横浜に誕生した日本初の都市型循環式ロープウェイに乗ってみた 新たな交通システムになりえるか?
■世界中で活躍する「市民の足」ロープウェイ
4月22日、日本初の都市型ロープウェイが横浜の観光名所赤レンガ倉庫近くに誕生した。
ロープウェイと言えば山というのがお馴染みだが、実は海外ではロープウェイも都市の街中に多く存在している。有名なのはニューヨークのマンハッタンとクイーンズを行き来するルーズベルトアイランドトラムやロンドンのテムズ川にかかるエミレーツエアラインだが、ボリビアのラパスでは2019年時点で10路線が開通し生活交通の中核を担っているし、他にもリオデジャネイロ(アルゼンチン)、バルセロナ(スペイン)、ポートランド(アメリカ)など至る所で市民の足として活躍している。
日本では、東京都江東区(オリンピックの交通手段として)や福岡県福岡市(博多駅と博多港を結ぶライン)で検討がされてきたがいずれも計画は頓挫している。
そんな中、日本初の都市型ロープウェイ「YOKOHAMA AIR CABIN」が誕生した。
■世界的デザイナー監修のキャビン、乗り心地も快適!
JR桜木町から運河パーク駅のおよそ630mを五分で運行する。今回のロープウェイはあくまで観光資源という位置づけで、桜木町駅前の広場に設置されたトラム駅から赤レンガ倉庫そばの運河パーク駅までの空中散歩として活用されている。定員は8名(実際8名乗るとかなり狭い。)のキャビンが36台で運行中だ。値段は片道1000円、往復で1800円という観光地価格設定だ。(ちなみにニューヨークのトラムは2.5ドル)
完全バリアフリーで乗降口も広いので乗り降りも楽、車内はとても静かで、エアコン完備(こちらも日本初)と総じて快適、広い開口部から眺める高層ビルや横浜のベイサイドは何とも新鮮だ。乗車時間は5分と少々短い気はするが(もう少し堪能したかった)、観光で色々巡りたい人たちにはちょうどいいのかもしれない。キャビン自体もレインボーブリッジなどを手掛けた世界的照明デザイナー石井幹子氏が照明関係の監修し、横浜の夜景とともに彩りを添える。これはアフターコロナの横浜観光の新しい顔になる予感がする。
■都市型ロープウェイは市民の足になりえるか?
都市型ロープウェイは、建設コストが非常に安価(総事業費90億円)で、工期が短い(契約締結から完成まで3年!)。運転手不要で急こう配等の地形の障害対応が容易、かつ環境負荷が少ない。実際、この計画は都市臨海部再生マスタープランに基づき横浜市主導で行われたが、横浜市は1円も支出せず、全額運営側が負担している(役所はむしろ道路占有料や税金が入ってくる)。ちなみに運営しているのは西の遊園地の雄「ひらかたパーク」を運営する泉陽興行株式会社という会社だ。
現在、全国各地で様々な新しい交通システムの検討が進んでいる。大阪万博に向け検討されている「空飛ぶタクシー」もそのひとつだが、低コスト・短工期という武器を持つロープウェイもまた大きな可能性を秘めた都市型の新しい交通システムのひとつになるかもしれない。
◆村山 祥栄(むらやま・しょうえい)前京都市会議員、大正大学客員教授。1978年京都市生まれ。専修大学在学中は松沢成文氏の秘書を務める。リクルートを経て京都市議に。2010年、京都党を発足。2020年2月の京都市長選で出馬も惜敗。現在は大正大学客員教授。