虐待で兄弟失い一人ぼっちになった野良猫 その“死”と向き合ったボランティア、猫たちのために固めた決意
名古屋市内の公園で暮らしていた3匹の兄弟猫。昨年8月、そのうち2匹が姿を消し、1匹だけ取り残されていました。地域の餌やりさんによると、2匹は何者かに棒で殴られるなど虐待され、1匹は亡くなり、もう一匹は行方不明に。とても人なれしていた兄弟猫たちで、複数の人からご飯をもらっていたといいます。
残された猫は、餌やりさんからもかわいがられていた「トラ」ちゃん。トラちゃん自身はひどい虐待を受けた様子はなかったものの、2匹がいなくなってからやせ細り人をとてもおびえるようになったそうです。でも、兄弟猫と一緒に過ごした公園から離れませんでした。
■保護されたトラちゃん「いつ死んでもおかしくない」
トラちゃんが1匹になった翌月の9月初め。呼吸も荒く具合悪そうにふらふらと歩くトラちゃんを見掛けた女性が放っておけず保護。動物病院に連れて行くと、獣医師からこう告げられました。
「おそらく10歳を超えており、いつ死んでもおかしくない状態です。野良猫だからどこまでするかですが、僕だったら入院させるけれど…入院となるとお金が掛かります。どうされますか?」
女性は迷わず、トラちゃんを入院させました。ただ、自宅で保護できる状況ではなかったため、入院中に預かり先を探したといいます。そこで手を挙げてくれたのが紫野(しの)さん。名古屋市内で猫の保護活動をしているボランティアでした。
1週間ほどで退院したトラちゃん。紫野さんの自宅に迎え入れられました。白血病を発症していたことなどから、全身の細い血管に血栓が生じたり、歯茎などいろいろなところから出血したりする重篤な合併症を引き起こしていたそうです。手のほどこしようのない状態だったというトラちゃんでしたが、紫野さんは懸命な看病と通院を続けたといいます。退院してから約2カ月弱後、紫野さんに看取られながらトラちゃんは静かに息を引き取りました。
■トラちゃんを看取ったボランティア、保護猫シェルター開設を決意
兄弟が虐待されてたった1匹残され、余命いくばくのない病気だったトラちゃん。紫野さんの愛情に包まれながら最期を遂げることができました。
そんなトラちゃんの“死”を目の当たりした紫野さん。ある強い決意を固めました。
「虐待されるなどお外の子は危険がいっぱい、手を差し伸べてもらえない子もいっぱい。トラちゃんのような境遇の子たちを増やしたくない、もっと救いたい…」
保護活動を広げながら行き場のない野良猫たちの居場所を作ろうと、新たに保護猫シェルター開設に乗り出したのです。
■不幸な野良猫を減らそうと保護活動をスタート
紫野さんは2年ほど前から「不幸な野良猫を増やしたくない」という思いで地域猫活動を始めました。活動に賛同・協力してくれる数人のメンバーを集め、保護団体「なごやか地域猫の会 ねんねこ」を発足。名古屋市動物愛護推進員も務めながら、自身の自宅マンションやメンバーそれぞれの自宅を拠点に保護猫活動をしているといいます。
現在、紫野さんの自宅マンションには、母猫や育児放棄された乳飲み子、虐待地域から保護した猫などさまざまな事情で行き場をなくくした数十匹の元野良猫たちがいます。マンションの一室のみの“自宅シェルター”は既に満員状態。
「私の自宅では保護した猫達は狭いスペースでケージ生活をしており、白血病キャリアの子もいるため、隔離しています。ずっと狭いケージの中ではストレスがたまって発病リスクも上がってしまうことも懸念されます。新たに保護シェルターを作って、保護される前は外を自由に走り回っていた子たちをケージから開放してあげたいんです」と紫野さん。
そこで「過酷な生活をしてきた元外猫たちがのびのびと安心しできる空間、訪れる人と交流し、安らかな眠りをを与えてあげられるそんなシェルターを作りたいと思っています」と話します。
■いつでも足を運べる開放型保護シェルターを目指す
紫野さんが計画している保護猫シェルター「ねんねこ保育園」は、いつでも気軽に足を運べる“毎日譲渡会”を銘打った開放型保護施設。そして、保育園のメインキャラクターには開設のきっかとなった「トラちゃん」を起用。猫描き兼イラストレーターのささきりんく(RinQoo@RinQoo3)さんが製作したそうです。
保護猫シェルター開設に向け、「CIRCLE OF LIFE(サークルオブライフ)」にてクラウドファンティングにもチャレンジ中。6月28日までに250万円を目標に支援を募るといいます。
紫野さんは「新しいシェルターには、私が住んでいる町内の地域猫たちを順次保護していきたいと思っています。支援金が集まり次第、遅くとも7月1日から開設したく、ゆくゆくはNPO法人の設立も考えています」などと、目標を語ってくれました。
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(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)