飼うつもりはなかったが…不思議な縁を感じて拾った猫、天寿を全うするまで穏やかに暮らす
■不思議な縁を感じた猫
ドングリちゃん(年齢不詳・オス)は、野良猫のえさ場でえさを食べている時に保護された。
2010年4月3日、土曜日。大阪府に住む木村さんは、仕事に行っていた妻を駅まで迎えに行った帰り、近所の野良猫のたまり場(えさ場)で見かけない猫を見つけた。近所の飼い猫かもしれないと思ったが、それにしては身体はガリガリにやせ細っていた。身体を触っても嫌がらず、後をついて行っても逃げるそぶりもなかった。抱き上げると大人しく抱かれていたので、そのまま連れて帰ったという。
木村さんは、もともと猫を飼おうとは思っていなかった。
「駅までの通勤途中の家で飼われている猫と仲良くなり、たまに野良猫にえさをあげていたんです。漠然と猫っていいなと思っていましたが、飼う勇気はありませんでした。しかし、ドングリには不思議な縁を感じたんです」
■突然猫を飼うことに
ドングリちゃんに出会うまで、まったく猫を飼う気がなかったので、まったく心の準備もしておらず、「猫を飼うのに必要なものは何?」とあたふたするところから始まった。そのため、最初に迎えた時のドングリちゃんの印象はあまり記憶に残っていない。
野良猫にあげていたえさくらいしか家にはなく、ドングリちゃんも家の中をウロウロ探検して落ち着かないようだった。「猫砂を買ってきた方が良いのでは」と妻が言い出したので、とりあえず妻にコンビニに買いに行ってもらい、家にあったプラスチック製のトレイに猫砂を入れて部屋に置くと、ドングリちゃんは自分で猫砂を見つけてトイレをした。しばらくすると玄関に行って「外に出して」と鳴き始めた。その夜、木村さんは、ドングリちゃんの様子を見ながらこたつで朝まで寝た。
あまりにも「お家に帰りたい」と玄関で鳴いていたので、「そんなに鳴くんだったら(童謡にちなんで)名前をドングリにするぞ」と妻と話していたが、その時は決められず、数日後、動物病院に連れていった時に「名前を書いてください」と言われ、ドングリという名前になったという。
■病気もしたけど穏やかな毎日
動物病院で診察してもらうと去勢済みのオス猫で、どこかで飼われていたようだった。5歳~10歳、牙が折れていた。腎臓の値が少し悪いが、他は正常値。ただ、体調は芳しくなく、嘔吐が多く、食が細く、水を大量に飲んで、トイレにも頻繁に行った。何度か病院で相談すると、甲状腺機能亢進症だということが分かった。10歳以上の猫に多い病気なので、おじいちゃんだったことが判明。定期的に血液検査を受けながら、投薬量を調整して症状が落ち着いたという。
2011年に2匹目の「コロコロちゃん」を保護し、木村さんはコロコロちゃんの面倒で手一杯になったが、その間もドングリちゃんは穏やかに過ごしていた。
「コロコロを面倒みている間は、夜寝る時は必ず妻に添い寝していました。添い寝もそうですが、それ以外でも非常によくできた猫でした」
ドングリちゃんは、2013年4月頃から腎臓の状態が悪化して、点滴をしたり強制給餌でごはんを食べたりするようになり、12月には病院に入院した。13日、もう治療できることはないと言われて退院してきた夜に、木村さんが仕事から帰るのを待っていたかのように、息を引き取った。
木村さん夫妻には子供がいなかった。共働きの二人にとって猫はなくてはならない存在になったという。病気のため色々大変だったはずのドングリちゃんの思い出も、大切な宝物だ。
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)