川に落ちた子猫、ハシゴを借りて救出 鼻水を垂らし震えていたが、食いしん坊でビビりな猫に育つ
てんちゃん(8歳・オス)は、真冬の川に落ちておぼれかけていたところを、猫好きの夫婦、森山さんに助けられた。森山さんは先住猫で保護猫のちゃーこちゃんを飼っていたので、レスキューしたてんちゃんを飼うと自然に決めていた。
■川に落ちた子猫
2012年12月7日、群馬県に住む森山さんは、夫に用事があって勤務先を訪れた。叫び声に近い猫の鳴き声が聞こえたので、声を頼りにあたりを探すと、すぐ近くを流れる川幅3mほどの用水路に辿り着いた。
「まさか、と思いながらも川をのぞくと、水に浸かって鳴いている子猫を発見したんです。一刻を争う事態と判断して、会社から梯子を借りて、夫が水の中から救出しました」
子猫は逃げることも怖がることもなかったので、もしかすると飼われていたのかもしれない。現場近くに動物病院があり、置き去りにされる動物が多いとも夫から聞いていたので、「もしかするとこの子も」という思いが頭をよぎった。
子猫は鼻水を垂らし、ブルブルと震えていた。森山さんは、「よく生きていたなぁ」と安堵した。保護した翌日の朝はかなり冷え込んだので、もし発見が遅れていたら助からなかったかもしれない。
■先住猫ちゃーこちゃん、我関せず
当時、森山さんは、先住の保護猫「ちゃーこちゃん」を飼っていたので、猫を迎える環境は整っていた。救出した時、森山さんは何の迷いもなく家族に迎えるつもりでいたし、夫も子供のころよく動物を拾ってきたというエピソードを義母から聞いていたので、反対されることはないだろうと、ずぶ濡れの子猫をタオルに包んで連れ帰った。
保護した時の状況を娘に説明した時に、「天の神様が助けてくれた命だから、名前は『てん』にしよう」ということになった。森山さんは、素敵な発想だと嬉しく思ったそうだ。
先住猫のちゃーこちゃんは、突然現れたてんちゃんに全く動じなかった。
その後、夫の実家に一時的に預けていたトトちゃんが戻ってきて、森山家の猫は一気に3匹になった。トトちゃんはてんちゃんと気が合うようで、いつもべったりくっついていた。ちゃーこちゃんは、2匹と絡まず森山家のボス猫らしく悠々と暮らしていた。
■4匹の猫と暮らすことに
2018年1月、ちゃーこちゃんが亡くなった。森山家にとって最初の保護猫だったので、喪失感は大きかった。残された2匹以外はもう猫を増やさないことにしよう、と家族で話し合ったが、2018年8月、お世話になっている人から「子猫を保護したので引き取って欲しい」とお願いされた。
「1匹だけなら・・・とお返事したところ、『兄妹を引き離すのはかわいそうなのでトライアルだけでもいいから2匹で』と。結果的には2匹まとめて引き受けましたが、いま考えると確信犯だった気がします(笑)」
■猫は笑いや癒しをもたらしてくれる
てんちゃんは、とにかくビビリ。雷が鳴り始めると洗面所へ隠れたり、物音に驚いて飛び上がったりするのは日常茶飯事だ。猫なのに運動神経が鈍くて、ジャンプしたのに目標地点に届かないこともよくある。
「伸び上がってドアノブに手をかけてドアを開ける特技もあるのですが、夜中にやられるとかなり怖いです」
最近は、炊飯器のフタを開ける技も習得したらしく、炊き立てを食べられたことも数回・・・。
森山さんは、「猫舌とは単なる仮説なのでは」という気がしている。
「娘は一人っ子なので、猫の存在は大きい。ちゃーこを看取ったことで命の大切さや命に限りがあることを学べたので感謝しています。世話をする大変さより、猫が与えてくれる笑いや癒しの方が数倍も多い、本当に幸せです」と、森山さんは言う。
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)