目の前で子猫が!?轢いた車は走り去るも「うちの子に」 今では先住犬と後輩猫つなぐ“親善大使”に

移動のために車は現代社会でなくてはならない存在。生活をするのでも、旅をするのでも。その分、猫が交通事故に巻き込まれることも少なくありません。兵庫県に住む8歳のジョバンニくんも、交通事故で命を落としそうなところ間一髪で助かった猫です。

忘れもしない2013年6月16日。雨が降る中、Yさん夫妻は幹線道路を通り車で帰宅の途についていました。信号待ちをしていると、1匹の子猫がYさん夫妻の前の車の前にへたりこんだのだそう。その時、その車の運転手が助けるかとY夫妻は考えました。

しかし、世の中猫好きばかりではありません。信号が青に変わると、無情にも車は動き出しました。目の前に子猫がいるにも関わらず…。

思わず悲鳴を上げたYさん夫妻。血の海が広がっていると思いきや、子猫は道路の上で仰向けになっているではありませんか。どうやら車体の下に上手くもぐりこめたようです。

急いで妻が子猫保護のため、車から飛び出ます。子猫は抵抗をするのですが衰弱していたため、あっさり捕獲。

子猫を保護していたため、信号が青になっても車は出せません。しかし、誰一人としてクラクションを鳴らす人はいなかったそうです。ただごとでない様子は、車に乗る人々にも伝わっていたよう。

すぐ動物病院につれて行き、健康状態をチェック。体重は600gほど、ヘルペスを発症していました。目はくっついたままで、ろくに見えていないだろうという獣医の見立てです。猫エイズ等感染症のキャリアかは、2週間後に結果が出ると告げられました。

さあ、この子猫をどうしようかとYさん夫妻は悩みます。それは、すでに家にはミニチュアダックスのクリンちゃんとノエルちゃんがいたからです。もしかすると、犬にもうつる感染症を持っていたら…。それを考えると、すぐ家の子にとはいきません。ひとまず、当時まだ家にいた長男の部屋に子猫を隔離しました。

思わぬ子猫の登場に、長男は文句を言いつつも嬉しそう。帰宅が早くなり、部屋にこもって子猫に話しかけます。犬たちも、興味津々。部屋の前で、いつ出てくるのだろうとワクワク。この家族の様子に、Yさん夫妻の気持ちは「うちの子に…」と気持ちが傾き始めます。

さて、運命の2週間が訪れます。心配していた検査結果はすべて陰性。獣医からは、「ワンちゃんたちと、きっと仲良くなれますよ」とも言ってもらえました。

この言葉にYさん夫妻の気持ちは固まり、危機一髪助かった子猫は「ジョバンニ」と名づけられY家の子になります。「ジョバンニ」という名前は、妻が好きな小説『銀河鉄道の夜』からなんですって。

小説では、カンパネルラと旅をするジョバンニは孤独な少年。でも、Y家のジョバンニくんはまったく孤独ではありません。Yさん夫妻も長男も、クリンちゃんもノエルちゃんもいます。家族の間を旅し、様々な経験を積んでいきます。

ジョバンニくんがY家の子になり約1年後、家のガレージにすみ着いた同じ年ぐらいの猫、キャンディーちゃんが家族に加わった時は大喜び!とてもキャンディーちゃんを可愛がり、今では気難しいキャンディーちゃんが心を許す唯一の存在に。

でも、6歳年下の猫のはじめくんとはなちゃんが迎えられた時は、どう接して良いのか分からず右往左往。ついハイテンションになってしまい、階段から落ちて骨折をしてしまいました。

怪我が治った後は、気を取り直して「家族間の旅人・ジョバンニ」としての活動を再開。年下猫たちのため、気難しいキャンディーちゃんやミニチュアダックスのクリンちゃん・ノエルちゃんとの間を取り持つように。

気が付くと、家族の間を旅するジョバンニくんは外交官のように。家族の親善のため、せっせと働きます。

外交官ですから、ちゃんと親善報告もしているんですよ。家族以外には「にゃー」としか聞こえないかもしれませんが、Yさん夫妻にはジョバンニくんの活躍が分かるのだそう。

疲れた時はYさん夫妻に抱っこされ、うつらうつら。もしかすると、夢の中でも旅をしているかも?

今は安全な家の中、ジョバンニくんの旅はこれからも続きます。

(まいどなニュース特約・ふじかわ 陽子)

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