ハムにかまぼこ…子どもの友達が遊びにくると「冷蔵庫の食材がなくなる!?」児童虐待が発覚した衝撃の経緯
和歌山県在住のWさん(30代・会社員)には小学校低学年の子どもがいます。普段は外で遊ぶことが大好きなのですが、コロナ禍ということもあり、Wさんの子どもは友達と家でゲームをして遊ぶことが多くなっていました。そんなある日、仕事を終えいつものように夕飯の準備をしようと冷蔵庫を開けると、冷蔵庫の中の食材がなくなっていたのに気が付きました。
■「確かに買ってきたはず…」なのに
Wさんが仕事から家に帰ると、子どもは宿題をしていました。少し前まで友達と家でゲームをして遊んでいたようですが、時間も遅くなったため友達はすでに帰ったようでした。
Wさんが冷蔵庫を開けると、昨日スーパーで買ってきたハム・かまぼこ・きゅうり・ヨーグルト・牛乳などがなくなっていたのです。
Wさんは子どもに冷蔵庫の中のものを食べたか確認すると、友達とアイスは食べたけれどそれ以外は食べていないとのことでした。
「確かに買ってきたはず…」と、家事が一段落したあと、昨日の買い物のレシートを確認してみると…確かになくなった食材を購入していました。不思議に思ったWさんは、子どもに誰が遊びに来ていたのか聞きました。すると、これまで遊びに来たことのないAくんがいたということがわかりました。
■2日後…再び冷蔵庫の中の食材がなくなる
お腹が空いてみんなで食べたのかと思う一方、違和感を感じていたWさんは、子どもに「冷蔵庫の中のものを食べたときは教えてね」と伝えました。
そして冷蔵庫の中の食材がなくなった2日後、また同じようなことが起こったのです。
子どもに「誰と遊んでいたのか」を聞くと、この日はAくんだけが遊びに来ていました。
冷蔵庫の中のものを食べていたのかと聞くと、子どもは「食べてないよ」と答えるだけ。
詳しく話を聞くのですが、ゲームをしている部屋から台所の様子は見えないため、Wさんの子どもは冷蔵庫のものがなくなっていることには気がついていないようでした。
WさんはAくんが食べたのかと気になりながらも、Aくんのお母さんとは面識がなく、どう対応したらよいのかわからずにいました。
■悩んだ結果、小学校に相談
Wさんは悩んだ結果、小学校に相談することにしました。担任の先生からはAくんに話を聞いてみるとのことでした。翌日、担任の先生から電話がありました。
Aくんはすぐに冷蔵庫の中にある食材を持って帰ったことを認め、何度も「ごめんなさい」と泣きながら謝っていたそうです。その夜、Aくんは担任の先生と一緒にWさんの家に謝りにきました。その場にAくんの家族はいませんでした。その時先生から、家庭の事情で家族がこの場に来れないと伝えられたのです。
■ネグレクトという現実
Aくんはこれまでと変わらず元気に小学校に登校し、Wさんの家にも遊びに来ています。その後、冷蔵庫の中の食材がなくなることはありません。
AくんのおばあちゃんがWさんの家を訪れ、なぜ冷蔵庫の食材を持って帰ったのかを話しくれたのです。実はAくんの母親が食事を与えていなかったため、Aくんはお腹が空いて冷蔵庫の中のものを持ち出し、公園で食べてから家に帰っていたというのです。
これまでも小学校で給食をすごい勢いで食べていたり、健康診断で低体重が明らかになったりしたため、何度か家庭訪問を受けたり、児童相談所の方が来ていたとのことでした。
今回の件もあり、母親とは離れて暮らすことになったAくん。Wさんは自分が小学校に相談したことで、Aくんが母親と離れてくらさなければならなくなったのではないかと悩んだと話してくれました。しかし、Aくんにとっては誰にも相談もできず、苦しんでいたという現実もあります。
現在はAくんは体重も標準体重になり、おばあちゃんと生活をしています。そしてWさんの子どもとも仲良く遊んでいます。
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近年、児童虐待のニュースが後を経ちません。2000年11月に「児童虐待の防止等に関する法律」通称「児童虐待防止法」が施行されて以降、年々児童虐待の相談件数は増加しています。近年は虐待相談件数が急増しており、こうした背景から2019年3月に児童虐待防止対策が抜本的に強化されたといいます。
児童虐待は子ども自身がSOSを出すことができる場合もあれば、できない場合もあります。子どもが小さければ小さいほどSOSを発することは難しく、またその行為自体が虐待であるという認識ができない状況にあります。
Wさんは「児童への虐待は身近なところでも起きていて、虐待を疑うようなことがあれば相談することが大切だと感じた」と振り返っていました。
(まいどなニュース特約・長岡 杏果)