「わたしは一時的な乳母」やきもちを焼き始めた猫はお世話できない 預かりボランティアの苦悩

コロナ禍でテレワークが一般的になり、家で過ごす時間が増えた方も多いのではないでしょうか。大阪府に住むKさんもその一人。家で過ごす時間が増えたため、家でできるボランティアを始めようと考えました。それは、保護猫の預かりボランティアです。

彼女は元々、チムニーちゃんという猫を飼いながら、大阪市淀川区十三本町にある保護猫カフェ「ねこの木」のお掃除ボランティアもしていました。その時に、バックヤードは常に保護猫が満員だということを知ります。誰かが預からないと、猫たちがストレスで体調を崩すかも知れない。そうなったら、せっかく保護されたのに意味がありません。

そう思い、店長の長谷川さんに申し出ました。「私が預かります」と。長谷川さんは大喜び。ケージから何から何まで用意してくれ、ヴィオラちゃんという6歳の女の子を預けてくれました。おっとりした猫なので、最初の預かりに良いだろうと。

3カ月ほど預かり、ヴィオラちゃんの飼い主さんが見つかると、今度は狛ちよくんを。この子はわずか10日ほどでしたが、すぐに引き取り手が見つかりました。

2匹連続で飼い主さんが見つかったことに、Kさんは自信を持ちます。私も役に立てていると。

そんなKさんのもとに長谷川さんから連絡が入りました。夜の8時ごろです。

「今日は子猫7匹のレスキューでした…。まだテレワークは続きますか?」

今度は子猫の預かり要請です。Kさんは迷うことなく引き受けます。授乳期は大変だといいますが、これこそ天職かもしれないと思ったのです。というのも、Kさんはショートスリーパー。2時間も眠れば十分なのです。

預かることになったのは「たらこちゃん」と仮の名前を付けられた黒猫。生後1週間ほどでした。仕事の合間にミルクをあげ、体調を崩したらすぐ長谷川さんに連絡。ねこの木と今まで以上に綿密に相談を行います。たらこちゃんは大切に大切にされ、すくすく大きくなりました。

月に数回ある出社日は、ねこの木に預けに行きます。そこで出会ったのが、子猫のしらこちゃんです。なんと、初対面のたらこちゃんが会った瞬間からお世話をし始めたのです。子猫が子猫を可愛がる、その愛らしいこと。しらこちゃんもKさんの預かりっ子になります。

ところが、家に戻ってしばらくすると、たらこちゃんがヤキモチをやくように…。今までKさんもチムニーちゃんもちやほやしてくれていたのに、しらこちゃんもかまうようになったからです。そこで、しらこちゃんを力いっぱい蹴る。

この時、Kさんは預かりボランティアの難しさを知りました。ずっとうちにいる子でないのに、依存させてはいけない。本当の飼い主さんが見つからなくなる。

そう考えたKさんは断腸の想いで、たらこちゃんをお店に戻すことにします。まだ授乳が必要なしらこちゃんを優先したのです。離乳食が始まったたらこちゃんは、他の人でも預かりができます。辛い決断でした。

長谷川さんは「いつでも譲渡契約書を書いてもいいよ」と言っていますが、Kさんはあくまでも預かりボランティア。一時的な猫の乳母です。彼女の任務は、本当の飼い主さんへ命を引き継ぐことです。

うちの子はチムニーちゃんだけ。ブレないよう、自分を奮い立たせます。ボランティアを続けたいから。

Kさんがボランティアをするのは、テレワークでありがちな孤立を避けるためでもあります。ボランティアをしていれば、ねこの木を通じて常連客や飼い主さんたちとつながっていられるのです。

コロナ禍で人と人とのつながりが薄くなる昨今。だからこそ、これからもKさんはボランティアを続けていきたいと考えています。保護猫と自分のために。

(まいどなニュース特約・ふじかわ 陽子)

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