誕生日の朝、毛玉が転がるように駆け寄ってきたフワフワの子猫、高いところが大好きな登りたガールに
■猫神さまからの贈りもの
ショコラちゃん(1歳・メス)は、2020年6月21日早朝から甲高い声で鳴き叫んでいた。山口県に住む有馬さんは、割れんばかりの鳴き声を聞いて心配になり、お母さんに「子猫かもしれない」と話した。お母さんは声のする方に歩いて行き、角を曲がると、毛玉が転がるように子猫が駆け寄ってきたので、抱き上げて保護。有馬さんが追いついた時には、ふわふわの子猫がお母さんの手の中にいたという。片手に乗るほど小さな子猫は、生後約2週間、体重270gだった。
「ご近所に声をかけてみましたが、飼ってくれそうな人はいません。動物病院に連れて行くと、診察を終えた先生が預かりましょうかと言ってくださいましたが、その日はくしくも私の誕生日、猫神さまからの贈りものとて、我が家に迎えることにしました」
出会った時から人懐っこかったので、有馬さんは「捨て猫なのかな」と思った。タイガくんという猫を保護して飼っていたのだが、ひとりっ子生活を満喫していたタイガくんが、果たして受け入れてくれるかどうか心配した。
有馬さんの心配をよそに、タイガくんは一度もシャーもパンチもすることなく、幼い新参者を受け入れてくれた。ショコラちゃんはタイガくんのすることをまねしながら、ごはんの食べ方、爪とぎの場所など、有馬家のルールを身につけていったという。
■小さな身体だが大きな声で鳴く
ショコラちゃんは、小さな体に似合わず、大きな声でことあるごとに鳴いていた。
「哺乳瓶の吸い口をすぐ噛み切ってしまうのでガラスのスポイトでミルクをあげると、すごい勢いで飲み、口の周りが仙人みたいに真っ白になったんです(笑)」
ショコラちゃんは超がつくほどの甘えん坊。有馬さんが帰宅すると、玄関ドアまで猛ダッシュで出迎えてくれる。名前を呼ぶと、サイレントニャーや小声で“ミャッ”と応えるという。タイガくんと違い、高いところが大好きな「登りたガール」で、目下のお気に入りはレンジフード。有馬さんが料理をしていると興味深げに見降ろしている。
ショコラちゃんは生後4か月足らずで発情したおませさんだった。立て続けに3回も発情し、そのたびに持ち前の大きな声で鳴き通すので、有馬さんは「体を壊すのでは」と心配した。成長も遅く、何とか避妊手術ができるくらいの体力がついたので事前の血液検査を受けたところ、血液凝固異常が見つかってまさかの延期。2週間の投薬治療を経て、手術が成功した時には本当に安堵したという。
■猫との出会いを通じて夢がふくらむ
6月はタイガくんとショコラちゃんのウチノコ記念月。近所には野良を含めて猫が多く、目に留まることが多くなった。有馬さんは、地域猫や保護猫について知るにつれ、自分にも何かできないかと思う一方、現状では活動に参加することも、これ以上の猫を迎え入れることも難しい。そんな中、日々撮りためた写真をアルバムとしてまとめるうちに、ものがたりを添えた写真絵本にすることを思いついた。友人や知人がアルバムを気に入って買ってくれたのがきっかけだった。
「写真絵本を通じて、猫の可愛らしさだけでなく、保護猫への理解を深めてもらえれば。地域でTNR活動をしている団体をサポートする一助となればと願い、構想を練っています」
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)