寝たきりの高齢ウサギを介護…最期まで看取った保護ボランティア コロナ禍で増える「小動物の遺棄」を懸念

滋賀県内で犬猫だけではなく、ウサギやモルモットなど小動物の保護活動をしている、もよままさん。4月7日、寝たきりになって介護をしていた保護ウサギの最期を看取りました。亡くなったウサギは、甘えん坊のおーくん(推定12~13歳)。2016年11月に滋賀県動物保護管理センターで、もよままさんと出会いました。殺処分対象のウサギでした。

当時、もよままさんは、おーくんを含め3羽のウサギを保護。おーくんは既に5歳を超えていたとみられ、鼻水や目やになどがひどく、とてもガリガリにやせていました。同センターの職員から「この子だけかむよ」と言われたそうですが、連れて帰った日から一度もかまれることもなく、後追いするほど「人懐っこい子」だったといいます。

■殺処分免れたウサギ「おーくん」 保護動物に優しく接していた

殺処分を免れ、もよままさんのおうちに迎えられたおーくん。通院をしながら、もよままさんの懸命な看病のおかげでやせ細った身体もふっくらとしたウサギに。生牧草や生野菜が大好物でしたが、ご飯やおやつ以上に大好きだったのは命を助けてくれたもよままさん。すぐに寄ってきて、まるで「おかーちゃん、おかーちゃん」と言いながら甘える子どものようだったそうです。

また、おーくんはもよままさんに懐いていただけではなく、保護された猫やウサギ、モルモットなどの動物たちにもとても優しく接していたといいます。新たに保護された動物たちがやってくると、すぐに駆け寄って一緒におやつを食べたり、寄り添って寝たり…もよままさんは、おーくんと過ごした日々をこう振り返ります。

「保護した子たちは不思議とおーくんの優しさに触れて、心を開いてくれました。里親さんの元に行っても新しいおうちにすぐ溶け込めるような子たちに成長して。本当におーくんのおかげ。私の保護活動を支えてくれたんです」

■老化で寝たきりに…ボランティアが必死の介護を尽くした

もよままさんの保護活動の“パートナー”として活躍していたおーくん。しかし昨年7月、おーくんの身体に異変が起きました。ふらつきが出てきて、そこからすぐに寝たきりの状態になったのです。かかりつけの獣医師からは「老化」と診断され、「何も(治療は)できない」と宣告。他の病院で診てもらっても同じことを告げられたと言います。

目は白内障、耳も聴こえなくなり、寝たきりになったおーくん。もよままさんは、ご飯を食べさせることはもちろんのこと、身体をふいたりおむつを替えてあげたりとおーくんの介護に尽くしました。ただ、おーくんは寝たきりになっても、ご飯をしっかり食べ、もよままさんの“毛繕い”(手をなめる仕草)を毎日するなど懸命に生きようとしていたといいます。そして、年を越した2021年の今年4月、眠るように息を引き取ったそうです。

■犬猫よりも安価で購入できる小動物 「コロナ禍で遺棄が増えた」

これまで保護した動物は140匹(羽)以上を数えるという、もよままさん。たくさんの動物たちとの出会いと別れを繰り返しながら、保護活動を続けています。小動物の保護を始めたきっかけは、2012年2月に起きたモルモットなどの多頭飼育崩壊でした。小動物の保護活動をしていたボランティアさんが病に倒れて、多頭崩壊が起きてしまったとのこと。当時、主に犬の保護をしていたもよままさんでしたが、そのときレスキューに入り初めてモルモットなどの保護に関わったといいいます。

「私はお手伝い程度に保護に関わりました。そこで想像以上に遺棄される小動物の多さ、多頭崩壊を目の当たりにして、犬猫はボランティアさんが多いけれど、当時、周りを見渡したら小動物保護する人は誰もいないことに気付きました。また、おーくんと出会ったときに保健所や動物愛護センターでは犬猫以外の動物も多数収容され、殺処分になる現実を知ったんです。

