屋根の上で歩く子猫を目撃…もしや猫が出産!? 近隣住民と保護ボランティアによる10日間の“救出劇”
5月下旬ごろ、東京都内に住む保護ボランティアの安藤武夫さんのところにひょんな相談が寄せられました。
「屋根の上に子猫がいる。どうも野良猫が出産したようだ」
それは、野良猫が屋根の上で出産し、子猫が下りられないまま過ごしているという話でした。安藤さんによると、相談者が屋根に子猫がいるのを気付いたのは2週間ほど前とのこと。マンションのベランダから向かい側にある家の屋根の上にヨタヨタと歩く子猫を目撃しました。「あんな千鳥足の子猫が屋根の上に自力で上がれるわけがない」と不思議に思ったという相談者。眺めていると、二重になっている屋根と屋根の間から母猫らしき猫と子猫たちが出てきたことから、野良猫が屋根で出産したのだと分かったそうです。
■屋根の子猫は3匹、生後1カ月半くらい「そろそろ乳離れ」…保護へ
そのときは「そのうち母猫が子猫をくわえて安全な場所を探すため、下りてくるだろう」としばらく様子を見ていたといいます。しかし、母猫たちは一向に屋根の上から下りてこず。母猫だけは上り下りが自由にできていたものの、屋根の上には子猫3匹が取り残されたまま…子猫たちの大きさなどから、既に生後1カ月半ほどは経っているようでした。
「本当だったら乳離れして離乳食に移行する時期。早く屋根の上から下ろさないと」
相談を受け、こう心配した安藤さんは子猫たちの保護に乗り出すことに。ただ、今回相談があった場所は安藤さんの住む東京からはかなりの遠方。そのため、現地にいる知人の保護ボランティアに捕獲をお願いしました。
■空き家の屋根に捕獲器を設置 まずは子猫2匹を保護
相談を受けてから数日後の5月24日、屋根の上の子猫たちのレスキューが始まりました。子猫たちのいる屋根の家は空き家。持ち主に許可を取り、知人の保護ボランティアが捕獲器を持ってはしごで屋根の上に上がることに。
とはいえ、この日は気温が高く屋根も焼けるような暑さで子猫たちは出てきませんでした。知人の保護ボランティアはひとまず屋根の上に捕獲器だけ設置し、子猫たちが入った際は連絡をしてもらおうと相談者に委ねたといいます。
翌日の25日早朝、子猫1匹を捕獲に成功。さらに、午後にももう1匹の子猫を捕獲することができました。捕獲したその日のうちに、相談者が車で往復2時間ほどかかる保護ボランティアの自宅に子猫2匹を届けたそうです。
■先に母猫が捕獲器に 残る1匹は…
残すは子猫1匹。順調に進むかと思っていた捕獲作業でしたが、思わぬ落とし穴がありました。子猫2匹を捕獲した2日後の27日、捕獲器に母猫が先に入ってしまったのです。一度捕獲器に入った母猫は警戒して二度目は入らなくなる可能性が高く、また残った子猫の行動などから保護できると判断してそのまま母猫を保護。しかし、その後、屋根の上でたった1匹取り残された子猫が姿を見せなくなってしまったといいます。
いなくなってしまった子猫。どこに行ってしまったのか…相談者たちは焦りを感じる中、月が変わる直前の月末31日のこと。事態は一変したのです。
相談者のマンションの外からかすかに子猫の鳴き声が聞こえてきました。急いで相談者は鳴き声のする方へ。たどり着いたのは、マンションに隣接する工場。子猫の鳴き声は、工場の敷地内にある山積みのブロックからでした。
積み重なる1つのブロックの穴をのぞくと、奥の方に子猫が。手を伸ばしても届かず、近所の人にも協力してもらいながらレスキューを開始。子猫が穴から出てくるようにおびき寄せるなどして救出したといいます。約2時間にわたる“救出劇”でしたが、助けた子猫は何と屋根の上からいなくなった子猫。屋根の上から下りて、50メートルほど先の工場にたどり着いていたことが分かったのです。
こうして、屋根の上にいた母猫と子猫たちは無事に救出。最後の子猫も母猫たちの元へ戻り、安心した様子だったとか。
■保護経験のない相談者の頑張りに感謝 これから里親募集へ
屋根の上などから子猫たちを救出できたことに胸をなで下ろしたという安藤さん。相談を受けてから救出までのおよそ10日間についてこう振り返ります。
「私自身は保護に行けなかったので、今回は信頼する現地のボランティアさんに依頼しました。相談者さんは保護の経験などはありませんでしたが、ボランティアさんからのアドバイスを受けながら本当に頑張っていただけたと感謝しています。
ただ、相談者さんのお宅では既に先住猫がおり、飼えるような状況ではないとのことなので、私が保護した子猫たちを預かり、これから里親探しをします。優しい里親さんを見つけてあげたいです」
■3月にはプランターで生まれた猫を保護していた
今、子猫3匹は安藤さんのいる東京にいます。里親探しのため、東京都内の譲渡会(13日)に参加する予定です。子猫たちは生後2カ月ほど。既にワクチン接種やウィルス検査なども受けているといいます。母猫はというと、現地の保護ボランティアが預かっており、子猫たちの里親さんが決まり次第、安藤さんの元へ来るそうです。
実は安藤さん。3月にも依頼を受けて、プランターで生まれた赤ちゃん猫たちを保護したばかりでした。今度は屋根の上で生まれた子猫たちの保護という二度目の“異例出産”に出くわし、「プランターズの次はルーフスターズかな…と思ったり(苦笑)屋根のひさしの下で出産というのも珍しいです。高い場所で人も来ないし、しかも雨もしのげて薄暗いところだったので、出産、子育てをするのはいいと思って母猫が選んだのでは」などと話してくれました。
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今回保護された子猫3匹の里親募集についてのお問い合わせは、安藤さんのTwitterアカウント(@TyK9PThQY2Rpqxj)のDMまで。
(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)