性を疑ったそうです。
「子どもを作る予定です」
不妊治療中やいろいろな事情があるのかと考えると、デリケートな問題なだけに深堀するわけにもいきませんし、ちょっとコメントに困ってしまいますね。
「転勤希望を出しています」
希望はあくまで希望であって、確定ではないですよね。
「子どもが不登校だから」
ママや家族の心労は察しますが、子どもが学校に行かないことと、役員になるかどうかは問題が違うような気がします。
「私には役員の器がないです」
みんな自信なんてないよ…。
「夫に怒られるので」
夫!?…なぜ怒るのかご主人に理由を聞いてみたいです。
…聞けば聞くほどに、突っ込みをいれていいなら、ピシッと突っ込みたくなる自分勝手な理由の数々。娘の小学校入学を前に軽い目まいを覚えました。
そもそも保護者会に参加しないで難を避けようとしている人や、泣き出す人、怒り出す人、人を煽ってやたらと勧める人など、バラエティに富んだ武器が垣間見れる-と、呆れ気味に先輩ママは話してくれました。
また、中学校の入学式では、式が終わると同時に体育館のドアが「バタン!」とすべて閉まり、その場で役員決めが始まり、決まらなければ退場できないという強制的な決戦が繰り広げられることもあったとのことで、いくつもの戦いを乗り越えた逞しい先輩ママのいろいろなエピソードを聞きながら、何度も悲鳴をあげてしまいました。
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最後まで役員が決まらなかった場合…最終手段の「くじ」で敗れ、本当は事情があるのにそれを言えず、頑張る人もいるといいます。話を聞いていた友人は「想像するだけで心が痛くなる」と話していました。
それぞれの家庭の事情で本当に引き受けられない場合もあるでしょうし、プライベートな話を根掘り葉掘りするわけにもいきません。
自身や家族が病気の方や、臨月で新生児を迎えるママであればできないのはしかたのないことです。未就園児がいたり、既に役員を経験済みの人であれば免除されるそうです。
そんななか、シングルマザーで主たる生計者であるにもかかわらず、まじめで正義感の強い友人の先輩ママは、役員決めの修羅場の空気に耐え兼ね、いつも自ら「やりまーす!」と手を挙げてしまうのだそうです。
なんだかんだとあっても、いつも楽しく活動に参加できているのは、頑張る先輩ママを信頼して支えてくれる仲間の存在や、先輩ママの活躍を誇らしく思ってくれる子どもたちの応援があるからだと聞き、友人は改めて先輩ママを同じ母として尊敬し、覚悟を決めたといいます。
仕事や家事に育児と、両立していくことはもちろん簡単ではないと思いますが、友人も先輩ママのように前向きに楽しみながら子どもが誇れるママになれると素敵だなと感じました。
(まいどなニュース特約・長岡 杏果)