「58歳で子猫は飼えない」と一度はあきらめたが、里親決まらず引き取ることに 我が家で最後までお世話したい
くうちゃん(1歳半・オス)は、東京都に住む近江さんの姉の庭に母猫が子猫を連れて現れた。年齢的に飼うことはできなかったので、地域の猫ボランティアと協力して捕獲。母猫はTNR(T=TRAP「つかまえる」N=NEUTER「不妊手術する」R=RETURN「元の場所に戻す」)して、捕獲できた子猫たちは譲渡することになった。しかし、1匹は体調が落ち着かず、なかなか里親が決まらなかった。
■58歳で子猫は飼えない
2019年11月、東京都に住む近江さんの姉の家の庭に野良の母猫が5匹の子猫を連れて現れた。生後5カ月にもならないくらいだった。後に近江さんが引き取ったくう坊もそのうちの一匹だった。
地域の猫ボランティアさんと協力して捕獲器をしかけたが、野良猫なので用心深く、子猫2匹だけはどうしても捕まえられなかった。母猫をTNRしたらどこかへ連れて行ってしまったが、半年後に1匹は保護できたという。
捕獲できた3匹の子猫たちは里親を募集することになった。この時、近江さんは58歳。「子猫を迎えることも考えましたが、猫の寿命を考えたら最後までお世話できるか不安であきらめました。子供がいてもすでに独立していますし、全くあてにはできません」
■なかなか里親が決まらず
3匹の中で特にくう坊は体調が優れず、猫風邪がなかなかすっきり治らず、ワクチン接種後、顔がパンパンに腫れあがるアレルギー反応も起きた。譲渡会にも2度参加したが里親が決まらなかった。そして、ついに近江さんが引き取ることになった。
「そう決断するまでそれはそれは悩みました。共に58歳の夫婦2人暮らしですから、何かあった時はどうするか。終生飼育のホームを探したり、ペットと一緒に入れる老人ホームを探したりしました。まだまだ数は少ないですが、昨今のペットブームですからそのうち増えるといいなと思います。もちろん費用も準備しています」
■最後までお世話したい
くう坊は「空」と書いて「くう」という名前だ。保護した当初グレー色からグーちゃんと呼んでいたので、音が似ているくうちゃんにしたという。
くう坊が来たことで、夫婦間の会話も増え、笑顔も増えた。なんとしても我が家で最後までお世話したいという思いから、お互いの健康管理にも気をつけるようになったそうだ。
くう坊は甘えん坊で、近江さんにも夫にもべったり。1歳までは毎月のように病院通いをしていたが、今はすっかり元気になった。名前を呼ぶと必ず返事をするので、大好きなかくれんぼごっこしてもすぐに見つかってしまう。
昨年、近江さんの近所に住む一人暮らしのおばあさんが亡くなった。おばあさんは3匹の猫と暮らしていたが、亡くなった後、離れて暮らす親族が近江さん宅に挨拶に来て、「猫は外に放したから大丈夫です」と言った。近江さんはびっくりして地域の猫ボランティアに相談した。
現在、猫たちは地域猫として世話をしてもらっている。「不幸な猫を増やさないためにも、猫や犬を飼う前に、飼い主さんだけではなく、親族や身近な人としっかり話し合い考える必要があると思います」と、近江さんは言う。
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)