南海とのライバル争いで開業!?たった1.7キロなのに、今も“超豪華仕様”の電車が走る「JR羽衣線」の秘密

関西には数多くの支線があります。短い支線であっても、誕生した背景には興味深いエピソードがあるものです。JR羽衣線(鳳~東羽衣)に乗車してきました。

■利便性が高い1.7キロのJR羽衣線

羽衣線は鳳(大阪府堺市)~東羽衣(大阪府高石市)駅間を結ぶ全長1.7キロの路線です。同線は天王寺と和歌山を結ぶ阪和線の支線にあたり、「羽衣線」と呼ばれるのが一般的です。鳳駅でJR阪和線、東羽衣駅で南海本線羽衣駅に接続します。

鳳駅から羽衣線に乗車しました。羽衣線のホームは阪和線とは別になり、5番ホームから発車します。阪和線の駅名板のカラーはオレンジ色ですが、羽衣線はJR西日本標準カラーの青色です。まるで「ここは阪和線とは別!」と自己主張しているようにも思えます。

東羽衣行きの電車が入線しました。羽衣線で活躍する電車は4両編成の転換クロスシート。全長1.7キロというミニ路線を考えれば超豪華仕様といえるでしょう。ちなみにJR発足直後は荷物電車を改造した1両編成の電車も活躍。その後、阪和線で大活躍した通勤電車103系を経て2018年に現在の電車になりました。

鳳駅を発車すると高架線に入り、わずか3分で終着の東羽衣駅に着きました。東羽衣駅は単線でありながら2つのホームを持つ立派な高架駅。JRというよりはどこか旧国鉄の雰囲気が残る駅です。乗客はそそくさと出口へ向かいました。

現在はペデストリアンデッキが設置され、以前と比較するとホームが見えづらくなっています。

南海本線の踏切を渡ると南海羽衣駅があります。東羽衣駅~南海羽衣駅間は徒歩数分にも関わらず、それぞれの駅名が異なる点も興味深いです。このように羽衣線はJR阪和線と南海本線の橋渡しとして利便性の高い路線です。なお南海羽衣駅付近は5月22日に上下線ともに高架化されました。

羽衣線は昼間時間帯15分間隔で運行されているため、比較的訪れやすい路線といえます。大阪駅から鳳駅までは大阪駅から関空・紀州路快速で約30分。大阪を訪れた合間に立ち寄ってみてはいかがでしょうか。 

■南海との仲がいいからできた路線…ではない?

「JRと南海が仲がいいから羽衣線ができたのか」と思う読者がいるかもしれません。しかし答えは違う…どころか、阪和線と南海がバチバチのライバル関係だったから、開業した路線なのです。

羽衣線は1929(昭和4)年に開業しました。当時、阪和線は国鉄ではなく阪和電気鉄道という一私鉄でした。南海と阪和電気鉄道は大阪~和歌山間の鉄道輸送をめぐってバチバチのライバル関係でした。

海側にあった南海は住宅開発と共に海水浴場の整備にも着手。南海が開発した浜寺公園は大阪近郊にあるリゾート地でした。

阪和電気鉄道は内陸側にあるため南海のようにリゾート開発はできませんでした。その代わり、浜寺公園へのアクセス路線として現在の羽衣線にあたる浜寺支線を開業させたのです。同線は和歌山へ到達する前に開業し、現在の東羽衣駅は「阪和浜寺」という駅名でした。しかも開業月は7月。狙いは明らかです。

南海にしてみればせっかく開発したリゾート地へのお客さんを羽衣線、阪和電気鉄道に横取りされるという危機感があったことでしょう。

阪和電気鉄道は1940(昭和15)年に南海に買収され、1944(昭和19)年に戦時買収により国有化され現在に至ります。現在の羽衣線は沿線住民の足として機能し、南海と阪和線もかつてほどのライバル関係ではありません。羽衣線はし烈な南海と阪和電気鉄道との競争を今に伝える貴重な路線だといえます。

(まいどなニュース特約・新田 浩之)

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