親が知らない間に子どもは知っている「性知識」…「これなに?」子どもがスマホで見ていたものは
最近あったお話。小学校3年生の男の子が、「え!ここから子どもが生まれるんだって!」とお母さんのところへ、スマホを手にしたまま駆け寄ってきました。何のことかと見てみると、出産シーンがかなり生々しく描かれている漫画(動画)でした。
もう、お母さんはビックリです。てっきり子どもはスマホで大好きなアニメを見ていると思い込んでいたわけですから。
しかし、このお母さんは「いまがチャンスかも」と思い、説明しました。ただ、お母さんが困ったのは、次の質問です。
「大事なところを見せたらいけないのに、思いっきり人に見せてるじゃん、やば!」
お母さんは困惑しました。
…こんな時、どう答えればいいのでしょうか?
医師専門家協力のもと、保護者向けに性教育サイト「命育」を運営している命育の宮原由紀さんに、聞いてみると、こんな答えが返ってきました。
「まずは、『大事なところ』だと知っていることに『その通り』『よく知っているね』と肯定してあげたいですね。そして、『大事なところ』をシンプルに分かりやすく伝えるために、はじめに『プライベートゾーン』を教えてあげると良いかと思います」
「プライベートゾーンは、水着で隠れる場所(胸、性器、お尻)と口。他の人に、見たり触らせたりしてはいけない体の大切な場所です。他の人のプライベートゾーンも大切にしなくてはいけません。また、病院でお医者さんに診てもらうときや、家族とお風呂にはいるときなど、誰ならよいのか、どんな場面ならよいのかを伝えます。ここまできて、『お母さんのお腹の中から赤ちゃんが出てくるのを助けるために、お医者さんや助産師さんなど出産に関わる人たちは、プライベートゾーンを見ても良いんだよ』と伝えてみてはいかがでしょうか」
■学校の性教育が変わろうとしている
これまで学校で教えていたのは「男女の体の違い」や「妊娠後の体の変化」といった、どちらかといえば保健体育といった内容が主流でした。
性教育は「生命」と深く関連します。命の誕生や、命の尊さと同時に、命を守ることも、これからはもっともっと子どもに教える機会を作らなくてはなりません。以下は、2021(令和3)年4月より全国の園や学校にて段階的に進められることになった「生命(いのち)の安全教育」の概要です。
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▽生命(いのち)の安全教育とは
発達の段階に応じた、「生命(いのち)を大切にする」「加害者にならない」「被害者にならない」「傍観者にならない」ための教育を実施します。
具体的には、生命の尊さを学び、性暴力の根底にある誤った認識や行動、また、性暴力が及ぼす影響などを正しく理解した上で、生命を大切にする考えや、自分や相手、一人一人を尊重する態度等を、発達段階に応じて身に付けることを目指すものです。
【引用】生命の安全教育について/文部科学省
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生命(いのち)の安全教育では、たとえば「水着で隠れる体の部位・プライベートゾーンを他人に見せないこと」や「カップル間で起こる暴力」「デートDVの危険性」さらには「SNSで人と出会うことのリスク」などを教えるとしています。
若い世代の望まない妊娠や性被害など社会問題である課題について、幼少期から年齢に応じて子ども達が学べるように、こうした授業が段階的に導入されることが決まりました。
■知らずに「知ってしまう」子どもの性知識
ネットで関係のない記事を見ていても、大人でもギョッとするような、猥褻なバナーや、行為自体のアニメーション広告が出てくることは日常茶飯事です。
子ども達がそれを見たら、思わずポチッとしてしまうこともあるでしょう。小学生にもなれば性に興味がわいてくるのは当然のことです。ましてや、刺激的な漫画がチラリと出てきたら、その先が見たくなるのもある意味当然といえば当然です。
さらに、こうしたアニメや行為自体の映像などの中には、たとえば男性や女性が無理矢理に相手に迫る、嫌がっている相手を暴力で従わせようとするような、好きな人と気持ちを確かめ合う行動というよりは、犯罪行為に近いものもあります。
まだまだ体も心も成長しきっていない、善悪の判断がわからない子どもの場合、知らずとこうした刺激のある映像を見てしまい、強い印象として残像が植え付けられてしまうことがないとは言えません。
そばに親がいれば見るのを止めて、相手が嫌がることをするのは好きな人にすることではないんだよ、と教えられますが、今の子ども達は無差別にこうした情報に、無意識に触れてしまう危険性があることを忘れてはいけません。
■早くから「性とネットリテラシー」を子どもに教えよう
私はネットが悪いとは思っていません。そもそもネットがない時代だって、この手の漫画や雑誌はありましたし、隠れて読んで、ベッドの下に親が雑誌を見つけて「こういう年齢になりましたか」と思うことはあったでしょう。
興味関心があるのはいいのですが、行動がエスカレートするとよくわからないまま、安易に誰かの言葉にのせられて自分の裸の写真を撮影して送ってしまったり、誘いにのって裸になってしまう。そうしたリスクにさらされているのがネットの世界でもあります。
性教育とネットリテラシーはふたつでひとつとして、子どもに教えるべき時代がきているのではないでしょうか。
オンラインゲームで繋がったり、SNSで知り合った相手がエスカレートして「裸の写真くれる?」「もしくれたらさ、ゲームをクリアーする方法教えてあげるよ」とか「会いたいな。会おうよ」と、言葉巧みに誘う、そういう人物がいるかもしれない、ということです。
「ネットトラブルに巻き込まれるのは中学生とかでしょ?」「女子高生になったら気をつけるようにしなくちゃ」と思っているかもしれませんが、遅すぎます。性別も関係ありません。
そもそも2~3歳の頃からタブレットで動画を観ている子ども達なんです。小学生にもなれば、親の目を盗んで、いや、隠しているつもりもなく、本当に知らずと、こうした相手と接点を持ったり、「裸にした写真をみんなに送っちゃおう」と言い出す子が、実際にこれまでも、小学生でもあったのです。
実はイジメというと無視や暴力というイメージがありますが、性にからむ問題も多くあります。
性にからむことは「まだ教えなくてもいいかな」「早いかな」と思うことが多いようですが、子どもが今や簡単に情報を得られる、知らずと情報を得てしまうことを考えると、早め早めに教えることが必要であると考えます。
性と暴力、命といじめ、誕生と死、正しい知識と情報を教えるのは、親の勤めではないでしょうか。
◆くま ゆうこ デジタルハラスメント対策専門家。株式会社マモル代表取締役社長。自身の強みであるWebマーケティングのノウハウを活かし、 いじめや組織のハラスメントを未然に防ぐシステム「マモレポ」を開発する傍ら、学校コンサルティング、いじめ・ハラスメントのセミナー登壇、執筆を行う。