犬猫と比べて小動物は、ペットショップなどで安価に売られ手に入れやすい。でも、温度や湿度など空調管理が必要だったり、アレルギーが出やすかったり…あるいは、診てくれる病院も少なかったりします。お世話が大変でお金もかかるだけでなく、つがいで飼えば、あっという間に増えてしまうことも。

最近は、コロナ禍でおうちでペットを飼う人が増えたせいなのか、小動物を遺棄する事例も多くなりました。ケージごと遺棄される場合もあれば、外にそのまま遺棄された小動物は遺体で見つかったり、大ケガをしていたり。あるいは、警察署に保護されても亡くなったり。元気であっても保健所や動物愛護センターに引き取られると数週間以内には殺処分となります。捨てるのは殺すも同然。犬猫も小動物も1つの命なんです」と語る、もよままさん。

■動物園の“ウサギの安楽死” 保護活動者などに相談する手段もあったはず…

さらに、岩手県の盛岡市動物公園「ZOOMO(ズーモ)」が3月にホームページで公表した、感染症(パスツレラ症)を患ったとみられるカイウサギ15匹の安楽死(※)について、こう訴えます。

「動物園のウサギが患ったのは、いわゆるスナッフルという病気。スナッフルは、主にクシャミや鼻水などの症状がみられ、伝染力も強いですが、ウサギの呼吸器疾患としては珍しくない細菌による感染症です。

おーくんや多頭飼育崩壊などからレスキューしたウサギたちも、保護当時スナッフルでした。適切な治療をすれば完治を見込める病気です。個人的には、完治の見込みがある安楽死は反対。動物園は『動物』で賃金を得ているわけですから、その動物を1匹残らず天寿を全うさせるのが当然ではないかと考えます。

万が一動物園で手に負えなかったのならば、保護活動者や動物園のファンの方々に頼っても(譲渡などしても)良かったのではないかと…住んでいる場所は違いますが、私に相談していただいたらと、とても悔やまれます。ウサギたちをお世話していた方々は本当につらかったはず。私なら耐えれません。終生飼育をしてもらいたい。遺棄や安楽死などの話を耳にすると、世の中の人がみんな命の重みをもっと考えてほしいといつも悔しく思います」

※ズーモは、「アニマルウェルフェア(動物福祉)」の運営指針を踏まえてカイウサギを「これ以上苦しませてはならない」などと判断し、昨年12月中旬に安楽死を決定したという。

■大阪の多頭飼育崩壊から妊婦のモルモットを保護 赤ちゃんモルモット里親募集中

今年3月、大阪で起きたモルモットの多頭飼育崩壊。35匹のモルモットが保護されました。その中で妊娠していたモルモットの女の子、このちゃんがもよままさんのおうちにやってきました。

このちゃんは1歳くらいの若いモルモット。保護当時、毛もまばらで栄養失調、片目は欠損、手に腫瘍(良性で処置済)などもあり、とても臭かったといいます。臨月に入った妊婦さんでしたが、3月16日に3匹の赤ちゃんを無事出産。このちゃん(現在のお名前は、テテちゃん)は3匹の子育てを経て、4月19日に里親さんの元へ譲渡されたそうです。

もよままさんは「保護活動者がえらいのではなく、私はたくさんの預かりさんや仲間、そして里親さんに支えられて今まで17年間保護活動をやってこれました。里親さんこそ、1番のボランティア。終生フォローもします。保護活動がゼロになるのが1番ではありますが、保護動物に目を向けていただけるのは本当にうれしいです」と話します。

また、3匹の赤ちゃんモルモットは、毎日ぷいぷいと鳴きながら“部屋んぽ”したり、野菜をたくさん食べたりと元気いっぱいに育っています。里親を募集中です(1匹は里親決定しています)。里親に関するお問い合わせは、もよままさんのアメブロ「滋賀でモルモット(他いろいろ)の保護主してます」のメールにてお問い合わせください。

(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)

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