熊本市の元町議殺害、犯人は被害者と話をするため入室、緊縛して脅した可能性も…小川氏が分析

 熊本市内の住宅で24日、紐(ひも)のようなもので両手足を縛られ死亡していた住人の元町議中村尊徳さん(74)の死因が窒息死だったことが25日、熊本県警の司法解剖で分かった。遺体の状況などから県警が殺人事件と断定したことを受け、元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は当サイトの取材に対し、犯行状況を分析した上で、犯人が被害者と何らかの話をするために入室した可能性を指摘した。

 県警によると、中村さんは60代の妻と2人暮らしで、23日午後9時ごろ妻と会話後、別々の部屋で就寝。24日午前6時15分ごろ、妻が寝室で遺体を発見し、親族の男性が110番した。夜中に大きな物音は聞こえず、中村さんに目立った外傷や室内を荒らした形跡はなかったという。また、現場から約5km離れた宇土市で、中村さんの軽トラックが鍵がついたまま、無施錠の状態で見つかった。

 妻との会話から約9時間の間に何が起きたのか。小川氏は「発見の状況から不可解な点が多い。殺人事件なので第三者が侵入しているのは明らかですが、外部から侵入したのか、被害者の中村さんが室内に招き入れたのか。また、普段、施錠はどうしているのか、室内に土足痕があったのか否かという点も。さらに、紐状の物で手足を縛ったということですが、この『紐状の物』とは中村さん宅にあったものなのか、外部から持ち込まれたかによっても、犯人像が変わっていく」と指摘した。

 仮に「招き入れた人物」がいたとすれば、顔見知りの犯行となるのか。小川氏は「中村さんは部屋着で亡くなっていたとのことですが、ご本人が部屋着で寝る人でなく、パジャマ等の寝間着に着替える人であれば、就寝前に親しい人物と会った可能性がある。司法解剖でだいたいの死亡推定時間は分かる。亡くなられた部屋が玄関から入ってすぐの場所なので、静かに入れば、奥さんにも気づかれずに入室することは可能かと思われる。部屋に入って来た者と何かを話をした可能性はある」と分析した。

 中村さんは口にガムテープのようなものが貼られていたことも分かっている。小川氏は「殺害するという強い意志はなかったように思われる。死因は窒息で、ガムテープで口をふさがれたことによるものと考えられるが、鼻までふさがれていなければすぐに亡くなるわけではない。犯人が中村さんを拘束した理由は殺害の目的ではなく、騒がれないように緊縛し、何かを聞き出そうとして、脅かしを目的としたことも考えられる」と推測した。

 一方、乗り捨てられた軽トラックから浮かぶ事実とは何か。小川氏は「時間的に考えて、全く関係のない第三者が乗っていたとは考えられないので、やはり、犯人がこの車に乗って現場から立ち去ったと思われる。中村さん宅に来るまでどのような交通手段を取ったかという疑問も出てくるが、わざわざ(中村さんの)車だけ移動する意味がないので、やはり逃走に使ったと思われる」と見解を示した。

 それでは、なぜ5km離れた場所で軽トラックを乗り捨てたのか。小川氏は「計画性があれば、自分の車両を事前にその場所に置いておく。計画性がない場合は、誰かにそのあたりまで迎えに来てもらうことが考えられる」と推理し、「いずれにしても遠方から殺害しに来たのではないと思います」と犯人に土地鑑があるとみた。

 今後の捜査について、小川氏は「中村さんと関係している者を捜査していくでしょう。亡くなる前に、中村さんは電話を使用していないか、メールや無料通信アプリ等を使っていれば、その履歴の捜査も行います。あとは、お金の貸し借りや事業等での金銭トラブルがあったかどうかも捜査していくと思います」と語った。

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