「2年もあればマジで人生なんていくらでも変わるし、変えられる」 銀行マンからひじき漁師に転職した男性が話題
「2年もあればマジで人生なんていくらでも変わるし、変えられる。」
銀行マンからひじき漁師に転職した男性がSNS上で大きな注目を集めている。
「これが、こうなるって10年前の自分に言っても信じないだろうな...。」
とビフォーアフターの写真を見比べ、2年の間に起こった自身の変化をふり返るのは榮大吾さん(@sakaeruman)。
東京の喧騒を抜け出し、現在は山口県周防大島の自然の中で地域活性を目標に、自分のやりたい仕事とプライベートを両立しているという榮さん。
その転身にSNSユーザー達からは
「これはサラリーマンにとってはインパクトありすぎるビフォーアフター
羨ましいです」
「ひじき漁師をされている方が凄くいい笑顔ですね!
なんか羨ましいです^_^」
「昔の姿が同業さんなので、気持ち分かりすぎます(ノ_<)
私も今は辞めましたが、新しい道を模索中でして、さかえるさんの生き方が励みになります!」
など数々の羨望のコメントが寄せられている。
榮さんにお話をうかがってみた。
中将タカノリ(以下「中将」):大学卒業後、銀行にお勤めになり、順調な生活を営んでおられたと聞きます。ひじき漁師になられたいきさつは?
榮:退職を具体的に考え始めたのは28歳の時でした。順調に進めば30代で年収1000万円を超えることは予想できたので、「この先安泰だな」と思い込んでいたのですが、家の購入を検討する中で長期資金収支表を作成して考え方が大きく変わりました。
僕が理想とするそれなりの大きさの庭付き一戸建てはどう考えても無理。都心では自分が想像していたよりもだいぶ小さな家しか建てられない事実がわかったのです。自分としてはそれなりに努力して前職についたという思いもあり、サラリーマンとしてはそこそこ豊かだと勘違いしていたのですが、そこで理想と現実のギャップを思い知らされました。
たとえ大企業に所属していても、大多数は50歳前後で出向か転籍になります。それを思うと、さまざまな制約の中で耐え続ける生活は果たして幸せなのだろうか、「豊かな人生」「幸せ」とは何だろうかと考え直すようになりました。
また、銀行の仕事はもちろん社会をよくする一端を担うものとはいえ、もっと自分自身が機会を変える現場に出ていかないといけないなと思ったことも事実です。本当に代わりがきかないところに行かないとダメだなと思うようにもなりました。
「地方で現場の実践者として生きていきたい」そんな思いがつのり、地方移住の相談窓口などを訪れるようになりました。周防大島町を知ったのはその流れで参加した地方移住セミナーがきっかけでした。有給を使って、島での生活を体感できる「お試し暮らし」にチャレンジし、地元の方や新しい価値観で生きる移住者たちの姿に触れ、ここで暮らそうと決めました。
中将:転職を決めた当時、周囲の反応は?
榮:「世の中甘くねえぞ」「バカじゃないの?」と言われるとばかり思ってました。でも退職前にそれまでお世話になった方々に1人1人挨拶しに行くと、みんな真剣に僕の話を聞いて応援してくれました。改めて良い職場に恵まれたなと感動しました。
中でも僕を新卒採用してくれた元人事の方は社内人脈をフル活用して色んな人に「ぼくが採用したコイツが辞めるんですが、チャレンジするんです応援してやって」とPRしてくれました。その方が現・松江市長の上定昭仁さんです。今思い出しても目頭が熱くなります
中将:現在いくつかのお仕事を掛け持ちしておられるとのことですが、具体的にどんなことをされているのでしょうか?
榮:ひじき漁師をしながら町役場からの委託で「集落支援員」として週4日勤務しています。ほかにも講演やメディアでのライティング、古民家DIYなど集落支援員として武器にできるもの、シナジーあるものをピックアップして取り組んでいます。
周防大島は、人口規模1万人以上の自治体では高齢化率全国一位です。働く人の割合も医療、福祉が30%と圧倒的に多い。そんな「日本全体の30年後を行く先進地」の未来をどうデザインすれば良いか頭を悩ませながら、現場で実践者として様々な仕事の可能性を探しています。
統計データを分析し、どういった事業を展開することが良いのか、どのように動くのが合理的なのか判断するなど銀行員時代に培ったスキルが活かせていると思います。
中将:田舎暮らしのメリット、デメリットをお聞かせください。
榮:「家系ラーメンが食えない」ということにはけっこう大真面目に困りましたが、今は冷凍でお店そのままの味を味わえる商品が豊富にあるので解決しました。
田舎というと「虫が出る」「近所付き合いが面倒」「不便」などさまざまなデメリットが浮かぶと思いますが、それらは別の視点からは「自然が豊か」「人情に厚い」「住居の固定費が安い」というメリットになります。これまでお話したように田舎にいてもインターネットがあれば色んな仕事ができますし、買い物もできます。
その他の不便についても「サービスがなきゃ自分でやればいい」「ないものはつくればいい」と自然に思えるようになりました。
中将:SNS上では榮さんの転身にあこがれる声が多く寄せられています。
榮:SNSでバズることも有難いですが、僕が今一番心と時間を割いているのは、これまでお世話になってきた人やひじきを買ってくださった人に向けて1人1人に書いているお手紙だったりします。SNSという道具が発達したって1対1のコミュニケーションは変わらないと思うんです。これからも「認知してもらうため」ではなくマイペースに発信していければと思います。
◇ ◇
榮さんの新生活には我々がこれからの日本社会を生きる上での数々の学びがあると感じた。
榮さんは現在、自身が収穫から商品化、ECサイト、発送まで手がける国内最高級ひじき「沖家室ひじき(おきかむろひじき)」の販売促進に大忙し。沖家室ひじきは一般的なひじきの5倍の鉄分を含み、サラダでも食べられるほどの品質だという。興味のある方はぜひオンラインショップからお取り寄せをどうぞ。
(まいどなニュース特約・中将 タカノリ)