免許もなかった小中学生がなぜ熱狂!? あれから45年~「スーパーカーブーム」をしみじみ回想してみる

 1976年ごろから1978年頃まで、全国にスーパーカーブームが巻き起こりました。それまであまり知られていなかったランボルギーニやフェラーリといった、まるで未来の国からやってきたような姿のクルマに、全国の小中学生が熱狂。各地で開催されたスーパーカーショーにはカメラ少年が溢れ、さまざまなグッズが飛ぶように売れました。

■最初は連載漫画から?

 このブームの面白いところは、対象がクルマだったのに中心になったのが「まだ免許の取れない小中学生だった」ということではないでしょうか。

 発端は池沢さとし先生の「サーキットの狼」だと言われています。そこにテレビがスーパーカーの特集番組を放映するなどして、一気に加熱したというのが、当時小学生だった筆者の感想です。まるで宇宙船みたいなスタイル、最高時速300キロという異次元のスピード、12気筒エンジンなんていう何が何だかよくわからないけど絶対にすごいに違いないパワーワードに、当時小学生男子だった筆者の心も鷲掴みにされてしまったのです。

 ただ、いくらブームになったところで相手は小中学生。当時1750万円のカウンタックはおろかクルマ自体買えるわけもなく、本やグッズを集める方向に走るわけですね。今だったら、たとえばDVDやBDソフトなんか出せば売れるのでしょうけど、当時はまだビデオデッキも普及していない時代です。図鑑や写真集、下敷き、トランプなどの印刷物や、たまに雑誌の付録で織り込まれたソノシート(薄いペラペラのレコード。アナログレコードプレーヤーで音が聴けた)で排気音を聞くなどして、少しでもスーパーカーを感じるのが精一杯でした。

 また、ミニカーやペーパーモデル、プラモデルなどのグッズもスーパーカーを立体で感じるアイテムでした。プラモデルは主に1/24スケールで、だいたい500円くらいで売られていました。誕生日やクリスマスにそれより大きい、例えば1/18とか1/12の大きなサイズのものを買ってもらったりすると、それはもう有頂天でした。

 さらにその上にはトイラジコン(ラジコンというのは実は商標らしいのですが)という尊いアイテムもありました。それまでのトイラジコンはチャンネル数(右折とか左折とかスピードとか、制御できる動きのバリエーション)が少なくて、例えば「スイッチを入れると基本は前進し続けていて、右ボタンでバック、左ボタンでジグザグ走行」というようなやたら操縦が難しいものが多かったのですが、この頃から「前進、後退、左右」と普通に動けるものが増えてきた気がします。そしてさらにこの頃、あのタミヤから1/12電動ラジコンシリーズの第一作目、ポルシェ934が発売されました。友達のなかで、家が裕福だった子がそれを買ってもらったんですが、初めて目の当たりにする本格的なラジコンカーのその大きさとリアルさ、そしてなんといってもその速さには心の底から憧れました。

■小学校を席巻した「スーパーカー消しゴム」

 一般の子供がはまっていたのは「スーパーカー消しゴム」でした。消しゴムと言っても本当に文字を消せるかというと微妙なものでしたが、いちおう「消しゴム」とされていることで学校に持って行っても怒られない、という画期的なアイテムでした。主にガチャガチャで売られていたのですが、その中でも出来具合というかリアルさというか、製造元によってクオリティに差があったんですね。まあリアルと言ってもデフォルメされてるんですけど、それでも「これはポルシェ928、これはミウラ、これはベルリネッタボクサー」というように車種がはっきりと分かって、なおかつ裏側のシャーシもそれらしく(本当に実物をモデルにしていたのかどうかは不明ですが)表現されているものが人気でした。まあ子供なりに、その辺りのセンスみたいなのを見抜く目はみんな持っていたのですね。

 この小さなスーパーカー消しゴムを、BOXYのボールペンで飛ばしてレースをする、というのが小学生の嗜みでした。画用紙とかにサーキットを描いて、ボールペンのバネでスーパーカーを弾いて走らせるのです。当然、いろんなチューニングをしました。ペンを分解してバネを引っ張って伸ばしてパワーアップする、消しゴムのタイヤ部分に接着剤を塗って乾かして摩擦係数を下げるなど、子供ながらにいろいろ知恵を絞ったものです。

 基本的にスーパーカーは一般公道を走るクルマですが、ブームも末期になってくると6輪F1カーのタイレルP34やトヨタセリカのシルエットフォーミュラ、BMWやポルシェのグループファイブマシンといったレーサーまで対象が広がっていきました。そしてそのままブームはなんとなく収まっていきました。

 ビデオもなく、テレビも民放の地上波が数チャンネルしかなかったあの時代。そういうマイナーなレースの映像は筆者たちにはほぼほぼ届かなかったわけで、リアルタイムにその時代を過ごしながら6輪タイレルが走ってるのを見たのは最近になってYouTubeで、って感じです。なのでスーパーカーブームはその後モータースポーツ熱として盛り上がるわけでもなく、なんとなく消えていったのかもしれません。

 しかしあの時代にスーパーカーの洗礼を受けた年代は、きっと心のどこかにいまもスーパーカーを宿しているのだと思います。

(まいどなニュース特約・小嶋 あきら)

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