「V8」「直6」なんて言われて、何のことか説明できますか? いまさら聞けないエンジンの形式のお話

 クルマのカタログを見たり、またクルマ好きと話したりしていると、何ccっていうエンジンの大きさ以外に、よく「このエンジンは何気筒」とか「これはV6だから」なんていう言葉が出てきますよね。あれは一体何なのでしょうか。いまさら聞けないエンジンの形式のお話です。

■最初に「気筒数」って?

 まず、エンジンの気筒数についてです。ご存知のとおり、エンジンというのはガソリンと空気を混ぜて、燃やして、その力でピストンを押し下げて動いています。ピストンというのは、注射器のようなものを思い浮かべてください。ガラスやプラスチックの筒の中に、中の液体を押し出す棒が入ってますよね。あの棒の部分をピストン、まわりの筒をシリンダーと呼びます。シリンダーの中でガソリンが燃焼(爆発)して、ピストンを押すのです。その往復運動を、クランクと呼ばれる部分で自転車のように回転運動に換える。これがエンジンの基本的な構造です。

(こういう構造のエンジンをレシプロエンジンといいます。他にもロータリーエンジンとか、まったく違う構造のジェットエンジンとかもありますが、いまそれを使ってるクルマはほぼ作られていないので今回それらは考えないことにします)

 この「ピストンが一押しするときに押し出す空気の量」、つまり「シリンダーの断面積、掛ける、ピストンの動く距離」を「排気量」といいます。

 シリンダーのことを、エンジンでは「気筒」といいます。クルマのエンジンの場合、たいていはこの気筒が二つ以上あります。そうです、気筒がいくつあるか、それが「気筒数」なんです。とてもシンプルですね。

 そして「1気筒当たりの排気量、掛ける、気筒数」が、そのクルマの排気量。1500ccとか2000ccとかになるんですね。

 クルマのエンジンの場合、1気筒当たりの排気量はだいたい400ccから600ccくらいが効率がいい、といわれてきました。いまは技術が進んで必ずしも当てはまらないことも多いみたいですけど、概ねそんな感じです。なのでたとえば2000ccで2気筒とか660ccで6気筒とか、クルマ用ではそういう極端なエンジンはあまり作られていません。

■ 気筒の配列でタイプが変わる

 さて、気筒数が二つ以上あると、今度は「それをどういう形で並べるか」という問題が出てきますよね。

 ごく当たり前に考えると、まずそのまんま立てて横一列に並べる方法。2気筒の場合は「パラレル」とか「並列」、3気筒以上だと「直列」とか「ストレート」、「インライン」などと呼ばれます。

 ピストンが往復する関係で、レシプロエンジンには振動がつきものなのですが、6気筒の直列エンジンはピストンの動きでお互いの振動を綺麗に打ち消すことができます。なかでもかつてBMWが作っていた直列6気筒エンジンは「まるで絹の手触りのように滑らかな回転をする」ということで「シルキー・シックス」などと呼ばれていました。

 ただし、直列エンジンはエンジンそのものが長くなってしまうので、クルマに積む上でスペースの制約を受けます。なので6気筒よりも気筒数の多い直列エンジンは、クルマ用としては作られていません。また、6気筒も近頃では珍しくなってきています。

 次に、二つの気筒に角度をつけて並べる方式。V字になるので「V型」と呼ばれます。このVの角度は様々で、45度とか60度、90度など。特に90度のものは「L型」と呼ばれることもあります。

 オートバイのハーレー・ダビッドソンは伝統的に45度、ドゥカティは90度L型エンジン、というのは有名です。

 直列エンジンよりもエンジン自体をコンパクトにできるので、クルマの場合は4気筒までは並列、それ以上はV型というのが現在の流れのようです。昔の大きなアメリカ車はV8がステータスでしたし、イタリアのスーパーカーではV12、特殊なものではV16なんていうエンジンもありました。

 さらに、V型の角度を180度まで広げて気筒同士が向かい合う形になると、それは水平対向エンジンと呼ばれます。ボクサーとかフラットとも呼ばれ、たとえば2気筒だとフラットツイン、6気筒だとフラットシックスなんて呼ばれることもあります。BMWのオートバイやポルシェ911シリーズ、国産ではスバルなどがこのレイアウトを採り入れてました。

 この他、珍しい配列としてはV型を二つ組み合わせたW型というのもあります。ブガッティ・ベイロンとかベントレーというような超高額車に搭載されています。また、大昔のクルマや航空機ではX型、H型、星形なんていうのもありましたが、多分効率が良くなかったのでしょう、現在はほぼ使われていません。

   ◇   ◇

 今回は限られたスペースなのではしょっていますが、本当はさらに点火のタイミングとかクランクの位相なんていう、いろんな要素があります。そしてもちろんそれらも絡んでくるのですが、とりあえずエンジンの排気量と気筒数、そして気筒の配置は、そのエンジンのキャラクターに大きく影響します。クルマ本体も含めて、その魅力を決定づけると言ってもいいでしょう。この先、電動化が進んでエンジンは消えていく運命かも知れません。そんな魅力に触れられるのは今のうちなのではないでしょうか。

(まいどなニュース特約・小嶋 あきら)

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