スーパーの駐車場にたった1匹でいた雪のような子猫 コロナ禍で落ち込む飼い主と先住犬に“生きる力”をくれた
■スーパーの駐車場にいた子猫
ゆきちゃん(生後9カ月・メス)は、スーパーの駐車場で、1匹でいたところを保護された。母猫も兄弟猫も見当たらなかった。栃木県で獣医師をしている上田さんは、保護主がゆきちゃんを連れてきたので診察した。ゆきちゃんは猫風邪をひいていて、目と鼻がグズグズだった。これから里親を探すと保護主が言うので、上田さんは自分の家族に迎えたいと思い、引き取りたいと言った。
■犬を飼うつもりが猫に出会う
上田さんは、10年前、大学生になった時につぼみちゃんという雑種の保護犬を飼い始めた。散歩は喜んで行っていたが、年を重ねるにつれ寝ていることが多くなり、本当の老犬になる前にもう1匹犬を迎えたいと考えていた。しかし、なかなか縁がなく、なんとなくそのまま日々が過ぎていった。
2017年には東京の実家を離れ、保護犬のつぼみちゃんとオカメインコのほっぺちゃんと一緒に暮らすようになった。そして襲ったコロナ禍。
「休みのたびにつぼみとほっぺを連れて実家に帰っていたのですが、コロナで実家にも帰れなくなってストレスを感じていました。そんな時にゆきと出会って、もともとは犬を探していたのですが、ゆきを迎えることにしたんです」
■コロナ禍、子猫を迎えて活気が戻る
初めて動物病院でゆきちゃんを診察した時、上田さんは「真っ白で小さく弱々しい子猫だなあ」と思った。
しかし、ゆきちゃんは先住犬のつぼみちゃんにも興味津々、初日からカーテンによじ登って遊んでやんちゃっぷりを発揮した。つぼみちゃんの方がおっかなびっくりで恐る恐るにおいを嗅いでいた。
「ゆきは甘えん坊でお転婆です。親兄弟と離れた時期が早かったので、自分の尻尾を母親の乳房に見立てて吸う癖が抜けません。膝の上で甘えている時は、母猫のことを思い出すのか、ゴロゴロ言いながら尻尾を吸っています」
コロナ禍、上田さんは家族や友人知人と長期間会えなくなった。さらに追い打ちをかけるように自分の心臓の持病が発覚した。精神的に不安定になっていた時、ゆきちゃんを迎え、続いてどんぐりちゃんという猫にも出会った。家の中が賑やかになり、気持ちが明るくなったという。老犬のつぼみちゃんも、寝るのが仕事のような生活が一変。おもちゃで遊んだり、猫たちに「遊ぼう」と言ったりするようになったという。
「動物は人間より早く歳をとりますので、きちんと責任を持って、看取るまで元気に働こうという思いです。この子たちのために生きていると思うと、生きる活力が生まれます」
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)