嵐の翌日、すがるような目をして近寄ってきた子猫 今では母と娘の仲を取り持つ存在に

■すがるような目をして近寄ってきた子猫

タイガくん(2才・オス)は、ある日突然、山口県に住む有馬さんのところに現れた。2019年6月29日、前日の嵐が嘘のような快晴の日、有馬さんが自宅に持ち帰った仕事をしていると、悲しげな猫の声が風に乗って窓の向こうから聞こえてきた。

「外に出てみると、道路をたどたどしい足取りで子猫が鳴きながらやってくるではありませんか。すがるような目をしてこちらに近寄ってきたんです」

キャラメル色の縞柄の子猫は目やにがこびりつき、薄汚れ、くたびれた様子だった。よちよちと玄関スロープを登り切るとホッとしたのか、その場に座り込んで寝てしまった。有馬さんはとりあえず麻かごにタオルを敷いて、そこに寝かしつけました。必死にすがってきた小さな命を見捨てることはできなかったが、外出する用事があって、どうすることもできなかった。数時間後、戻ってみると子猫はかごの中で小さく丸まって寝ていた。

「近所の動物病院で診察してもらうと、生後5週間、体重500グラムだということでした。診察を終え、子猫が助かりそうだと分かった時、安堵しつつも、さてどうしようかなと思ったのを覚えています」

■性格はおっとりしたのんびり屋

タイガくんが出会った時から人懐っこかったので、有馬さんは「野良猫ではなく、誰かが飼っていたみたい。捨て猫なのかな」と思った。可愛らしいおっとりした子猫で、トイレを用意すると、待っていたかのようにオシッコをした。有馬さんやお母さんの膝の上に乗って、寝るのが日課になった。

性格はおっとりしたのんびり屋。有馬さんのお母さんと一緒に散歩するのが大好きで、ご近所さんから「可愛いねえ」と言われて撫でてもらい、まんざらでもないような顔をしている。高い所と暗闇が苦手で、昼間は床置きのベッドにごろん、夜は有馬さんやお母さんの寝床にやってくる。

■猫を迎えて母と穏やかに暮らせるように

子育ての経験がない有馬さんにとって、猫育てはある意味子育てのようなものだった。

「タイガがやってきたのは家を建て替えて半年経った頃で、猫を迎えたら新築の家はどんなことになるだろうかと、かなり焦りました。猫を飼ったことがなかったので、とにかく猫のことを知ろうと本や雑誌を読んだり、セミナーに参加したり、海外の猫の行動専門家や獣医師の動画を見たりしました」

少し慣れて余裕が出ると、今度は万が一脱走した時のことが心配になり、犬と猫のSNS「ドコノコ」に登録して、投稿を通じた友達も増え、交流の輪が広がった。

「父が亡くなり、久しぶりに同居し始めた母とは、考え方やライフスタイルの違いから衝突することが多かったのですが、猫を迎えてから、猫がかすがいとなって穏やかな時間が流れるようになりました。タイガと母が並んで庭を眺める姿はまるで、おばあちゃんと孫のようです」

(まいどなニュース特約・渡辺 陽)

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