2年前に死んだ猫が導いてくれた出会い 譲渡会で心奪われた怯える子猫は、家族みんなを癒やしてくれる甘えん坊に
生まれて間もない子猫のつんちゃん(1歳・メス)は、兄妹と一緒に茨城県動物指導センターから引き出された。ミルクボランティアに育てられてすくすく成長し、里親を探した。埼玉県に住む山川さんは2年前に愛猫を亡くしたが、やはり猫のいない暮らしは考えられないと思い、譲渡会に参加した。最初に目に留まったのはハチワレの子猫だったが、同じケージには怯えて固まっているつんちゃんが入っていた。
■センターと連携して子猫を救う
2020年4月24日、茨城県動物指導センターから川越保護猫カフェねこかつが20匹の子猫を引き出した。春の嵐の日だった。
茨城県動物指導センターは数年前まで殺処分数ワースト1だった。特に、乳飲み子の子猫は手がかかるので即日処分されてしまう。ねこかつ代表の梅田さんやボランティアたちは、乳飲み子の子猫も救いたいと思いセンターに働きかけた。茨城県動物指導センターは子猫を収容する別棟を造り、何日か授乳して管理し、まとまった頭数になると引き出して飼育し、里親を探した。
20匹の中には6匹兄妹がいたが、ボランティアのちょとさんが4匹引き取り、ゴエモンのしっぽさんが2匹引き取った。ゴエモンのしっぽさんが育てた2匹のうち1匹がつんちゃんだった。
生後10日前後で、ちょとさんが引き取った子猫たちは体重200グラムを超えていた。ゴエモンのしっぽさんが引き取ったつんちゃんは194グラム、もう1匹は138グラムしかなかった。まだ首が座らず、頭フラフラしていたので、ゴエモンのしっぽさんは緊張したという。子猫たちはとにかく沢山ミルクを飲んで、沢山ごはんを食べて、たくさん遊んだ。ゴエモンのしっぽさんは「素敵な家族を探そうね」と約束した。
■愛猫を亡くして2年、譲渡会に行く
埼玉県に住む山川さんは、捨て猫だったポポちゃんを飼っていたが、2018年に亡くした。2年経ち、新たに猫を迎えるために譲渡会に参加したという。
「また猫を迎えたい気持ちと失う怖さの間で2年間揺れ動いていました。でも、猫の居ない2年間の生活はすごく寂しくてつまらなくて、気持ちも落ち込むことが増えたので、たまたま次の日近くで譲渡会があることを知って思い切って行ってみました」
8月23日、譲渡会に行くと、ポポちゃんに似たハチワレの子猫がいた。近づいてみると、ハチワレの子猫と同じケージにもう1匹子猫が入っていて、隅っこで怯えて固まっていた。
「ふと目があった時の感じや纏っている空気感にポポを思わせる安心感があって、心を奪われました。その子がつんでした」
ポポちゃんを保護したのも春の嵐の日たったが、つんちゃんも春の嵐の夜に保護されたこと、お迎えの日がポポちゃんの月命日だったことなど、いくつかポポちゃんとの共通点が後から分かり、もしかしたらポポちゃんが導いてくれたのかもしれないと山川さんは思っている。
■猫がいない生活なんて考えられない
9月5日、ボランティアのBさんが車で家に連れてきてくれた。山川さんは、つんちゃんが怯えるのではないかと心配したが、ボランティアのおかげですっかり人慣れしていたので、初日からスリスリして、グルグルと喉を鳴らした。
名前は、スピッツの「潮騒ちゃん」という曲の「偶然会ったよつんつんは~」という歌詞にちなんでいる。
つんちゃんは甘えん坊で、寂しがりや。毎晩寝る前に数分抱っこしないと寝てくれない。構ってあげられない時は視界に入る場所で静かに待っている。人の会話に参加してくることもあり、よくしゃべる。遊んでほしい時は自分でおもちゃを持ってくる。
2年ぶりに猫と暮らして、山川さんは、つんちゃんが居てくれるだけで心が温かくなるという。落ち込んだり、気力が湧かなくなったりすることも少なくなった。
「家族みんなつんに救われています。やっぱり猫がいない生活は考えられません。可愛いね、うちに来てくれて有難うと毎日伝えています」
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)