「GWに来ないで!」“猫の島”で有名な青島「猫を支援する会」がSNSで呼び掛け 新型コロナ感染を警戒
「連日、一便から青島猫に会いに来られる方が多いです。
青島は観光地ではなくご高齢者5人が住む小さい島です。
皆さんが猫に会いに来る事により島民や猫達も感染リスクに犯されます。
今のままではGWが心配です。
皆さんのモラルが問われてます。
拡散よろしくお願いします。」
「猫の島」として知られる青島(愛媛県大洲市)。県内外で新型コロナ感染が再拡大している中、島に住み着く猫たちのケアをしている「青島猫を支援する会」が、ゴールデンウィークに「島に来ないでほしい」とTwitterなどSNS上で強く呼び掛けています。
青島はメディアで“猫の楽園”として取り上げられて、2013年以降、国内外から猫好きの人たちがたくさん訪れるようになりました。しかし、昨年から続く新型コロナウイルス感染症の流行で、島に訪れる人が例年よりも減少。ただ、ゴールデンウィークの人出が普段の土日よりも増えると予測されるといいます。
同会の会長、瀧野起一さんは「青島まで1日定期船が2便出ていますが、ゴールデンウィーク初日29日は雨が降ったこともあり渡航者は2人、2日目は18人でした。北海道、新潟などからいらしたようです。ゴールデンウィークの半ば以降は晴れの日が続く予報で、さらに人出が増える可能性が高いです。青島はご高齢者ばかりが住む島で病院がありません。さらに、コロナはネコ科の動物にも移りやすいウイルスです。今でなくても猫には会えます。感染拡大が落ち着くまで、身勝手な渡航は控えていただきたいです」と訴えます。
■高齢者5人と約100匹の猫が共存する青島 新型コロナの感染者が出たら…
瀧野さんによると、青島は昔漁師町でたくさんの人が住んでいましたが、高齢化で人口が減少。現在、居住者は70代から80代の5人(3世帯)だけで、島には医療機関がないとのこと。急病人が出た際には、船を出して島外の病院に病人を連れ行くなどの手段を取らないといけないそうです。さらに、島には100匹近くの猫が住んでおり、万が一、1匹が新型コロナウイルスに感染したとしたら、あっという間に感染が広がる可能性もあるといいます。
島に行くには、対岸の長浜港(愛媛県大洲市)から1日2往復だけ出ている定員34名の定期船「あおしま」に乗らなければなりません。猫を見に訪れる客は、早朝にその定期船に乗り込む人が多く、島には次の便が出る夕方までの長時間滞在することになるとのこと。
また、コロナ感染の流行以前は、ゴールデンウィークやお盆の時期などのまとまった連休は船に乗りきれないほど連日たくさんの人でにぎわっていたそうです。
■先週末から徐々に来島者が増えてきた 島民「感染が不安」
一方、昨年のゴールデンウィークに関しては全国的に緊急事態宣言期間中だったこともあり、海外からの観光客は全く見られず、国内からの訪問客も減少。定期船の定員に達することはほとんどなかったといいます。
「昨年11月、島に強力な猫風邪(猫カリシウイルス)がまん延したときは10匹以上が亡くなりました。新型コロナは、人から人だけではなく、人から猫へも感染するといいますから、島にウイルスを持ち込んだら大変な事態となるのではないかと思います」と、警戒する瀧野さん。
「そもそも青島は観光地ではなく、人が動ける範囲は徒歩数分で移動できるほど狭いんです。私たちの会と連携を取りながら猫のお世話をしていただいている島民の紙本直子さんも、先週末から徐々に来島者が増えているといい、『(感染が)不安だ』ととても心配されていました。ゴールデンウィークなど連休に青島に来る方は例年県外の方が多く、さらに人が増えるのではないかと懸念しております。だからこそ、今回SNSなどを通じて島への渡航を控えていただきたくよう呼び掛け続けています」と話します。
■愛媛県内でも新型コロナ感染が再拡大 大洲市も「渡航自粛」を呼び掛ける
現在、愛媛県は松山市繁華街クラスターを端緒に県全体への感染が広がっており、緊急事態宣言に準じた対策を可能とする「まん延防止等重点措置」の対象となっています。「感染対策期」の期間を5月19日まで延長、県内全域で不要不急の外出自粛要請を出しており、より一層の感染回避行動の徹底を呼び掛けているところです。
大洲市も、定期船が出航する船乗り場に「不要不急の渡航を自粛していただきますようお願いいたします」などと張り紙を掲示。定期船は島民をはじめとする人の輸送だけでなく、生活用水や生活物資の輸送など重要な役割も担っており、新型コロナ感染が広がる今、猫を目的に訪れた観光客に向けて青島へ渡航を控えるようお願いしているそうです。
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■観光客の餌やりにより、一時は約200匹まで猫が増加…2018年から一斉TNRを実施
青島は、瀬戸内海に浮かぶ小さな島です。観光客が急増した2013年から観光客による餌やりなどで猫が繁殖。一時は約200匹に増えて島全体が多頭飼育崩壊の危機にあったといいます。そこで、2018年に、青島の猫のケアなどに取り組んでいた瀧野さんが「青島猫を支援する会」を発足させ、「公益財団法人どうぶつ基金」の出資と大洲市の協力などを得ながら一斉TNR(Trap/捕獲し、Neuter/不妊去勢手術を行い、Return/元の場所に戻す)を実施しました。年々少しずつ猫の数が減り、今は100匹ほどに収まっているそうです。
また、将来的に青島が無人化した場合、残される猫がいれば保護をしなければらないといいます。瀧野さんは「いつごろに無人化するか分からないですが…会のメンバーに動物愛護団体の方が多数いますから、手分けして引き取って、そこから譲渡先を探すことになるかと思います。おそらく、残されるのは、医療費がかかるおじいさん、おばあさん猫がほとんど。譲渡先を見つけるのも難しそうですが、猫たちのことを理解していただける方を見つけられたら」と話してくれました。
青島の猫たちは、島外から届けられるキャットフードや寄付などの支援のおかげで生活しているといいます。支援に関する問い合わせは、「青島猫を支援する会」のTwitterやFacebookのDMまで。
(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)