虎好きでも躊躇する?美術展の“やりすぎ”虎グッズがすごい コロナ禍で中止から1年、飛び出したまさかの秘策

神々しい虎の絵が全面にプリントされた大胆不敵なデザインのTシャツやブランケット、同じく虎の絵があしらわれたキンキラキンに輝くマグカップ…。何やら様子のおかしい虎グッズが、デザインの過激なにぎやかさとは裏腹に、神戸新聞のオンラインストアでひっそりと販売されている。これは何?

グッズに使われている虎の絵は、日本画家・大橋翠石(1865~1945)の作品。翠石は生前、国内はもとより、パリ万博で金メダルを獲得するなど海外でも高く評価されながら、近年はその名を知る人も少なくなった“幻の画家”だ。生涯のほとんどを画壇とは無縁で過ごしたといい、虎の絵を極めた孤高の存在として今なお異彩を放つ。

2020年には、画業を通覧する大規模な回顧展が故郷の岐阜県と療養のために過ごした兵庫県で開催される予定だったが、新型コロナウイルスの影響で兵庫会場(4月18日~5月31日、兵庫県立美術館)は中止に。岐阜会場(7月23日~9月13日、岐阜県美術館)は開催できたものの、2会場で販売するはずだった図録とポストカードが大量に売れ残ってしまったという。

「幻の画家の展覧会を本当に幻で終わらせるわけにはいかない!(あと、できれば図録も売りたい!)」。不屈の精神で立ち上がった兵庫会場の主催者(つまり神戸新聞社)は、1年後の今年6月末から、オンライン上で翠石の足跡と主な作品を紹介する「幻の美術展」プロジェクトを始動。それに合わせて記念グッズを作り、専用サイトで予約販売を始めた。

社内のアート事業担当者らがアイデアを出し合ったグッズの内訳は、Tシャツ、マグカップ、ブランケット、キャンバスバッグ。それぞれ翠石の虎の絵を大々的にデザインしている。特にTシャツのインパクトは圧倒的で、中途半端なアニマル柄とは一線を画すど迫力の仕上がりに。ここで買い逃すと、今後手に入れるチャンスは二度と訪れないかもしれない。通気性が気になるところだが、担当者によると「リバーシブルメッシュで風通しは良い」とのこと。…信じるしかない。

大阪国際大学の村田隆志准教授(日本美術史、書道史)が監修した図録も全276ページと大変なボリューム。近代日本美術史からこぼれ落ちてしまった翠石の卓越した描写力を、実際の作品や専門家の解説と共に心ゆくまで堪能できる。

図録3600円、Tシャツ5000円、マグカップ3000円など(いずれも税込み)。

(まいどなニュース・黒川 裕生)

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