「生き残っている子がいる!」トタンの隙間に見つけた子猫は、今や7キロの大きさに!みんなを気遣う「長男」に成長
動物の方が寿命が短いのは分かっていても、いざ別れとなると胸が張り裂けそうになってしまうもの。福岡県に住むTさんも愛犬との別れで、ペットロスに陥りそうになりました。高齢で持病もあったため仕方がないと思おうとしましたが、そう簡単に割り切ることはできません。
このまま悲しみの海で溺れてしまうのではないか。そんな心配が頭をよぎります。そんな時、ふとInstagramである投稿が目につきました。愛犬が亡くなって2日後のことです。それは海岸近くに住む人の投稿で、海から道を挟んだ海辺の古くからある住宅地から子猫の鳴き声が聞こえるというもの。
実はTさん、動物愛護団体「糸島inunekoくらぶ」に所属しており広報を担当しています。子猫の保護は団体のためになるかもしれないと考え、この子を保護しに行くことにしました。家でじっとしていたら、悲しみがまた襲ってくるからでもあります。
投稿者と連絡を取り、夫と二人でご自宅まで車を走らせました。Instagramを投稿した方に猫の鳴き声がしていた場所をいくつか探してもらいます。その方が言うには、何匹かはもうカラスに食べられていたと…。
生き残っている子はいるのだろうか、心配をしながら鳴き声がかすかに聞こえた場所へ。そこには古いトタンが積んでありました。しばらく待っていると、そのトタンの中から子猫の声が聞こえてくるではありませんか。
「生きている子がいる!」
どうやら、トタンとトタンの隙間に隠れているよう。急いでトタンをはがすと、可愛らしい生後約1カ月の茶トラの子猫が顔を見せました。ずいぶん弱っているのか逃げることもなく、Tさんは素手で保護することができました。
それからは育児の日々です。弱っていた子猫は「シモン」と名付けられ、Tさん夫妻に可愛がられ育ちます。とはいえ、猫のお世話は大変で、ご飯を食べなかったり、食べてもすぐ吐いたり。その都度、気を揉み、時に病院へ連れていき、シモンくんのための時間が増えていきます。
気が付けば、愛犬の死を悲しんでいる暇がなくなっていました。
Tさんは当時を振り返って言います。
「亡くなったあの子が、私がペットロスにならないよう、シモンと出会わせてくれたのかもしれません。そういう気遣いをする犬だったんです」
シモンくんはそんなことを知ってか知らずか、すくすくと大きくなります。最初に動物病院に連れていった時、獣医師から「この子は大きくなるよ」と予言された通り、現在7キロ。かなり大型の猫になりました。
性格はとても穏やかで、3匹いるT家の猫の長男的役割を立派に勤めています。長男の役目とは、弟妹に色々と譲ること。おやつもおもちゃも、お先にどうぞ。ストレスがたまりそうな役割ですが、そうしないとシモンくんは落ち着かないみたい。
他にもシモンくんには変わったところがあります。それは、おもちゃで思い切り遊べないこと。子猫のころ、カラスに襲わた影響も大きいのでしょう。遊ぶ時は、後ろを振り返りながら、誰も襲ってこないことを何度も確認して遊びます。大事なおもちゃは、遊ばずにお腹の下へ。
このようにとても慎重な性格のシモンくんですが、思いっきり走ることは大好き! 家の階段を上がったり下がったり。飽きずに何度も繰り返します。このおかげで、シモンくんの太ももはまるでアスリートみたい!
見ていて飽きないシモンくんの姿に、犬派だったTさんはメロメロです。犬とはまた違った魅力があると気づきました。
シモンくんとの出会いは猫が好きになっただけでなく、愛護活動へも今まで以上に力が入るように。遂には福岡県最大のペットイベント「わんだふる」の理事になり、動物愛護とペットとの暮らしの啓蒙を行います。
こうやって世の中の猫や犬のために活動できるのも、シモンくんとの出会いがあったから。そして、シモンくんと出会うきっかけになった愛犬の死があったから…。いくつもの出来事が積み重なり、今を生み出しました。
そして、今の出来事は未来に何を起こしてくれるのでしょうか。これからが、とても楽しみです。
(まいどなニュース特約・ふじかわ 陽子)