台風の翌日、道路脇の側道でうごめいていた黒い塊は猫だった!飼う気はなかったのに、いつの間にかかけがえのない家族に

■道端でうごめく黒い塊

ルナちゃん(2歳・メス)は、台風の影響で木の枝や葉っぱが散らかった道路脇の側道にいた。2018年、台風の翌日、神奈川県に住む小野さんの夫は、家に帰る途中、ルナちゃんを見つけた。最初は何か黒い塊のようなものが動くのが見えて、「これはゴミじゃない」と思い、咄嗟によけたという。少し歩いてから、「さっきよけた黒い塊はなんだろう」と気になって近寄ってみると、手のひらくらいの大きさの子猫だった。

小野さんは食事の準備をしながら家にいて、夫が帰ってくるのを待っていたのだが、いつも「これから帰るね」と連絡をくれる夫が、その日は「猫を見つけた」と連絡してきた。小野さんは「私も見たいから迎えに行く」と車で迎えに行った。

夫は猫を拾って、近くのコンビニで待っていた。手に抱えて持っていた子猫はとても弱弱しい感じで、夫は「暗かったからわからなかったけど、どうやら衰弱してるみたい」と言った。よく見ると顔はぐしゅぐしゅで両目は開いておらず、体は顔と同じくらいの大きさで、やっと歩いているようだった。

■出会ったのは運命?

以前、うさぎを拾ったときに警察が引き取ってくれたので、警察に電話してみたが、野良猫は引き取れないと言われた。

「私たちは動物を飼ったこともなく、どうしたらいいか分からずその場から動けなくなりました。とりあえずご飯をあげようと、コンビニで餌を買ってあげているとき、中年の女性が話しかけてきました」

「その猫どうしたの?」と聞かれて、「さっきそこで見つけたんです」という話をしたら、

「私も猫を飼っているけど、保護した子なの。その子と出会ったのは運命だと思う。うちには他に動物がいるから連れて帰れないけど、もし、嫌いじゃないなら連れてってあげて。すごくきれいなしっぽをしているわよ」と言われた。 

その言葉に背中を押された小野さんは、子猫を連れて帰ることに。ただ、その時はまだ自分たちで飼う決意をしておらず、里親を探すことにした。

「あの方との出会いがなければ、私たちはこの子を道路から離れている神社の軒下とかに置いていったかもしれません。帰宅後、家にあった段ボールに子猫を入れると、朝が来るまでぐっすり眠っていました」

翌日、たまたま休みだった夫が動物病院に連れて行くと、生後1カ月前後で、体重は400gの女の子だった。

■猫エイズキャリアだった

小野さんは、子猫の片脚がひざから下にかけてないことに気が付いた。あまりにも小さくてほとんど動かなかったので、出会った日は気付かなかったのだ。

「脚がないので、里親を見つけるのは難しいかもしれないと思いました。動物病院で診察してもらうと、猫風邪をひいていて、猫エイズのキャリアだということも分かりました」

保護猫のシェルターに何件か相談したが、すでにいっぱいだったり、猫エイズがある子は引き取りが難しいと言われたりした。知り合いにも協力してもらったが、なかなかいい返事をもらえなかった。

「当時は仕事や趣味の旅行で家にいないことも多く、最初は飼うのは無理だと思っていましたが、里親さんを探している間、あまりにも家に馴染んだので、いつの間にか里親探しをやめていて、気付けばそのまま家族の一員として暮らしていました」

■脚を切断したが、元気いっぱい

ルナちゃんは、2日くらいしたら嘘のように元気に動き始めて、1週間もすると机の脚と戦っていた。猫風邪は猫エイズの影響からか完治まで1カ月近くかかったが、目は開いた。ただ、もやがかかったような目で、片目は膜が癒着したままだった。

ルナちゃんは、そんなハンデをものともせず、元気に動き回っていた。脚は、獣医師は「鳥にやられたのだろう」と言っていたが、器用に動いていた。

警戒心が強く、やんちゃでやや攻撃的。小さいころに怖い思いをしたせいか、少しの物音で目が覚める。構ってほしい時は、くるぶしにパンチしたり腕に嚙みついてきたりする。レシートが大好きで、丸めて投げると咥えて持って来るのが大好き。紙を丸める音が聞こえただけで他の部屋からダッシュで駆けつけてくる。

2年後、脚の先を怪我してしまったが、猫エイズの影響からかなかなか治らず、いつも血や体液がにじむようになってしまった。結局、2020年の初夏に脚の付け根から切断する手術をした。

「最初は本当にかわいそうだと思っていましたが、身軽になって、以前よりも元気に走り回るようになりました。脚がない側の頭や耳を掻いてほしいとき、目の前の前に来て、ない脚で一生懸命かいかいする振りをしてアピールしてくるのが可愛いです」

小野さんは当時仕事が忙しく、夫と休みの合わない仕事をしていたため、家にいても一人の時間が多かった。しかし、ルナちゃんが来てからは寂しくなくなり、毎日いろんな表情を見せてくれるのでとても癒されているという。どうしても家を空けないといけない時は、夫の実家が近いので、ルナちゃんを預けるのだが、猫が嫌いと言っていた夫の祖母が、しょっちゅうルナの様子を聞いてくるようになった。小野さんは、夫の実家とさらに仲良くなれたような気がしているという。

「動物を飼ったことがなかったので、ペットのいる生活がこんなにも豊かだと思いませんでした。月並みですが、ルナのおかげで毎日が本当に幸せです」

(まいどなニュース特約・渡辺 陽)

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